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無題軸の飾が正しく賢い女の子だったらの“もしも”の話
綾くんはきっと、頭の悪い女の子が好きだ。知っていることも知らない素振りをして、気がついていることも何もわからない顔をして、綾くんの言葉だけを直向きに信じて頷く度に、表情を乗せない綾くんの顔が僅かに安堵に歪むことを、私は知っていた。もしかしたら、翔くんや普くんも気付いていて口にしないだけかもしれない。私よりもずっと、ずうっと綾くんといたのだから、気付いていたって何も不思議じゃない。だけど、翔くんは私たちに一瞥を寄越すだけですぐに部屋に戻ってしまうし、普くんは裏表のない態度のまま綾くんと私を傍観し時に口を挟むだけだ。
綾くんの膝に乗せられて、テレビから流れてくるニュースを眺める。誰が死んだ、殺された、事故があった、政治が、経済が、芸能人が。いろいろなニュースが目まぐるしく変わっていく。
「かざちゃん、ニュースなんて見てて面白いん?」
ぼんやりと画面を眺めているだけのつもりだったけど、綾くんには私が熱心にテレビを見ているように見えたらしい。面白い、というその問い掛けの中には、私にニュースの内容が理解できているのか、というのもきっと含まれている。
私は暫く言葉を返さずにたっぷりと間を置いてから、ゆっくりと首を左右に振る。そうすれば、ほら、綾くんはほんの少し、唇を歪めて見せるのだ。
2021/07/09 - りょかざ
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