轟くんに通じない

「では、チーム分けをする。一人ずつクジを引くように」


 相澤先生の指示に、生徒たちは順番に並んでクジを引いていく。
 今日のヒーロー基礎学の課題は「あらゆる状況を想定して対処する」というもので、訓練内容もわからない上にチームごとにバラバラだという。

(今回の訓練は咄嗟の判断力や対応力が試されそうだなぁ)

 順番が来たので、とくになにも考えず私はクジを引いた――。

「Aチーム。爆豪、みょうじ、轟」

 周囲からおぉ……!という声が響き、呼ばれた私たちの中ではなんとも言えない空気が流れる。

 間に挟まれたくない二人とチーム……!

「Bチーム。緑谷、麗日、飯田」
「デクくん!飯田くん!一緒のチームだね、頑張ろうね!」
「う、うん!」
「今回は訓練の内容がわからないからな。慎重に行動しよう」
「でっくん!」

 次々と名前が呼ばれ、チームが決まるなか、私はでっくん・お茶子ちゃん・天哉くんチームの元へ向かった。

「私とチーム交換しない?」
「えっ!?」
「みょうじくん!それはクジを引いた意味がなくなるだろう!」

 でっくんと交渉中、案の定天哉くんがシュバってきた。

「だって映画だとメインの3人だよ?でっくんとあの2人がチームになった方が自然じゃない?」
「映画??みょうじくんはなんの話をしてるんだ?」
「なまえちゃん、それは言わないお約束や」
「みょうじさんのお願いは聞いてあげたいけど、無理じゃないかな……ルール的に」

 でっくんがちらりと相澤先生を見て言った。気づいた相澤先生に当然のように却下された。いや、分かりきってたことなんだけどね……。

 がっかりして、二人の元へ戻る。

「てめぇら俺の足引っ張んなよ」

 爆豪くんは早速これだよ。

「そう言われると逆に足引っ張りたくならない?」
「アァ!?」
「天の邪鬼ってやつか。まあ、普通にしていれば引っ張んねえだろ」
「だよね〜」
「なんでこいつらとチームに……!」


 ――前頭多難なこのチームで、訓練は始まった。


 グラウンド・βといえば、ビル群。その室内から。

 ……が。

 チーム一緒にスタートではなく、それぞれ別の場所からのものだった。無線機もなく、合流をすることと、合流するまでの単独行動も訓練に含まれているとみた。
 新しいパターンだなぁと思いながら移動していると、敵の気配を感じて物影に隠れる。

(あれは……人質?)

 三奈ちゃん、耳郎ちゃん、天哉くん、峰田くん、口田くん……たくさんいるな。皆、ロープで縛られており、ランダムに選ばれた人質役だろう。その周りには残りの生徒たちがヴィラン役として警戒している。

(うーん、私の"個性"でも一度に救出は難しいからなぁ)

 ヴィランを倒してからとしても、ワンオペはきつい。
 まずはチームである爆豪くんと焦凍くんと合流して……と考えながら探していると、同じように物影に隠れている爆豪くんと目が合う。

 すると、爆豪くんはくいっと顎を動かした。

 その方向を見ると、焦凍くんの姿も確認。再び爆豪くんの方に視線を戻し、無線機がないのでとりあえずアイコンタクトで聞いてみる。――作戦、どうする?

「(俺がヴィランどもをぶっ殺している隙に、おまえと轟は人質を解放しろ)」
(……って言ってるんだろうなぁ。了解)

 爆豪くんと目で会話できたよ。いや、わざわざそんなことしなくてもわかるか。行動原理がわかりやすいもん。

 対して焦凍くんは……

「?」

 なんか、目を合わせたら不思議そうな顔をされたけど……。まあ、焦凍くんも頭がいいのですぐにこちらの意図はわかるだろう。

 ここはジェスチャーで伝えてみよう。

 えっと、この間授業で習った人質のハンドサインは……

(爆豪くんが、敵に突っ込んでいる隙に、私と焦凍くんで、人質を救出)

 身振り手振りで伝えると、焦凍くんはこくりと頷いた。爆豪くんが人質救出役を買ってでるわけないって、誰でもわかるよね。

(爆豪くんが派手に"個性"を使ったら合図だ)

 ――今!

 そして、爆発だけでなく氷結も室内に炸裂した。


「今回は事前情報のない状況での判断や対応力だけでなく、チームワークも見ていたわけだが……おまえら他にやりようがあっただろ」

 呆れたような目で私たちを見ながら相澤先生は言った。

「てめぇら俺の足を引っ張んなって言っただろうが!」
「焦凍くんっ、私のジェスチャーにめっちゃわかったという顔で頷いたよね!?」

 爆豪くんの言葉は無視して、私は焦凍くんに詰め寄る。

「最初はみょうじがこっちに手を振ってんのかと思ったんだが……」
「いやいや、ファンサじゃないんだから!」
「状況からすぐに違うと気づいた」

 焦凍くんはジェスチャーの意味がわからなかったので「私が人質救出するから、爆豪くんと二人で、ヴィランを倒す」という答えを独自に導き出したという。

「惜しい!惜しいけど、焦凍くん。ジェスチャー見てわからなかったら頷いたらだめだよ!」
「悪い」

 結果。爆豪くんと焦凍くんの"個性"が激突し、ぐだぐだになったと。

「爆豪くんとでさえ目で会話できたのに、まさかの焦凍くんと通じなかったのは不覚……」
「なにが不覚だァ!?クソテレポのジェスチャーが下手くそだっただけだろうが!」
「言っておくが、チームは連帯責任だからな」

 相澤先生の言葉に爆豪くんは押し黙ったけど、代わりにめっちゃ睨まれた。言い足りないことを言っているのはわかるけど、ここはわからないフリをしとこう。


 ***


「耳郎ちゃん、言葉にするって大事だよね。私は今日の訓練で改めて気づかされたよ〜」
「テレポートっていう便利な"個性"があるんだから、普通に三人で合流して話し合えばよかったね」



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