雪の日の話


 朝起きたら窓の外は雪景色だった。
 天気予報の予報通りに久しぶりの都心に積もった雪。
 私はしっかりと防寒して外に出る。


「――おお、良いところに来たな。人手が欲しかったところだ」

 武装探偵社が入っているビルの前では国木田さんが雪かきをしていた。
 国木田さんだけでなく、織田作さんに潤くん、喫茶うずまきのマスターも。

 手伝えと言う国木田さんにもちろん私は「私の適材適所じゃないので」と断った。
 
「なんだそれは!?」
「今日は鏡花ちゃんと賢治くんと一緒に雪だるまを作りに来たんです」
「はい!看板雪だるまです!」
「あと雪兎……」

 私たちの言葉に「私が頼んだのですよ。ちょうど店の看板を掛けるのに良いかと」とうずまきのマスターが言う。
 それには国木田さんも納得して「子供は気楽で良いな」と呟いた。

「太宰を働かせようとしたのに、案の定奴の姿は見当たらんし…」「呼んだかい!」「うおお!!?」

 側の雪の固まりから太宰さんがバァ!と現れ、びっくり!?
 国木田さんなんて腰を抜かしている。

「いないと思ったら雪の中にいたのか、太宰」

 冷静に言った織田作さん。
 織田作さんが驚くことってあるのかな……。
 
「氷漬けになったら綺麗に死ねるかなと思ってね。でも…へっくしょん!寒いばかりで風邪ひきそうだ…」
「そりゃあそうでしょうとしか…」
「太宰さん、いつから雪の中にいたんですか…」

 呆れる潤くんと同じように言った。
 起き上がった国木田さんが「この唐変木が!!もう一回俺が埋めてやる!!」と太宰さんに雪をかけている。

 この勢いなら国木田さん一人であっという間に雪かきは終わるだろう。

「…じゃあ、雪だるま作ろっか」
「うん」
「頭を乗せるのは任せてください!」

 私は鏡花ちゃん一緒に雪の玉を転がし胴体を作り、賢治くんが作った頭と合体させれば。

「できました!」
「可愛い!」
「雪兎も……」

 頭にはバケツの帽子と目と口もちゃんと作って完璧な雪だるま!

 マスターがうずまきの看板を掛けて、冬の間だけの看板雪だるまがにっこり笑う。



 ***



 ――雪が積もったのは何も横浜だけではない。雄英も同様だ。

「今日は雪が積もったので予定を変更し……」

 ヒーロー基礎学で相澤先生の言葉に、積雪時の救助訓練だろうかと考えていたら。

「雪かきをやってもらう」
「「ええ…………………」」

 テンションダウンな声をそろって上げた。
 相澤先生は淡々と積雪による二次災害や事故の可能性を説明。

「ヒーローも例外じゃねえ。人手が必要なときは駆り出される」

 その言葉に今朝、敦くんと龍くんが雪かきをしてた姿を思い出した。
 "個性"使用はもちろんOKみたいだけど、私の"個性"で雪かきは……

「私が――」
「「!」」

 今日はどこから!?

「雪の中から出て来た!!」

 そう雪の塊から現れたオールマイト先生。私以外の皆が驚く。(すでに太宰さんで経験済みだからね…)

 そして、へっくしょん!と豪快にくしゃみをするオールマイト先生。「だっ大丈夫ですか!?」でっくんが真面目に心配した。

「ただの雪かきなら面白くないだろう!ってことで、どちらが多くの面積を雪かきできたか対抗戦だ!」

 対抗戦…?ということは……

「決着をつけようじゃないか、A組。――雪かきで!!」

 ハッと後ろを見ると、そこには物間くんを筆頭に、スコップを思い思いにかまえるB組の面々。

「みょうじさん。今回の対決では君の"個性"は役に立たないだろうから、良い勝負ができなくて残念だよ」

 すかさず私に挑発してくる物間くんに、私はふふふと笑う。

「確かに今日の私は役に立たないだろうけど、こっちには炎の使い手、焦凍くんがいるからね!!」
「炎の使い手……?」

 首を傾げる焦凍くん。「炎の使い手…!」「…!」とその言葉に反応する常闇くんと黒色くん。

 この勝負――もらった!

「なるほど……じゃあ、君とは良い勝負になりそうだね」

 物間くんから差し出された手のひらに握手する焦凍くん。
 あっと思った時にはもう遅い。

「あっはっは!油断したな!君の"個性"は僕が活用させてもらうよ!」
「「………………………」」

 そう言って物間くんは嬉々と走って持ち場に戻っていた。

「ごめんな…。まあ、お互い頑張ろ」

 一佳も申し訳そうに眉を下げて笑って片手を上げて、持ち場に戻る。

「半分野郎!簡単にパクられてんじゃねえよ!!」
「ワリィ」

 そんな感じで始まったAB雪かき対抗戦。


 まあ、それも最初だけで。


「うおお!!A組に負けるなぁぁ!B組!!」
「俺らだって負けねえ!!行くぞ、A組!!」

 鉄哲くんと切島くんの熱い声が響くなか。

「凡戸!バリケードを作れ!」
「お〜け〜」
「障子!こっちは手数で勝負だ!雪玉は俺らが作るから投げてくれ!」
「……分かった」

 雪玉があっちこっち激しく飛び交う。
 いつの間にかそこは戦場――AB雪合戦だ!「皆ーー!!何をしているんだ!今は授業中であって雪かき…ブフォ」

「っ簡単に避けてくれるね!」

 そりゃあこの"個性"だもの、物間くん。

「そんな玉じゃ私に当てられ──ひゃあ!!」

 冷たッ!!なに!?

「バーカ!油断してんじゃねえよ」

 振り返るとニヤリと笑う爆豪くんの姿。


 敵は……味方の中にいた!!


「あの馬鹿ども……」
「HAHAHA!皆楽しそうだ!たまには良いじゃないか、相澤くん」
「ああ、白熱した勝負になってるしな。もう少し好きにさせてやらないか、イレイザー。(頑張れ、B組…!!)」
「はあ…………」


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