砂砂漠から礫砂漠に差し掛かると、サマディー王国はもうすぐだという。
ファーリスの視界に白い石の城壁が飛び込んできた。
「おぉ!皆!やっとサマディー王国が見えてきたぞ!」
今までクタクタだったファーリスは、みるみるうちに元気になる。
「走ると転けるぞー」
と、カミュが注意を促したと同時にファーリスは転けて顔面から砂にダイブした。
「「(ああ……)」」
やっぱり……と、皆は苦笑いを浮かべる。
そんなへっぽこ勇者と四人と一頭でたどり着いたサマディー王国。
「私たちが以前来た時よりにぎわってますね、お姉さま。なんだかお祭りが始まるみたい」
セーニャの言葉に、ベロニカが「ははーん、なるほど……」と何かに気づく。
「前にここに来た時、年に一度の特別なウマレースが開催されるって聞いたわ。きっと今はそれでにぎわってるのよ!城の裏のオアシスの上にレース場があるのよ」
「特別なウマレースなんて気になるじゃないか!」
そんなレースに立ち会えるとはラッキーと、ファーリスはすでに観戦する気満々である。
「ウマレースだけじゃなくて、夜はサーカスもやってるの。以前来た時はアタシたちは少し立ち寄っただけだから、あんまり観光はしてないのよね」
「ふ〜ん。サーカスも面白そうだが、オレたちの目的は大樹の枝だからな。忘れんなよ、おチビちゃん」
カミュがベロニカにからかうような口調で言う。国に着いてそれぐらいの元気は出たようだ。
「なによ、ノリが悪いわね。ファーリス、あんなヤツはほっといて、この町を楽しみましょう」
「オレは休みたいから先に宿屋に行くぞ」
「ボクもクタクタだから先に休みたい」
「あんたたち二人して……」
男二人を呆れた目で見るベロニカ。
「私は観光したいな」
「じゃあ、あたしたちだけで行きましょ」
「はい!今回はしっかり見て回りたいですわね」
三人娘は元気よくさっさと行ってしまった。
「オレたちも行こうぜ」
「うん。ああ、冷たい水が飲みたいなあ」
まずはオレンジを預けてから、宿屋だ。
「……あの。もしかして、あなたが噂のサマディー王国の王子、イレブンさまですか?」
ファーリスは時々、観光客にそう尋ねられた。
その度に違うと否定をするのだが、どうやら今の格好がお忍びの王子に見えるらしい。
さすが異国の王子服である。
なんでもイレブン王子は顔は美形で、剣術や馬術にも精通する評判の良い王子らしい。
「ボクが間違えられるのも納得だな!」
「お前、本当に調子良いよなぁ」
そんな二人に次に声をかけてきたのは、踊り子のような格好をした女性だった。
「あ〜ら、すてきなおにいさんたち!ねえ、ぱふぱふしましょっ。いいでしょ?」
……ぱふぱふ!?
ホムラの里で、ぱふぱふを経験して「はじめてのぱふぱふ」の称号を手に入れているファーリス。
その言葉にいち早く彼は反応した。
「ぱ…ぱふぱふとは、あのぱふぱふでしょうか?」
「お前、キリッとした顔をしようとして、鼻の下すげー伸びてんぞ」
「フフッ、そのぱふぱふよ」
「カミュ。ボクはちょっとぱふぱふをしてこようと思う」
「あら、うれしい!じゃあ、あたしについて来て!」
カミュは遠慮したが、ファーリスはやる気満々だった。
「お前、好きだなぁ。後で話を聞かせてくれよなっ」
カミュに見送られ、ファーリスはそわそわドキドキしながら女性の後についていく。
階段を上がり、個室に入った。
「ねえ、ベッドにすわっててね。あかりを消して、暗くしてもいい?」
「ボクは明るい方が……」
明かりを消したらぱふぱふが見れない。
「そんないじわるいわないで。消すわよ……」
彼女の甘い声にデレーとしながら、ファーリスはベッドの上に座って、今か今かと暗闇の中で待った。
「ぱふぱふ、ぱふぱふ……うぷぷぷぷ」
こ…これは……………!?
「ぱふぱふ、ぱふぱふ」
ぱふぱふじゃないぞ………!!
「どうだ、ぼうず。わしのぱふぱふはいいだろう」
いきなり野太い声がしてぎょっとするファーリス。
明かりがぱっと付き、彼が後ろを見ると厳つい男が立っていた。
神の岩の崖から落ちかけて、エマに男らしく助けられた出来事より、ショックを受けるファーリス。
「あたしのお父さんよ。ぱふぱふがとっても上手なの。どう?かたこりが治ったでしょう」
「……………あ、ハイ」
「わっはっは。じゃあ、わしはこれで……」
確かに肩はかなりスッキリしたが。(違う、そうじゃない……!!)
――ボクが求めていたぱふぱふは、ムフフなぱふぱふなんだ……!!
心の中で叫びながら、ファーリスは意気消沈しながら階段を降りていく。
入口ではカミュが待っていてくれた。
どうやらその間、オレンジを預けてくれたらしい。
「どうだった?」
「……………」
「そうか。じゃあ、行こう!」
ファーリスの反応をカミュは華麗にスルーして、二人は宿屋へと向かった。
――翌日。サマディー城へ向かった一行。
「父上!ただいま、訓練から戻りました!」
サマディー王に謁見しに来た彼らの前に、颯爽と姿を現した好青年。
――あれが、噂に名高いイレブン王子。
王子は彼らの間を堂々とした足取りで通り抜けると、王の前に立つ。
「騎士たる者!」
王はごほんと咳払いをした後、王子に投げ掛ける。
イレブン王子は右手で騎士の敬礼をし、真っ直ぐに答える。
「信念を決して曲げず、国に忠節を尽くす!弱さを助け、強きをくじく!どんな逆境にあっても正々堂々と立ち向かう!」
「うむ、よろしい。今日も騎士道精神を忘れていないようだな」
王は満足すると、よいしょと玉座に戻った。
「イレブンよ。お前も今年で16歳。イレブン杯では、騎士の国の王子に恥じぬ勇敢な走りを期待しているぞ」
「おまかせください、父上。必ずや期待にこたえてみせましょう。それでは……」
最後に一礼をし、王子は踵を返すと、そこにいる者たちの存在に気づいた。
「あなた方は……」
そちらに顔を向け、彼らへ足を進める王子。
彼が歩く度に、肩の少し上で切り揃えられた髪がサラサラと揺れる。
ほう……と王子を目の前にして一同はため息を吐く。
サラサラな髪。暑い国だというのに焼けていない白い肌。
空のように澄みきった青い瞳。
中性的な顔立ちは、噂通りの美形である。
その彼は何やら目を奪われている。
もしや見た目に定評のあるナマエに一目惚れでもしたのかと、カミュは「マジか」と焦ったが、その視線は隣の――「え、ボク?」
イレブン王子は顎に手を当て、ファーリスをじっと観察しているようだった。
「…は!これは不躾に失礼致しました。旅の方、よろしかったらお名前を教えてもらえないでしょうか?……ファーリスさんというのですね。此度は何用で我がサマディーを訪れたのですか?」
「ボクたちは――」
ファーリスは大樹の枝を求め、サマディーにやって来たことを伝えた。
「大樹の枝……?もしかして、サマディーの国宝……七色にかがやく虹色の枝のことでしょうか」
「ああ、きっとそれです!ボクたちはその枝が必要で……!」
「何か深い事情がありそうですね……。僕ならお役に立てるかもしれません。僕からもあなたたちにお話したいことがあって……、後で僕の部屋に来てもらえないでしょうか?」
お待ちしております――彼は最後に綺麗に微笑み、その場を後にする。
花が咲くようなそれに、再び五人はほぉ…とため息をもらした。
「幸先よく命の大樹の枝……虹色の枝の情報をゲットできたわね!これはラッキーよ!」
「イレブン王子は噂通りの王子様だったね」
「あのサラサラ髪……とても素敵でしわ」
「確かにボクが間違えられることはある!」
「手がかりがつかめたのは良いことだが……。あの王子。やたらお前のことを見てたよな。……まさかとは思うが何か気づいていたのか?もし、そうだとしたら相当なやり手だな。建国以来もっとも優秀な王子ってウワサだし、イヤな予感がするぜ……気をつけろよ」
それぞれがイレブン王子の感想を言うなか、カミュだけが冷静にファーリスに忠告した。
さっそく彼らは兵士に王子の自室の場所を尋ね、その場所に向かった。
広い城内だが、王子の自室は玉座の間からは近いようだ。
「えっ王子さまに呼ばれたんですか?となると……、なるほどなるほどー」
扉の横に立つ兵士が意味深な言葉と共に彼らを見ながらうんうんと頷いた。
その意味も気になるが、兵士がこんな緩くて大丈夫なんだろうかとファーリスは心配になった。
そして、なんだか彼と会ったのは初めての気がしないのは何故だろうか。
「やあ、来てくれて良かった。わざわざ呼び出してすまない」
イレブン王子は笑顔で彼らを出迎えると、再びファーリスを見て傾く。
「うん。思った通りだ」
思った通り?ファーリスは首を傾げる。
「身長も体格もピッタリだな」
「?」
「君たち、虹色の枝を求めて来たと言ったね。残念だけど、あれは国宝で、旅人にあげられる物ではないんだ」
その言葉に五人の顔が曇った。
王子は続ける。
「……だけど、僕が父上に掛けあえば、きっと虹色の枝をゆずってくれるだろう。その代わり……僕の頼みを聞いてほしい」
頼み………?王子からの頼みなんて、一体なんだろうと不思議そうに顔を見合わせる五人。
「ここでは誰か話を聞いているか分からないし…。今、城下町に来ているサーカス一座のショーを観ながら話をするってのはどうだい?」
招待するよというイレブンの言葉に、すかさず答えたのはベロニカだ。
「もちろん、問題ありませんわ。サーカスを観ながら王子サマとお話できるなんてステキです!」
「よし、決まり。それじゃ、夜に城下町にあるサーカステントの前に来てくれ。時間に遅れないように、頼むよ」
イレブン王子との約束がとんとん拍子で決まり、彼らはサマディー城を後にした。
――夜になり。一行が待ち合わせ場所のサーカステントに行くと、フードを目深にかぶるローブ姿のイレブン王子の姿があった。
「君たちこっちこっち。ふふ、この姿じゃ一目で僕だと分からないだろう。え、すぐにわかった?……まあ、いいや。約束通りサーカスを観ながら例の話の続きをしようか」
王子に連れられ、彼らはテントの中へ入っていた。
奥の目立たない丸席を王子は選んだ。
イスが一つ足りず。カミュが隣の席から拝借し、彼は背もたれを反対にして座る。
余興のようなショーが続くなか、ステージにサーカスの支配人が登場した。
「さて!お次は世界を飛びまわっては、訪れた町を魅了して、去っていく謎の旅芸人の登場だ!」
その言葉にわあぁ!と客席から観戦が湧き、五人もそのステージに注目する。
「流浪の旅芸人……シルビア!!摩訶不思議なショーをとくとご覧あれ!!」
手を上げた支配人が幕の中に引くと。 代わりに奥から宙返りをしながら、華麗にシルビアが登場。
両手を広げ、一礼をすれば、観客から歓迎の拍手が響く。
しばし、彼らはシルビアの華麗なショーを堪能した。
「……みんな、サーカスに夢中のようだな。では、そろそろ本題に入ろうか。これから言うことは口外しないでほしい」
一緒になって笑顔で楽しんでいたイレブン王子は、真面目な顔つきになり、そう神妙に口を開いた。
「明日、騎士たちが乗馬のウデを競う、イレブン杯っていうレースがおこなわれるのは知っているね?それに、僕ももちろん出場するんだけど…………」
しばしの沈黙の後、真剣に王子は続きの言葉を言う。
「ファーリスさん。君に、僕の代わりにその馬レースに出てほしいんだ」
王子のお願いの意味がわからず、皆がぽかんとした。
彼はそのワケを話す。
「実は……同じようなこの時期に、"砂漠の殺し屋"という魔物がこの辺りに現れるんだ」
「な、なんだい?その物騒な名前の魔物は」
ファーリスは名前を聞いただけで、身を震わせた。
「サマディー王国の歴戦の兵士たちさえも亡き者にした恐ろしいサソリの怪物さ。国民も犠牲になってるんだ。僕は、そいつを討伐したいと考えてる。――この手で」
ぎゅっと力強く拳を握りしめるイレブン王子。
「相手は強敵だし、僕なんかじゃ太刀打ちできないかも知れない。でも、この国の…騎士の国の王子として、国を脅かす存在を見過ごすわけにはいかないんだ。その為に、剣の稽古も実戦も積んできた」
涼しげな顔とは裏腹の熱い言葉に「なんて立派な王子様なんでしょう!」と、セーニャが感動しながら呟いた。
王子は握りしめた拳をほどき、肩を落とす。
「ただ、問題があってね。僕の両親はものすごく過保護なんだ」
過保護……冗談みたいな言葉だったが、彼は真面目に口にした。
「僕が討伐に行くのを許してくださらない…。そこでだ。明日のレースに僕の影武者として、君がレースに出てもらい、その隙に僕は討伐に向かうってわけだ」
名案だろう?と得意気に笑うイレブン王子。
「僕と同じ背格好をしている君なら、僕の影武者になれる」
「影武者……」
小さく呟くファーリス。
「事情は分かったが、影武者っていったって、レースに出たらひと目でバレるだろ?どうやってごまかすんだ?」
カミュはイスの背もたれに腕組みをしながら、当然の疑問を聞く。
「それには心配ない。王族は身の安全を優先させるため、鎧と兜を身につけるから」
なるほど……それなら背格好の同じのファーリスは適任だ。
「頼む!僕の代わりに明日のウマレースに出てくれ!」
「そのお願い、あたしたちが引き受けるわ!凶悪な魔物を討伐したいっていう王子の心意気、買おうじゃないの!」
すかさず答えたのはベロニカだった。
これにはファーリスもすぐさま口を開く。
「おい、走るのはボクなんだぞ!?勝手に決めないでくれベロニカ!」
「なに言ってんの!お願いごと聞いたら虹色の枝が手に入るのよ!」
「それに関しては僕が責任を持って父上と交渉しよう」
「ほらねっ」
どっちの味方だ!とファーリスはベロニカに言いたいが、彼女は王子の味方である。
「その討伐、私たちも手伝えないかな?」
「そうですわね。人々を苦しめている魔物……見過ごせないですわ!」
「君たちまで何を言ってるんだい!?」
ナマエとセーニャの発言にガーンとするファーリス。
「カミュ〜」
彼は頼みの綱のカミュを見るが。
「一人で走るわけだから、ファーリスがウマレースに出ている間、オレたちは王子の討伐に手伝うのはありだな」
「ボクを相棒だと言っておいて、裏切ったな!?」「いや、裏切ってはねえだろ……」
ファーリスが影武者を拒むのにはワケがあった。
「ボク、乗馬は得意じゃないんだ…!」
その言葉に皆が「そうだった」と思い出した。
ちなみに、乗馬以外でも彼はポンコツなことが多い。
愛すべきポンコツ勇者――それがファーリスである。
「で、でも、ファーリス最近普通に乗れるようになって、走れるし…」
彼女がフォローするように言った。
ファーリスが馬に乗れるよう手解きしたのは、何を隠そう彼女である。
記憶喪失になっても馬の乗り方は覚えていたらしい。
「でも走るのはレースだ!いくら鎧や兜を身に付けても、落馬したら危ないじゃないか!」
「そこかよ…」
すかさずカミュがつっこんだ。
「それについてなら問題ない。これがあれば大丈夫さ!」
王子がどこからか取り出したのは、黄金色に輝く手綱。
「『おうごんのたづな』と呼ばれる伝説の代物でね。これを使って馬に乗れば、誰でも名騎手だよ」
「イレブン王子、影武者の役目……このボクが引き受けよう!」
先ほどの情けない顔とは打って変わって、キリッとした表情を浮かべて言うファーリス。
「良かった!君ならそう言ってくれると思ったよ!」
「大船に乗ったつもりでいてくれたまえ!」
わっはっはと笑うファーリスに、四人は苦笑いを浮かべる。
まったくこの勇者さまは調子が良いんだから。
その分、仲間の自分たちがしっかりしなければ――そんな思いで彼らはこれまで旅をしてきた。(そしてこれからも)
――こうして。
ファーリスはイレブン王子の影武者を引き受け、明日はウマレースに砂漠の殺し屋退治と、二手に別れて挑むことになった。
――当日。
「すごい歓声じゃない。さすがは騎士の国の王子さまね」
王子に扮したファーリスに声をかけたのは――派手な装飾の馬に乗った、あの人気の流浪の旅芸人のシルビアだった。
「アタシ、シルビアっていうの。騎士のひとりが怪我しちゃって、代わりに参加することになったのよ〜」
怪我をした優秀候補のオグイの代わりである。
どんな騎手が来ようとファーリスには問題がなかった。
何故なら、この"おうごんのたづな"があれば、レースには負けないだろう。
どーんと胸を張るファーリス。
「王子さまだって、手加減しないわ。正々堂々勝負しましょうね」
声を出したらバレるので、ファーリスはこくりと頷く。
「……ねえ王子さま、馬が歩く度になんだかフラフラしてるような気がするけど……?」
ギクッ!
「きっと緊張してるのね!リラックスして走りましょ!」
ホッ。
バレてはいないようだ。
ファーリスを乗せた馬はスタート地につく。
ファーリスはただ馬に跨がっているだけでいい。
おうごんのたづなの効果で、馬が勝手に走ってくれるのだ。
レースのスタートを切った。
「………!?(おっ落ちる〜〜!!)」
猛烈な勢いで走り出した馬に、ファーリスは必死にその背にしがみついた。
「……?あなた、いつものイレブンの走り方とは違うみたいですわ」
「うむ……もしかしたらあやつも緊張しておるのかも知れんな!」
「まあ、イレブンったら」
何も知らずに笑い合うサマディー王と王妃。
果たして、レースが終わるまでファーリスは落馬せずに済むのか――!
――一方。
上手く城の者たちの目を掻い潜り、サマディー王国を出発した王子一行。
「近くのキャンプ地まではキメラのつばさで行けるんだ。僕とファーリスさんが入れ替わっているとバレるのは時間の問題だけど、なるべく急ぎ討伐して戻らないと、母上がショックで倒れるかも知れない」
王子の言葉に、皆は頷く。
王子はキメラのつばさを投げた――
デスコピオンの根城はバクラバ砂丘の奥地だという。
「……――ここだ」
「王子、本当にこの場所で合ってるのか?」
「砂だけで何もいないわね」
「隠れているのかな……」
「ですが、隠れるところなんて……」
カミュ、ベロニカ、ナマエ、セーニャが辺りを見渡しながら言うなか――
「!?出たな、デスコピオン!」
突然砂の中から、魔物が現れた。
勇ましく片手剣を引き抜くイレブン王子。
「みんな!僕に続いてくれ!」
王子は共に戦う彼らに言うと――
「おう!まかせておけ!」
「はい!」
「魔法で援護するわよ!」
「回復、補助はおまかせください!」
頼もしい声が返ってきて、王子はふっと微笑を浮かべる。
「よしっ行くぞ!――僕は騎士の国の王子だ!!」
王子は名乗り、自分の攻撃力と守備力が1段階アップした!
「つるぎのまい――!」
華麗な王子の剣技がデスコピオンに炸裂!
…………………ん?
四人は予想以上の王子の戦いっぷりにぽかーんとする。
「はっ…ちょっとあれ見て!王子のレベル!てっきりレベル9だと思ってたけど……!」
ベロニカの言葉に皆は王子を凝視した。
――レベル99……!?
「おいおい、どんだけ修行したんだ…!?」
「私たちの出番は大丈夫みたいだね…」
「くっ」王子はデスコピオンの反撃を喰らう。1のダメージ!
「ミラクルソード!!」
王子のダメージが回復した。
同時にその攻撃によってデスコピオンが倒れる。
「あんな凶悪そうな魔物を、お一人であっという間に倒されてしまいましたわ……」
レベル99の王子――強すぎる。
「……ねえ、みんな。この際だから王子に仲間になってもらいましょうよ」
ベロニカの提案に、全員の視線が「?僕一人で倒してしまった……?」と、不思議そうに首を傾げる王子に集まった。
「――お、落ちる〜〜!本当に落ちるから!!一回…っ一回止まってくれぇぇ!!」
ファーリスが必死に馬の背にしがみついて落馬に耐えている頃。
かくして四人によるイレブン王子の勧誘が始まった。
←back
top←