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2022/10/31(Mon)
ドラクエ11長編:時のオリフィス

第68話 ソルティコの町・後編

【ドラクエ11ハロウィン/吸血鬼勇者】


この季節に行われる、ハロウィンというお祭りがある。
仮装をして、お菓子を貰うという一風変わったお祭りだ。
毎年、幼馴染みのファーリスと一緒にお祭りに参加するのだけど、ファーリスったらどこに行ったのかしら。

そういえば……去年より手の込んだ仮装をするって張り切っていたから、まだ準備をしているのかも知れない。

ちなみに私は、今年はシスターの仮装だ。


――ポンポン。


そんな風に、肩を叩かれた。

振り返ると、カボチャで作ったジャック・オ・ランタンを被った人が目の前に。
背格好からして、ファーリスだとすぐに分かる。

「もうファーリス、探してたんだから。でも、たしかに手の込んだ仮装ね」

頭はジャックオランタンで、服は吸血鬼みたい。

「じゃあ、お菓子を貰いに行きましょ」

そう言うと、ファーリスは私の手を取り、目的地とは反対方向に歩き出す。

「ファーリス?どこへ行くの?」

訪れたのは人気のない場所。
こんな所になにか用でもあるのだろうか。

「ファーリス?」

「……ごめんね」

再度名前を呼ぶと、返ってきたのはファーリスとは違う声だ。

「僕はファーリスさんじゃないんだ――」

ジャック・オ・ランタンの被りものの下から、さらりと髪が揺れる。

中性的な、綺麗な顔が現れた。

「初めまして、お嬢さん。僕はユグノア王国から来た吸血鬼の王子……」

ユグノア?吸血鬼?王子?
情報が多すぎて何がなんだか……。

――ん?吸血鬼?

「たまたま遊びに来たら、シスターの姿が似合うこんな可愛い人に出会えるなんて、僕はいているね」

「あ、あの吸血鬼って仮装ですよね……?」

目の前にいる彼は不思議な雰囲気をしているけど、まさか本物なんて……

「ふふ、本物の吸血鬼を見るのは初めてかい?正真正銘の――僕は誇り高き血を受け継ぐ吸血鬼さ」

そう笑った彼の口の中には、八重歯にしては発達した鋭い二本の歯が見えた。

ま、まさか、本当に本物……!?

「君をお持ち帰りする前に味見をしたいな」

おっ、おっ、お持ち帰り!?
無害そうな顔して何を言ってるの!?
それに味見って……なに!?

「ま……っ待って、待ってください!」

「何かな?」

近い、近い、近い!!

「味見って何するんですか……」

「そりゃあ吸血鬼だからね。味見といえば一つだよ」

顎をクイっと持ち上げられる。
空のように透き通った青い瞳に吸い込まれそうになる。

「僕の瞳、吸血鬼っぽくないでしょ。でも、血を吸うと……ちゃんと赤く染まるんだよ」

血を吸うと……

「って、なにナチュラルに脱がそうとしてるんですか!?」

「全部は脱がさないよ、こんな所で。風邪引いちゃうし。首筋を露にしてもらえないと血が吸えないじゃない?」

「いや、勝手に吸わないでください!」

「ふふ、怖がらなくて大丈夫だよ。味見程度の量だし、痛くしないから」

「そういう問題じゃないんですよ!!」

なにこの吸血鬼。ニコニコ綺麗な笑みを浮かべながら、強引に事を進めて来る……!

必死の抵抗もむなしく、首筋にかかる吐息。

「じゃあ、いただきます……――」

吸血鬼が妖艶な声色で言った言葉の後に、遅れてチクリと痛みがやって来た。


(痛くないなんて嘘つきだ……!)

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