雄英体育祭も終わり。
ベッドで寝転がり、ドキドキでスマホでエゴサーチをしていた時、目に飛び込んで来たのは一つのツイートだった。
「ふぁ……!?」
思わずベッドから飛び起きる。
その写真に映っていたのは――
「爆豪くん……!?」
見知らぬ女子と笑顔で映る爆豪くん。こ、これは……まさか……
(爆豪くんのニセモノだ……!!)
爆豪くんが女子と写真を撮るはずない!と、すぐにニセモノだと気づいた私は、ボタンをタップして電話をかける。
何度目かの呼び出し音に『あ?』という第一声で爆豪くんが電話に出た。
『なんの用だよ』
「爆豪くん……最近、女の子と一緒に写真なんて撮ってないよね?」
『何言ってんだ?撮るか』
「やっぱり!爆豪くん、落ち着いて聞いてね」
『……んだよ』
「爆豪くんのニセモノが現れた……ぽい」
『…………はあ?』
「電話切ったらすぐスクショ送るから待ってて!」
***
「あ、おい……!チッ、なんなんだよ、あのクソテレポ。スクショォ?………」
――誰だゴラァァァァ!!?
「うるさい勝己!!近所迷惑でしょ!」
***
「――というわけで、これが例のツイートの写真」
翌日の放課後。生徒も使える空き教室で、私たち1−A組(早々に帰った轟くんを除いて)は緊急会議を行った。
「やっべー!まんま爆豪じゃん!!」
「ほんまにそっくりやね!」
「影武者か」
私のスマホを覗き込んで上鳴くん、お茶子ちゃん、常闇くんが続けざまに言った。他の皆も写真を見て驚きの声を上げる。
「この写真の主がニセモノってことは、ちゃんと有識者に確認済みだよ!ねっ」
「へっ!?」
有識者、でっくん。幼馴染みのでっくんがこれは爆豪くんじゃないと言うんだから間違いない。
「俺が違うっつってんだからクソデクに聞くまでもねえだろうがッ!!」
「ひぃっ!」
「でもまぁ、よく見んと表情が爆豪と違うよな」
「ニセモノ爆豪、イイ笑顔してるねー!」
「なんか「そんなん誰でも出来るっしょ!!」ってナチュラルに煽ってきそうなカオしてね?」
「瀬呂!それだっ!!」
「てめェら……ゴチャゴチャと好き勝手言いやがって……!!まとめてブッ」
「小学生じゃないんだから静かになさい!!廊下まで聞こえてるわよ!」
ガラガラッと勢いよくドアが開いたと思えば、ミッドナイト先生に怒られた。……まあ、気を取り直して。
「優秀な私は事前に情報収集して、ニセモノ爆豪くんの写真がどこで撮られたのか、他に一緒に撮った人はいないか調べてみたの」
再び自分のスマホ画面を皆に見せる。
"フォロー外から失礼します!(笑顔)きゃ〜爆豪くんかっこいい!!(ハート)(ハート)私も爆豪くんのファンなんです〜(目がハート)ぜひ(キラキラ)どちらで撮られたか教えてくださいっ(お願い)(お願い)"
「って、こんな感じでメッセージ送ったらリプがきて〜〜」
「「(文面、絵文字乱用のキャピキャピしてる……!!)」」
「そしたらなんと、一つの場所に集中してたの!」
ホワイトボードをくるっとひっくり返す。優秀な私は、すでに地図に目撃情報と写真を撮った場所の印をつけて、ホワイトボードに貼っておいたのだ!
「場所は鎌倉!!」
「刑事ドラマで見たことある捜査ボード!!」
「事前捜査万全だなオイ!!」
「優秀過ぎる……!!」
「さすがなまえちゃんや……!」
ふふふ、伊達に名探偵志望や助手と間違わられているわけじゃないからねぇ。
「てめェ、楽しんでんだろ!?真面目にやれや!」
「私はいつだって真面目だよぉ爆豪くん」
鎌倉といえば、私の地元の横浜からも近い。そんな近くでニセモノ爆豪くんが出没してたなんて……!
「それにしても、こんなに似てるなんて他人のそら似かしら?」
梅雨ちゃん。
「"個性"でって場合もあるよね!」
透ちゃん。
「トッペルゲンガーの可能性も……」
常闇くん。
「世界で三人は自分と似てる人物がいるって言うし……ただ単に似てるだけならいいけどさ」
尾白くん。
「明らかに爆豪の名を偽って写真を撮っているからな……」
障子くん。
「これは見過ごせんな」
飯田くん。
「うんっ……」
口田くん。
「ええ。今はまだ写真だけですが、今後、犯罪に繋がらないとも限りません」
八百万さん。
「それに……この影響で簡単にかっちゃんは写真を撮ってくれると思われたら、二次災害が生まれる(かっちゃんによる)」
でっくん。
「僕の出番ってわけね!」
青山くん。
「「たち」な、青山」
砂藤くん。
「よっしゃー!!明日は日曜だし!」
切島くん。
――ここで、1−Aの団結力を発揮だ。我らが委員長の飯田くんが代表して言う。
「皆で爆豪くんのニセモノを見つけて注意をするぞ!!」
「「おーー!!」」
「ついでに鎌倉観光しようよ!!」
「あっ、俺、江ノ島行きてぇ」
三奈ちゃんの言葉に上鳴くんも続き、いいね!とその場は盛り上がる。
「てめェら、遊びじゃねえんだよ!!」
「お前らうるせえ。はよ帰れ!」
爆豪くんが再びキレたと同時に、今度は相澤先生に怒られ、作戦の続きはグループトークで行うことになった。
***
「――というわけで。やって来ました鎌倉駅です」
「おい待て。てめェなんだその格好は!?」
「みょうじだけじゃねえ!!」
そう言う爆豪くんや上鳴くんも顔を隠すような変装をしている。
「これは八百万さんがギャルの格好をしてみたいって……」
「こっ、これは立派な変装ですわ!これなら、私たちと絶対に分かりませんもの!」
「で、でも、ちょっとハズかしいかも……」
「あら、お茶子ちゃんとっても似合ってるわよ」
八百万さんはお姉さま系ギャルで、梅雨ちゃんは小動物系ギャルで、お茶子ちゃんは元気系ギャル。
いつもと違う雰囲気でこれはこれでみんな可愛いね!
「みょうじも似合ってるぜ!」
「ルーズソックス初めて履いた」
「なんかエロくて!」
「上鳴くん、それ褒め言葉じゃない」
う〜ん、ちょっとギャルだからとスカート短すぎたかも。(中にスパッツ穿いてるけどね)
体育祭で私たちは顔を知られているから変装しようとなったけど、他の皆は帽子を被ったりサングラスをかけたりでわりとシンプルだ。
……一部を除いて。
「半分野郎、てめェは仮面舞踏会かよッ!」
「顔を隠そうと思ったらこれしかなかった」
「「!?」」
「家にあったってことか……!?」
「バタフライマスクが家にあるってどんな家だよ……」
「つーかなんでてめェがいんだ!!」
「みょうじに誘われ……」
「クソテレポォ!!」
だって、人手がいると思ったんだもん。
ノリノリだった三奈ちゃんと透ちゃんは変装が難しい容姿なので、江ノ島で観光……じゃなくて情報収集係で。
都合がつかない人もいて、集まったメンバーは私含めて12人だった。
ちなみに青山くんは「僕は変装しててもきらめいているオーラが隠しきれないから☆」という理由で不参加である。
「では、三名ずつに別れて東西南北に探そう!平等にクジ引きするぞ!」
飯田くんの言葉に、全員、クジを引く!
「爆豪くんと一緒でどうしようと思ったけど、切島くんが間に入ってくれるなら大丈夫だねっ」
「なんでよりによってコイツと……」
「すげえ板挟みになりそう」
八百万さん・お茶子ちゃん・梅雨ちゃん。
上鳴くん・瀬呂くん・砂藤くん。
飯田くん・でっくん・轟くん。
そんなメンバーで分かれて、いざ爆豪くんのニセモノ捜索開始!
「えっと……でも、今日絶対かっちゃんのニセモノが現れるってわけじゃないんだよね?」
…………でっくん。それは触れてはならないことだよ!
「鎌倉っていえば鳩サブレだよね〜」
「あー!確か名前あって鳩三郎って言うんだよな!」
「てめェらくだらねえ会話してんじゃねえわ!」
鎌倉の町並みを歩きながら切島くんと他愛ない会話をしていると、キレながら爆豪くんが会話に入ってきた。
「も〜爆豪くん。そんなキレてたら、すぐに爆豪くんだってバレちゃうよ?」
「だったらちゃんと探せや!」
会話しながらもちゃんと探してるよぉ。
「なあ、爆豪爆豪!!」
「クソ髪、ニセモノ野郎がいたか!?」
おっと、さっそくお出まし……
「あれ、食わねえ!?」
切島くんが指差すのはお煎餅屋さんだった。お目当ては「世界一堅いお煎餅」らしい。
「世界一堅いの?切島くんはともかく、普通の人は歯が折れない?」
「食うかッ!!」
「ほら、爆豪が好きそうな激辛煎餅もあるぜ!」
・
・
・
そして、隣でバリバリバリ、と豪快な音を立てながら煎餅を食べる二人がここに。
「爆豪くんも歯が強そうだね……」
「舐めんな」
「かってぇー!うめえ!!」
いや、舐めてはないけど。(それにしても本当に真っ赤だね、その煎餅……)
私も焼きたての醤油煎餅を二人と同じように食べる。おいしい。やっぱり、観光は食べ歩きが楽しいよね!
「あー!爆豪くん!」
「ついに現れやがったか!?」
「このお寺!ずっと行きたかったの!報国寺!」
「………………」
「竹林が綺麗なんだよ〜入ろうよ!」
「おっ、良いな!」
「てめェら観光に来てんじゃねえんだよ!!!」
・
・
・
わぁ、本当に一面竹だらけ。竹ってあんなに高く伸びるんだなぁ。
「涼しい〜」
「緑が目に優しいぜ」
「……まあ、悪くはねえな」
風が吹けばさらさらと心地よい音に包まれる。隅々まで回って、お抹茶を飲んで、癒されたぁとお寺を出た。
「みょうじ!近くに杉本寺っていう寺があって、苔むした石段が見れるらしいぜ!」
「苔むした石段!風流だねぇ行こう」
「てめェら、俺をコケにしやがって分かってんだろなアァ……!?」
苔だけに!
「写真の中に大仏背景にしたものがあったから、観光名所にいるかな〜って思ってね」
ほら、と爆豪くんに証拠の写真を見せる。
「……おい、アホ面から連絡来たみたいだぞ」
「上鳴くん?」
「見つかった連絡かもな!」
「どれどれ……。三奈ちゃんたちと合流して、今江ノ島で遊んでるって。写真、楽しそ……待って私のスマホ折らないで!!」
横から私のスマホを掠め取って折ろうとする爆豪くんから慌てて("個性"で)スマホを取り返した。本気で折ろうとしてたから危なかったぁ。
「お、今度は緑谷から電話だ」
「アァ!?」
『切島くん!かっちゃんのニセモノが現れたんだ……!』
「「!?」」
切島くんはスピーカーにしてくれて、その場にでっくんの慌てた声が響く。
『今、尾行中だけど、場所は〜〜』
でっくんが教えてくれた住所はここから遠くない。私たちも急ぎその場所に向かった。
――本当にその場には、爆豪くんのニセモノがいた。背格好もそっくりで驚く。
「ニセモノ野郎!!覚悟しやがれ――!!!」
「……っ!?」
私たちが止める間もなく、爆豪くんはニセモノ爆豪くんに飛びかかる。
――ボンッ!!
「「!?」」
直後、ニセモノ爆豪くんの姿は、黒髪の地味めの大人しそうな男の子の姿に変わった。
「ごっごめんなさい!!」
素直に謝る男の子の名前は、写見二重くん。小学五年生らしい。
「僕……体育祭で爆豪さんの活躍を見て、すっごくかっこよくて憧れちゃって、それで……」
確かに。体育祭で爆豪くんは活躍して、優勝もしたけど……
「写見くん。表彰式の爆豪くんは」
「感銘を受けました……!「世間が認めても俺が認めてなきゃゴミ」って言葉に痺れて……!!」
あの姿を見てもなお憧れるなんて……!
「爆豪くん良かったねぇ!正真正銘の爆豪くんのファンだよ!」
「おい半分野郎、こいつの口を今すぐ凍らせろ」
こいつが喋ると話が脱線する――と、爆豪くんに正論を言われる。
「さすがに凍らすことはできねえ……。みょうじ、口にチャックをしておけ」
「わかった」
「「………………」」
口にチャックをして、大人しく話を聞く。
「爆豪さんは強くて、かっこよくて、自分に自信があって……とにかく僕にないものを全部持っているんです。あんな風になれたらって思ってたら……」
写見くんの"個性"は《ドッペルゲンガー》
見た人物の姿になれるけど、本人に会うとさっきみたいに元の姿に戻ってしまうとか。
見た目だけでも、という出来心が大きくなってしまったらしい。
「僕もかっちゃんに憧れてたから少し分かるな……」
「だからっつてもなぁ」
「ああ、悪気はないみたいだったが、成り済ましはよくないぞ。爆豪くん本人にも、爆豪くんだと信じてしまった人たちにも失礼にあたる行為だ」
飯田くんの言葉に「本当にごめんなさい」と、写見くんは再び真摯に謝る。
「おい、クソガキ」
「は、はい!」
「てめェが俺に成り済まそうなんぞ100万年かかってもできねえんだよ。んなこともわかんねえなら、一生そのまんまウジウジ惨めに生きてろ」
「…………」
「爆豪くん!さすがにそれは……!」
言い過ぎだ――そう言おうとする飯田くんをでっくんが手で止める。大丈夫、と目で言って。
「それが嫌ならつべこべ言わずに変われ。テメェは俺には絶対なれねえ。テメェはテメェになるしかねえんだよ」
自分は自分しかなれない。だから、なりたい"自分"になるしかない。
どうやら、それは写見くんにも伝わったらしい。
「爆豪さん……っ!」
「二度とバカみてえな真似すんじゃねえぞ。次にんな真似したらブッ殺すからな」
「……はい!!もう絶対しませんっ!」
なんか良い話、的な………。
「あの……っ、爆豪パイセンって呼んで良いですか!?」
「「(パイセン……!!)」」
「ヤメロ!」
舎弟……!ああ、爆豪くんに舎弟ができて良かったねって言いたい〜〜!!
「(みょうじさん、口を開きたくてうずうずしてる……!!)」
「(一応我慢してたんだな……!)」
「轟くんっ、もうチャック開けてもいいかなぁ!?」
「もう開いてるがいいんじゃねえか?」
「爆豪くんっ!舎弟……」
BOM!!!
「わあああ!!爆豪パイセンの生爆破見られて感激です〜〜〜!!」
「爆豪くん!公共の場で爆破はよしたまえ!!」
「みょうじ!?無事かーー!?」
「切島くんっ、無事だよ〜!」
「ちょこまかと避けんじゃねえわクソがぁぁ!!」
「……。ええと、一件落着……?」
「らしいな」
こうして、爆豪くんのニセモノ騒動は彼のファンによるものだと判明し、無事解決した。
「来られなかったクラスのみんなには、私たちからお土産の鳩サブレだよ〜!」
「ちゃっかり買ってんじゃねえわ!」
「俺たちからは江ノ島のタコせんべいだぜ!」
「アホ面ブッ殺す!!!」
「ちょっ待てッ、なんで俺だけ!?」