ヒーロー☆チャンネル5


 ヒーローが活躍する社会。

 その活躍を報道する機関もそれに伴い、増え、成長していった。

 その中でも絶大な人気を誇るニュース番組と、リポーターがいる――


『HEY!テレポートガール!六本木ヒルズにヴィランが出現だ!レッツリポート!』
「OK!プレゼントマイク!六本木にテレポートします!」

 ニュース名はヒーロー☆チャンネル5。

 リポーターのテレポートガールと、ディレクターのプレゼント・マイク(元ヒーロー)の二人を軸に『お茶の間にリアルなヒーローニュースをいち早くお届けする』がモットーの報道番組だ。

 人気な理由の一つ目、迅速さ。
 ヒーロー☆チャンネル5はいち早くヒーローニュースをお届けする。

「皆さん、こんにちは!リポーターのテレポートガールです。ここ、六本木ヒルズでヴィランが暴れてるという情報に、我々が駆けつけたところ、すでにヒーローとの激しい戦いを繰り広げてる模様です」

 彼女の"個性"《テレポート》がそれを可能としていた。個性使用許可を受けているため、この"個性"で現場にすぐさま駆けつけられるのが強みである。

「テレポートガールだ!」
「リポート頑張って!」
「いつも放送見てる〜!」

 人気な理由の二つ目、リポーター。
 テレポートガール。
 本名、年齢、全てが不詳。
 分かっているのは彼女の"個性"だけ。

「応援、よろしくね!」 

 その整ったルックスと愛嬌の良さに、ヒーローのように絶大な人気がある。
 連日、週刊雑誌が彼女のスキャンダルを追っているが、彼女の"個性"に敵うものはおらず、素性はミステリアスなままだ。

「では、戦っているヒーローは誰なのか?もっと近寄ってみたいと思います!」

 高機能自動追跡カメラを連れて、再び彼女はテレポート。

「戦っているのは冷静と情熱の間のヒーロー、ショートです!すでに辺りは氷の世界。とっても寒いです!」

 人気の理由の三つ目。
 ぎりぎりまで近づいてのリポート。

「見てください!ヴィランは巨大ロボットに乗って操っています。自作でしょうか、それ自体が"個性"なのでしょうか?」
『テレポートガール!向こうに逃げ遅れたリスナーがいるぞ!レッツレスキュー!!』
「了解!」

 人気の理由の四つ目。
 "個性"で救助も何のその。

「悪ぃな!テレポートガール!」

 イケメンヒーローと女性に絶大な人気を誇る、ショート。
 大体のヒーローは彼女と顔見知りである。

「くそぉ!イケメンヒーローめぇ!これでも食らえ!必殺ロケットパンチー!」
「ロボットの腕がロケットのように飛び出しました!…すごいです!ショートの業火でロケットが丸焦げの消し炭みたいです!」
『oh……ダークマターみたいだな!』
「先ほどの台詞からして、このヴィランはイケメンヒーローへの怨恨による暴走でしょうか?」
「うるさいよ!リポーター!!」

 今度は彼女に向かって、パンチが繰り出されるがひょいっとテレポートで避ける。

「そろそろ終わらせるぞ――」
「出たー!ショートの特大氷結!これにはロケットもカチンコチン。手も足も出ません!」
「ヴィランンン!どこだーー!?」
「あっここでヒーロー爆心地が飛んで来ましたが、一歩遅かったですね」
「テメェまたいんのかよ、クソテレポ!!」
『OK!テレポートガール!一旦CM入るぜ!』
「CMの後もチャンネルはそのまま!」

 放送が止まると、彼女の笑顔がふっと解けて、むすーと爆心地を睨んだ。

「その顔、ヤメロ」

 ヒーロー、爆心地。
 口は悪いがその強さから、子供に爆発的な人気があるヒーロー。

「あのねぇ、またいるのかって当たり前でしょ〜ヒーローニュースのリポーターなんだから!」
「邪魔なんだよ!ちょこまかと!」

 テレポートガールとは馬が合わない。

「私、一度だって邪魔したことある?ねえ、ショートくん」
「ねえな。それがお前のすげえ所だと思う。ヒーローの邪魔してたらこんな密着放送、今まで続けられねえだろ」
「ほらぁ」
「クソテレポの味方してんじゃねえよ!視界に入って目障りなんだよ、テメェは!」

 放送の裏側はいつもこんな感じである。

『テレポートガール!渋谷で立て籠り事件発生!すぐさま急行だ!!すでにヒーローも到着している模様。ヒーローは――』

「了解。プレゼント・マイク。じゃあ私、次の現場に行くから」
「待て。俺も連れてけ」
「俺も頼む」
「テメェはさっき活躍したんだからちっとは休んでろ」
「大丈夫だ。俺はまだ元気だ」
「んなこと心配してんじゃねえわ!引っ込んでろって言ったんだよ!!この天然ヒーローが!!」
「二人とも悪いけど、どっちも連れて行かないよ?」
「「!」」
「だって、もう"彼"が駆けつけてるみたいだからね」

 そう蠱惑的に微笑んで彼女は、二人の目の前からパッと消えた。

「デクの野郎か〜〜!!」
「あいつがいるなら問題ないな」


 テレポートガールは神出鬼没に、今日もヒーローが活躍する場所に現れる。


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