しゃっくりが止まらない

「谷崎、この間の事件の資料は……ヒック」
「もしかして……国木田さん、吃逆しゃっくりですか?」
「ああ、そうみたいだ……ヒック」

 真面目な顔と生真面目な声に続いて、吃逆と共にその肩が微妙にまた揺れた。

「吃逆なんて…ヒック…子供の時以来なんだがな…ヒック」

 ──面白い。谷崎は顔に出さずに、意外なその姿を見てついそう思ってしまう。

「国木田さん、吃逆を止めるなら……」
「大変だよ、国木田くん……!」
「なんだ、太宰……ヒック」

 二人の会話に割り込んで来たのは、太宰だった。
 あからさまな血相を変えた顔をして。

「吃逆はね……!100回すると死んでしまうのだよ……!!」

 ワナワナといかにも深刻そうに言う太宰に、谷崎は困った笑みを浮かべた。はは、いくら国木田さんでも信じるわけ……

「……!!それは本当なのか太宰!?ヒック」

 信じた──!──!──!?

「本当だよ、国木田くん!吃逆病って言って、100回目でショック死をしてしまうんだ……!」
「なんだと……!?おい谷崎!俺は何回吃逆をした!?ヒック」
「へっ?あー……10回はしてないと思いますが……」

 たぶん。

「あとおおよそ90回か……!いかん、それまでに、ヒック、この吃逆を止めなければ……!ヒック」

 ああ、また吃逆をしてしまったと、彼は絶望する。

「こんにちはー!……あれ、なんで国木田さん、そんなに青ざめてるんですか?」
「ああ、なまえか……。今、俺は死ぬか生きるかの瀬戸際にいる…ヒック」
「えっ?」
「吃逆病だ……あと86回吃逆をしたら俺はショック死してしまう……!ヒック」
「……。よく分かりませんけど、吃逆100回したら死ぬっていう都市伝説のあれですか?」
「都市伝説……?」
「もう少し絶望する国木田くんを見たかったけど、ネタばらしになっちゃったねえ」

 あっけらかんと言う太宰に、ポカンとする国木田。ああ……なまえは何があったのか察した。

「国木田さん、太宰さんに騙されたんですね……。安心してください。吃逆100回しても死なないですから」

 なまえの言葉にパアァと希望の光が差し込んだように顔が明るくなった国木田。
 だったが、すぐにその顔は怒りの形相に。

「だ〜〜ざ〜〜い〜〜!!」
「ふははは!国木田くんが怒った〜!!」
「今日という今日は貴様を許さんッ!!」

 国木田に首を絞められてもどこか嬉しそうな太宰。

 武装探偵社はいつも賑やかだ──。


 ***


「……ヒック」
「焦凍くん、吃逆?」
「ああ、みてえだな……」

 クールな顔でヒックと肩を揺らして吃逆をする焦凍くんはちょっと面白い。
 そういえば──ちょうど吃逆といえば、最近探偵社で起きた出来事を思い出した。

「ねえ、焦凍くん。吃逆病って知ってる?」
「吃逆病?」
「吃逆100回すると死んじゃうんだって」

 いくら焦凍くんでも都市伝説を知っているだろうと、冗談のつもりで言ったら……

「……100回すると死ぬ……?ヒック」


 焦凍くんは絶望的な顔になった。


「……!ごめん焦凍くん!今の冗談だから!本当にごめんっ!」
「なんでみょうじは轟に謝り倒してんだ……?」
「たぶん、なまえさんは良心を痛めたのかと……」
「……なんだ冗談か(ほっ)」


 ──あ、吃逆止まった。



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