バレンタインのチョコを、貰ってしまった……!
「一人1個だからねー!」
「ほら!峰田、1個戻せ!」
「僕、まだ貰ってナイっ!」
義理とはいえ、やっぱり嬉しい。いつもはお母さんがくれるチョコだけだし。さっそく、その場でみんなと一緒に食べる。……うん!すごくおいしい!
砂藤くんのお菓子と同じぐらい、おいしいと思う。
それに……みんなで作ったってことは、その中にみょうじさんも含まれているというわけで。
「つーか、本命をあげる女子は一人ぐらいいねえの?」
そんな瀬呂くんの問いに、女の子たちは苦笑いを浮かべる。
「まあ、みょうじはいるみたいだけど、誰か教えてくれないんだよねえ」
「ふふふ……私の本命は貰った人にしか分からないよ」
「えっ、誰!?」
「同じクラスのヤツか!?」
みょうじさんが本命チョコ……!?
一体誰だろう……同じクラスの人かな……。みょうじさんはB組の人たちとも仲が良いし、その可能性も……。
けど、ひとつだけ確実なこと。
それは、僕じゃないってことだ――……
痛む胸と共に、その日は帰宅した。
義理とはいえ、みょうじさんも関わったであろう手作りチョコを貰えただけ良かったじゃないか――そう自分を納得させる。
鞄を開け、中に手を入れると……、指先に何かが当たった。取り出すと、それは綺麗にラッピングされた箱だ。……?
「え!?」
これって、チョコだ……!どうして鞄の中に……もちろん貰った記憶もなければ心当たりもない。
何故、僕の鞄の中に……誰かのチョコが紛れ込んだのだろうか。もしくは勝手にチョコに足が生えて入ったか。(いやいや、そんなバカな)
そもそも、いつどうやって鞄の中に――
「……っ」
一人だけ、そんな芸当を"個性"で出来る人物がいる。
みょうじさんだ――。
まさか、これはみょうじさんからの本命チョコ……!?
(……いや、ないよね……)
僕なんかがみょうじさんの本命チョコを貰えるはずがない。
「いや、でも……もしかしたら0.01%の可能性で……奇跡が起こって……ブツブツブツ」
うあー!分からない!もしかしたら他の子からという可能性もあるし……いや、それもないよな。やっぱりチョコに足が生えて勝手に鞄の中に入った説が一番有力……
「……ん?」
何か手がかりがないかとチョコを見てみると、ラッピングの隙間にメッセージカードが挟まっている。
「――っ」
"でっくん"なんて、そんな呼び方をする人はそれこそ一人しかいない。
これはあれで、本命というのは、つまりは――……
この気持ちはどうしたらいいだろう。とりあえず、夢じゃないかと頬を思いっきりつねった。
(夢じゃ……ない!)
痛いのに、にやけてしまう頬。ホワイトデーに僕の気持ちを伝えるには、抑え切れないから。
本当は直接伝えたいけれど、スマホを手に取り、電話を掛ける。
今すぐ伝えたい。
僕も、君のことがずっと好きだったんだ――。