文スト組で雨の話

「こんにちは。雨宿りさせてください!」
「やあ、なまえちゃん」

 武装探偵社のドアを開けると、最初に笑顔で出迎えてくれたのは潤くんだ。

「なんだ、なまえ。天気予報は見なかったのか?」
「天気予報は見ましたけど、降水確率30%だったから傘持って来なかったんです」
 40%なら持ってきてたけどなー
「降水確率が30%なら傘を持っていくのは常識だろう」
「え、常識ですか?」
「まあ、微妙なところだねェ」

 笑いながら言う与謝野先生に「確かに30%なら持って行くか悩んでしまいわすわね」と、ナオミちゃん。

「俺は少しでも雨の予報が出ていれば持っていくぞ」
 さすが国木田さん。
「あっでも、国木田さんなら"個性"で折り畳み傘を出せるんじゃ」

 手帳サイズのミニミニサイズになりそうだけど。
 今軽量型のスリムタイプもあるし、あれをイメージして……

「その程度で"個性"を使うなど、手帳のページがもったいないだろう」
「便利なのになぁ……織田作さんは何%で傘持ってきますか?」
「俺は外出時に降っていないなら傘は持っていかないな。小雨なら気にならないし、濡れるような雨なら途中でビニール傘を買っている。ただ、最近はビニール傘がたまって困っている」
「困っているならやめんか。無駄以外何者でもないぞ……」

 困ってると言いつつ困ってなさそうな顔で言う織田作さん。
 クールな見た目で、家にビニール傘がたまってるの面白すぎる。

「ボクは30%なら、心配だから傘を持ッてくかな」
「逆に私は持っていきませんの。だって兄さまが持ってきてくださるし、相合い傘ができますでしょ!」

 そう言って潤くんの腕に抱きつくナオミちゃん。「ナ、ナオミ〜」と困りながらも引き離しはしない潤くん。

 あーはいはい…とお決まりの二人に皆でスルーした。

「僕は"個性"で、空を見たら雨が降るかどうか分かるから天気予報は必要ないよ!」
「さすが乱歩さんだねェ」
「賢治くんには負けるけどね。賢治くんは一ヶ月後まで天気を当てられるんだって?」
「一ヶ月後!?」

 思わず声を上げたけど、驚いたのは私だけではなかった。

「はい!村では農業を携わる者なら誰でもできますよ!」
「誰でも?できるの…?」
 イーハトーヴォ村民すごい……!
「土とか生き物の状態から予測するんです」

 ちなみに農業一般の手伝いをして回る青年会の入会資格の一つでもらしい。

「他には牛と会話できたら合格。犬と会話できたら合格」
「凄いね賢治くんの村……」

 呆然と呟く潤くん。(牛と犬と会話ってどういうこと…?猫とはだめなのかなぁ)

「あとは雨乞い能力がある者は合格。一日で苗木を大木にできる者も合格」
「凄いエリート揃いだねその村!」
 それは、"個性"でってことだよね…?
「公民館を一晩で造ったら合格」
「豊臣秀吉!?」
 一夜城!
「祟り神を倒したら合格」
「アレ実在するの!?」
 おっとだんだん話の方向性が怪しくなってきたよ!
「あとは……」
「ちょッ、ちょっと待って」

 収集がつかなくなりそうな会話に慌てて潤くんがストップをかけた。
 祟り神って違うアニメ映画が入って来てない…?(イーハトーヴォ村って異世界だったのか)

 にこにこしてる賢治くんに少し見る目が変わったその場。
 ――そんな時、ガチャリと探偵社の扉が開く。

「国木田く〜ん、タオルちょうだ〜い」

 間延びした声でずぶ濡れ(!)の太宰さんが現れた。

「太宰それ以上動くな!床に水濡れの被害が広がる!」

 そう言って急いでタオルを取りに行く国木田さん。
 その間もポタリポタリと太宰さんから滴が垂れて、小さな水溜まりを作っている。

「…?太宰さん、なんでそんなにずぶ濡れなんですか?」
「おや、なまえ。遊びに来てたんだね」
「外はどしゃ降りなのか」
「私が歩いてた時はそんなになるまで降ってなかったのに…」

 窓の外を織田作さんと見ると……。
 あれ、やっぱり普通の雨量。

「あ、これ入水帰りで…」「そのまま海にまで流れて藻屑となって来い!!」

 国木田さんが投げた怒りのタオルは太宰さんの顔にボフッと命中した。



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