チーム爆豪


「本日のヒーロー基礎学はヒーローとヴィランに別れての野外対戦だ!ヒーローは3〜4名のチームになって、他は全員ヴィランという多勢に無勢バトル!制限時間内にヒーローは何人ヴィランを確保できるか競争だ!!」
「はい!バトルということはヴィラン側の勝利条件はあるのでしょうか!」

 今日の担当のオールマイト先生が説明するなか、すかさず挙手をしたのはもちろん天哉くんだ。

「ヴィランの確保に使うこのテープさ!ヴィランもヒーローにこれを巻き付け!巻き付けられたヒーローは敗北とし、全員巻き付けられたらその時点でヒーローチームの負けだ!」

 今回は圧倒的不利な状況での戦闘をイメージした授業らしい。

 チーム分けはお馴染みのくじ引き。

 今回、私は誰とチームに……………

「クソテレポとしょうゆ顔かよ」
「瀬呂くん、しょうゆ顔って呼ばれてるんだね」
「めちゃくちゃ不本意だけどな」
「ヴィラン顔の爆豪くんには言われたくないよね」
「んだとコラ!?」

 爆豪くんと瀬呂くんとチームになったところで、次のくじで早速トップバッターに。

「制限時間は30分!スタート!」

 と、オールマイト先生の合図と共に「まずはデクの野郎をぶっ殺す!次は半分野郎だ!てめェら邪魔すんじゃねーぞ」
 単騎で行ってしまった爆豪くん。

「開始早々、俺ら置いてったぞ」
「ここまで協調性ないのもすごいよね〜」

 いい加減、チームの意味を覚えてほしいものだ。

「瀬呂くん、爆豪くんにリードならぬテープつけてよ」
「それ、俺に死ねって言ってるのと同等だからな」

 取り残されたままでも仕方ないので。
 爆豪くんの後を追いかける。
 早速彼は青山くんを見つけて瞬殺していた。

「爆豪くんってさ」
「ん?」
「一人でチーム爆豪だよね」

 爆豪くんが暴れてる様子を見ながら言うと「なんじゃそりゃ」と瀬呂くんは吹き出した。

「もう爆豪くんそのものがチームで完結してるっていうか。本人もそういう行動してるし」
「あーなるほどね。言いたいことはすげえ分かるわ」

 スポーツで例えるなら一人なのに、オフェンスもディフェンスも全部こなす的な。
 つまりは私たちの出番はないんじゃないかっていう……。

「…あ!じゃあ瀬呂くん。私、実況するから瀬呂くん、解説者やってよ」
「なんだその思い付き。面白そう、良いぜ」


 ということで、出番のない私たちは爆豪くんのバトルの実況を始める――


「現れたのはヒーロー、カツキング!」
「ちょいたんま。なんでカツキング」
「爆豪くんのヒーロー名保留だから仮のヒーロー名」

 改めて…

「ヒーローカツキング!襲いかかってきたヴィランたちの攻撃を次々と避けて行きます!」
「いやぁ、相変わらずの人間離れした反射速度ですな〜」
「あ、後ろに飛び引くと同時に車を爆破させ、大爆発を起こしました!これによって周囲にいたヴィランたちを一網打尽…!」
「ヒーロー以前に人とは思えないやり口ですね〜今後、彼はヴィランっぽいヒーローランキング上位の常連になるでしょう」
「煙が晴れて……あれ、カツキングの姿を見失いました?」

 どこ行ったと探していると……

「てめェら……」
「「!」」

 後ろを振り返ると、少し上のビルからヤンキー座りしている爆豪くんの姿が。

「無線で全部聞こえてんだよォ――!――!――!!!」


 その場に特大の爆発が起こった。


「結構褒めてたと思うんだけどな〜」
「どこかだ!?つーか無傷でいんじゃねえよクソが!!」
「いやぁ助かったわ、みょうじ。さすがテレポートガール」
「君たち……授業忘れてない?先生泣いちゃうぞ(でも二人の会話ちょっと面白かった)」


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