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【長編設定/高校生/ひゃっくりが止まらない廻くん】


 ――突然、家にやってきた廻は、今までに見たことがないぐらい深刻そうな顔をしていた。

「どうしよう、俺……ひゃっくりが止まんないんだっ!」

 っと、言った直後「ヒック」さっそく廻はしゃっくりをする。

「たぶん、ヒック、もう10回ぐらいしてて……ヒック……あれ、これで何回目だっけ??」
「ひゃっくりなら放っておけば、そのうち止まるよ」
「もうっ、俺が死んじゃってもいいの?」

 死んじゃう……?

「ひゃっくりって、100回すると死んじゃうんでしょ?俺、あとちょっとの命かもしんない……!」

 ヒック。

 どうやら、廻は「ひゃっくりは100回すると死ぬ」という迷信を信じているらしい。可愛い。

「廻、ひゃっくりで人は死なないから大丈夫。あれは迷信だから」
「え、本当?なーんだ、死ななくてよかった〜!」

 心底安心しながら廻はヒック、とここに来て何度目かのひゃっくりをした。

「でも……ヒック……このまま止まらなかったらどうしよう?」
「ひゃっくりだもん。そのうち止まるよ」
「え〜全然止まる気配ないよ?」

 再びヒックとなって、ほら〜っと、廻は訴える。

「じゃあ、確かひゃっくりには水を飲むといいって聞いたことがあるから、待ってて」

 お水を持ってくると、座っていたソファを立った。キッチンに行き、コップに浄水器の水を入れて戻ってくる。

「はい」
「ん、あんがと」

 廻はごくごくと飲む。…………ヒック。

「もうこれは、驚かせてもらうしかない!」
「え、私が?」
「だって、ヒック、ひゃっくりってびっくりすると止まるって言うでしょ」

 そんな無茶ぶりな……と思う。不意打ちならともかく、驚かされるとわかっている相手を驚かすのは難易度が高い。

「ほら、早く♪」
「そんなこと言われてもー………………あっ、廻、あれってUFO!?」

 ………………。ヒック

「にゃは!もーそんなことで驚くの小学生ぐらいだって!」

 ひゃっくりは止まらなかったが、廻はウケたらしい。……小学生レベルと言われてちょっと腑に落ちない。

「他に止める方法ないの?」
「うーん、息を止めてみるとか」
「それしよう!ヒック、それで俺が息を止めてる間、チューしてて♪」
「え、なんで!?」
「だって、ただ息止めてるだけじゃつまんないじゃん?」

 そういう問題なの……?廻は「ほら、早く♪」と、ソファの隣をぽんぽん叩く。
 ……仕方ないなぁ、と向かいの席から隣に座った。

「じゃあ、今から止めるよ」

 廻は大きく息を吸い込んでから、目を閉じて息を止めた。

「……、」

 自分からするのは恥ずかしい。それでも、その少し突きだすような唇にそっと自身の唇を重ねる。

 ……一瞬ならともかく。

 ずっと重ねたままは間が持たない。気づいたら自分も息を止めていて、苦しくなった時。

 ヒック。

 止まらないひゃっくりに、二人はわずかに唇を離してくすくす笑った。

「んー息を止めてもだめかぁ……ヒック。あーもうずっと落ち着かなーい」

 長いチューができたのはよかったけど♪新記録だと、廻は満足する。

「ネットで調べてみよう……レモンを食べるといいってあるよ」
「レモン?ヒック、酸っぱいのはやだなーパイナップル食べて止まればいいのに」
「あっ、今家にパイナップルあるけど、廻食べる?」
「食べたい!」

 再びキッチンへ。冷蔵庫から母があらかじめ切っておいてくれたパイナップルを、タッパーから取り出し、お皿に盛り付け持っていく。

「……あ」
「へ?」

 その途中、スリッパが躓き、まさかの前方に倒れる――!

「……っ!」

 廻の身体は無意識に動いていて、最優先のその身体を受け止め、右手はお皿をキャッチし、宙に高く放り出されたパイナップルの一欠片は……

 上を向いた廻の口に、奇跡的にすぽっと入った。

「ご、ごめん……!って、廻、すごーい!神業!」
「へへへ♪」

 そのままパクリ、と廻はパイナップルを食べる。

「んっ、このパイナップルうまっ!甘ーいっ」
「台湾産のパイナップルなんだって。甘くておいしいよね」
「うん♪缶詰の甘さが好きだけど、この甘さもうまいね!台湾すげー」
「……あれ、そういえば、廻……」
「ん?……あ」


「「ひゃっくり止まってる!」」