悪くない雪の景色

 天気予報の牛の通りに、午後から雪がちらつき始めた。
 雪はこのまま降り積もるらしい。
 勇者一行は早々に近くの村に滞在した。

 宿屋に泊まり、一夜明けると、外は銀世界に――

「すごい!一面、雪ね!」
 目を輝かせるナマエに「あんまりはしゃぐと転けるぞ」と、くすりと笑いながらカミュが言うと。

「わっ」その横でイレブンが転けた。こっちか。

「銀世界って素敵ね!あら、セーニャちゃん、ベロニカちゃんは?」
「お姉さまは寒いのが苦手で……」

 シルビアの言葉にセーニャが苦笑いを浮かべながら答える。

「旅人の兄ちゃん!良い時にこの村に来たな!」

 イレブンが顔を上げると、小さな男の子がにっと笑みを浮かべて見下ろしていた。

 なんでもこの村では初雪が積もると、ある祭りを行うらしい。
 話を詳しく聞くと、祭りというように大会に近い。

「一番すっげー雪だるまを作った人が優勝なんだ!」
「面白そうじゃない!」
「だから皆さま、雪を集めてらっしゃるのですね」

 シルビアとセーニャが言った。
 優勝者には賞金が出るし、どのみちこの雪で旅は足止めだ。

「面白そうだ!参加しよう!」

 何よりイレブンの意向で決定した。

 最初はしぶしぶだったベロニカも、優勝と賞金が出るという言葉にちょっとやる気が出たようだ。

「――で。雪だるまと言っても、形は何でも良いんでしょ?どんな造形にするの?」
 ちなみにあたしは迫力あるドラゴンなんていいと思うわ!とベロニカに続いて。

「馬!」
「可愛い動物たちなんてどうかしら?」
「いっそのこと、イレブンさまの像なんてどうでしょう?」

 イレブン、シルビア、セーニャが言った。
 セーニャの提案には「それはちょっと…」と#name3#は苦笑いする。

「見事にバラバラだな……」
 お前は?とカミュに振られて「普通に雪だるまとか…」と答えるナマエ。

 てっきり突拍子のない案が飛び出すかと思ったら、まともな答えが返ってきてカミュは感心した。

「俺もこいつの案に一票」

 多数決的に、ならば「完璧な雪だるま」を作ろうとなった。
 彼らは早速雪だるま作りに取りかかる。

 期限は三日間らしい。

「おいおい、雪だるまの鼻といえばニンジンだろ」
「?僕の村ではダイコンだったよ」
「立派なお鼻の雪だるまちゃんになるわね!」
「あら、ラムダではめざめの花をつけるわよ」
「それ、可愛いね!」
「帽子はお姉さまのを被せてましたわ」

 場所によって、雪だるまの目と鼻は違うらしい。
 若干揉めつつも、完璧?な雪だるまは完成。

「ほほう…最近では皆、凝ったものを作るが、雪だるまとは初心に返るようで良いものじゃ」

 審査員の村長の評価は上々だ。
 これは優勝も狙える――と、イレブンたちは期待する。

「今年の優勝者は――」

 優勝者は……?

「このピチピチギャル像じゃ!!」

 彼らはずこっと転けそうになった。

「私欲丸出しじゃないの〜〜!!」

 ベロニカが怒りを露に叫ぶ。
 彼女だけじゃない、その場にいた女性全員の目が冷たい。

「困った村長ちゃんね…」

 シルビアも呆れるほどに。
 冷えきった空気にブリザードが起きそうだとイレブンは思った。


「……締まんねえ、大会だったな」
 優勝も逃し、自分達の努力はなんだったのかとカミュはため息を吐く。

「でも、みんなで雪だるま作って楽しかったよ」

 眉を下げて笑うナマエに、絆されるようにカミュもふっと笑った。

「お――また、雪が降ってきたな」
「本当…」

 粉雪のような雪。

「……こんな景色も悪くねえかもな」
「?」

 綺麗と見上げる彼女の、頬も鼻先も寒さで赤くなっている――そんな彼女が隣に、こうして雪を見るのは悪くない。



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