vsホメロスwithグレイグ〜真冬のクリスマス編〜

 その日の勇者一行は海の上にいた。
 海底王国ムウレアで、旅の助言をセレンに求めた帰りである。

「ロミアさんも元気に過ごしているみたいでよかったね」
「うん。お土産にもらった手作りのお菓子、あとでみんなで食べよう」

 天気のいい青空の下、ナマエとイレブンはにこやなかに会話をする――そんな時だった。

「……やれやれ、やっと見つけましたわ」
「!」

 その風変わりな魔物が突然、船に現れたのは。
 正確にはどこからか空から飛んできて、船に降り立った。

「ここらの海じゃ見ない魔物だ」
「クリオネオンだ。クレイモラン地方でよく見る魔物だが……」

 一つ目で、水色の炎を灯すランタンのような魔物だった。警戒より不思議さが勝った声で言った勇者に、カミュは怪訝そうな声で答えた。
 少なくとも、海に生息している魔物ではない。

「見た目はちょっと可愛い魔物だね」
「ええ、なんだか愛嬌がありますわね」

 ナマエの感想に、セーニャも同意して続けて言う。

「それに、どうやらこちらに敵意はなさそうですわ」

 クリオネオンはふわふわと浮いて、こちらに攻撃してくる様子はないようだ。

「アナタ「やっと見つけた」と言ったわね。アタシたちを探していたの?」

 シルビアの問いに、クリオネオンはその質問を待ってましたとばかりに答える。

「そうですわ。わたくしは氷の魔女、リーズレットさまの使い魔で、あなたたちを探していましたの」
「リーズレット?」

 その名前にベロニカはいち早く反応して名前を繰り返した。次にマルティナが口を開く。

「リーズレットが私たちになにか用があるってこと?」
「ええ、ご名答よ。そこのお嬢さん」
「お、お嬢さん……?」

 クリオネオンの物言いに、マルティナは面食らった。もう自分はお嬢さんと呼ばれる歳ではないが……もしかしたら、この魔物はずっと自分より年上なのかも知れない。

「元を辿れば、シャール女王があなた方にお手紙をお渡ししたくて、リーズレットさまの使い魔であるわたくしを使わせましたの。海の上にいるなんて、探すのに苦労しましたわ」

 貴族のような口調で話すクリオネオンに全員戸惑いつつも、ロウがゴホン、と咳払いしてから尋ねる。

「シャール女王からの手紙というと、なにか重要な内容じゃろうか?」
「それは中身を読んでみてからのお楽しみですわ」

 クリオネオンが呪文を唱えると、ポンっと宙に白い封筒が現れた。
 勇者が手を伸ばすと、その封筒はその手のひらに落ちてくる。
 よく見ると、封筒には雪の結晶のような美しい装飾がされており、セーニャはうっとりしたため息をもらした。

「読んでみよう――」

 クレイモランの紋章の封蝋を押された封を、勇者は開ける。
 シャールの手書きだと思われる、繊細な美しい文字が目に飛び込んだ。手紙の内容を勇者は読みながら皆に話す。

「クレイモラン王国でクリスマス祭を行うから、僕らにぜひ参加してほしいって……」
「あら〜雪の王国クレイモランでのクリスマスなんてステキじゃない♡」

 顔の横で両手を組んで、乙女チックな仕草でシルビアが言った。

「いいじゃない!あたしたちも参加しましょ、イレブン」
「雪の国でクリスマスなんて、私、憧れていました!」
「私もクリスマスって話には聞いたことがあるけど、ちゃんとやったことがないから行ってみたいな」

 笑顔のベロニカとセーニャに続き、ナマエも興味津々なようだ。

「クリスマス?って有名なお祭りなの?」
「ほっほ。クリスマスというのは……――」

 田舎育ちだからか、クリスマスを知らないイレブンが皆に尋ねると、ロウが詳しく説明する。
 それは冬のおとぎ話がいつしか一部の地域の行儀として根付いたものだと。今では多くの地域に広がっており、かつてユグノアでも冬の祝祭として盛大に行っていたという。

「デルカダール国でもクリスマスは行っていたの。……小さい頃、クリスマスの前日はわくわくして眠れなかったことを思い出すわ」

 懐かしいという声でマルティナは話した。バレバレなのに、サンタクロースになりきってプレゼントをくれる父の姿。自分が疑うと、グレイグが本物のサンタクロースだと必死に弁解していた。
 ……思い出して、マルティナの胸はズキリと痛くなる。幸せだったあの頃の、父もグレイグも今はいない。

「……とっても素敵なお祭りよ。きっと、イレブンも楽しめると思うわ」

 そんな記憶を払拭するように、マルティナはイレブンに向けて、にっこりと笑って言った。

「クリスマス……うん、すごく楽しそだ。せっかくのシャール女王の招待だし、参加してみよう」

 そこまで言って、イレブンはあっとカミュを見た。なにも言わないカミュは乗り気じゃなさそうだし、寄り道を好まないので反対かも知れない。

「カミュはどうかな?」

 多数決ならクリスマスに参加になってしまうが、カミュの意見もちゃんと聞いておきたいと、勇者は尋ねる。

「……いいんじゃねえか。それに、女王のご厚意は受けた方がいいぜ」
「じゃあ、決まりだ!」
「では、シャール女王にご参加とお伝えしますわ。お忘れなく当日来てくださいませね!」

 クリオネオンは、空へとふわふわと旅立っていった。
 それを見届けてから、シルビアは船の操縦をしているアリスのもとへ向かう。

「さあ、アリスちゃん!目的地はクレイモラン王国に変更よ!」
「がってんでげす!」

 航路を変え、シルビア号は北の大地を目指す。

「…………」

 クリスマスにうきうきする仲間たちを眺めるカミュの眼差しは優しい。
 本音は……あの国に足を踏み入れたくなかったが、そんな自分勝手な思いで喜ぶ仲間たちに反対はできなかった。

(クリスマス、か……)


 ……――クレイモラン王国のクリスマスは、世界最大と云われている。
 この時期は観光客も多く訪れ、足を一歩踏みいれば、そこは夢の国だと皆が口を揃えるほどに。
 城も城下町もきらびやかに装飾され、中央にある噴水は、この時期だけクリスマスツリーに代わり人々の目を引いていた。

「すごい賑わいだ……」

 以前、訪れた際とは比べものにならないぐらいの人の数にイレブンは驚く。

「これがクレイモランのクリスマスなのね!国全体がオシャレしちゃってとってもステキ!」
「ふふ、この国いる誰もがとっても楽しそうな笑顔をしていますわ」
「だって、クリスマスは子供も大人も関係ないもの!」

 シルビア、セーニャが町をきょろきょろと見回して話す中、大人でもあり子供でもあるベロニカが胸を張って言った。

「町の散策も気になるとこじゃが、まずはお城に行ってシャールへの挨拶をしよう」
「リーズレットのその後も気になるわね。この町の様子じゃ、とくに問題なさそうだけど……」

 ロウとマルティナの言葉に頷き、一行は人をかき分け城へと向かう。

「あ、あいたたた……」

 突然、後ろからそんな声が聞こえ、皆は振り返った。
 何やらナマエが前屈みにお腹を押さえている。

「ちょっとナマエ、どうしたの?大丈夫?」
「なんだろう……冷えたのかなぁ?お腹がイタイ……」
「……イレブン。オレはこいつの看病をするから、皆と城へ行っててくれ」
「私はちょっと休めば大丈夫」

 イレブンも皆も心配そうな目をナマエに向けていたが「まあ、カミュがついていれば大丈夫か」と結論付け、城へと向かうことにした。

 仲間たちの姿はすぐに人混みで見えなくなる。

「……ナマエ。ヘタな芝居はもうしなくていいぞ」
「え、バレちゃったかな?」

 すぐさま顔を上げた彼女の表情はケロリとしていた。
 本当は腹痛なんてなく、カミュにはすぐにわかった。自分の事情を少なからず知っているナマエは気を遣ってくれたのだ、と。

「何人かは騙されて、何人かは気づかないフリしてたかな。……まあ、でも、ありがとな」

 そっぽを見ながらお礼の言葉を言ったのは、カミュの照れ隠しだ。ほんのり頬が赤いのは冷たい空気だけじゃないだろう。

「ここは人がすごいから城門辺りで待ってよう」
「付き合わせちまって悪いな。……あれ、飲んで待ってようぜ。お礼におごってやる」


 ――二人が仲間たちの帰りを待つ間、一方の城を訪れた彼らは、意外な人物と出会していた。


「このドブッ……ゴホン。悪魔の子とその仲間たちよ。まさかこのような場で鉢合わせするとはな」
「なぜ、お前たちがここに……!」

 玉座の間で出会したのは、宿敵とも言えるホメロスとグレイグであった。
 ホメロスは明らかに「ドブネズミ」と言おうとしたが、シャール女王の御前で言葉を慎んだらしい。

「イレブンさんたちはこの国を救ってくれたお礼で、デルカダールの兵士の方々は救援部隊として来ていただいたお礼として、招待したのですが……お二方はお知り合いだったのですか?」

 困惑するシャールに、グレイグが説明する。
 奴は世界に厄をもたらす悪魔の子だと――。

「ふぅ〜ん、悪魔の子ねぇ」
「そんな……きっと大きな誤解が生まれてしまったのですね。だって、この国を救ってくれたイレブンさんたちが悪魔の子だなんてありえないですもの」

 意味深に呟くリーズレットとは別に、心を痛めるようにしてシャールは話した。
 イレブンたちはうんうんと頷き、グレイグとホメロスはもどかしそうに顔を歪める。
 自分たちよりずっと年下の娘だが、彼女は立派なこの王国の王女だ。他国の騎士であり、招待されているという立場上、二人は強く進言できない。

「でも、シャール。他国の問題に口を出すのは慎重に。国際問題になるわよ」
「そうね……」

 リーズレットはシャールに的確に助言した。すっかり相談役兼付き人として板についている。なんなら大臣よりも頼りになっていそうだ。

「何にせよ、この者たちは我らが追っていた罪人です。シャール女王、即刻引き渡しを……」
「……そうだわ!それならアレがいいんじゃないかしら」

 グレイグが堅い口調で促した矢先、名案が浮かんだというように、シャールは両手をぱんっと合わせて言った。

「我が国の伝統的な遊びですよ!」
「伝統的な遊び?」
「ねえ、前にもこんなことなかったかしら?そう、ちょうど一年前の年末年始に……」

 首を傾げる勇者のあとに、ベロニカが思い出すように言った。その言葉に、皆も「あった」と、思い出す。

 あれは、サマディー王国での出来事だ。

「雪合戦です。子供たちは丸めた雪を投げ合うことによって、コミュニケーションを深め、友情を育むのです。きっと、雪解けのようにあなた方の誤解も溶けるでしょう」

 ここにカミュがいたなら「雪合戦ってそんな大層なものじゃなくて、タダの遊びだろ」とつっこんだだろうが、生憎彼はここにはいない。

「僕、雪合戦ってしてみたかったんだ!その勝負なら受けて立つぞ」

 お決まりの展開だ、とやる気満々に言ったイレブンに対して、なにやらグレイグとホメロスはニヤニヤとした笑顔を浮かべた。

「フ……。グレイグ、今のあやつの言葉を聞いたか?」
「ああ……。しっかりこの耳で聞いたぞ、ホメロス」

 まごろっこしく話す二人に、イレブンだけでなく皆もむっとする。

「雪合戦初心者が、デルカダールが誇る我ら双頭の鷲に勝負を挑むなど笑止千万!」

 グレイグが言った。

「聖夜というこの日に、その選択を選んだことへの積もった雪より深い後悔を味わわせてやろう!」

 ホメロスが言った。


「「雪合戦で勝負だ!!」」


 そして、イレブンを含めて三人の声がバチバチと揃った。


「おいおい!なんでグレイグとホメロスがここにいて、雪合戦の勝負になんてなってんだ!?」

 ――クリスマスじゃなかったのか!?

 仲間たちと合流したカミュは、町の広場で急遽行われることになったvs. グレイグとホメロスとの雪合戦勝負に驚く。

「いつものことよ、カミュ」
「成り行き上、ね」

 呆れるベロニカに続いて、マルティナが困った笑みを浮かべて言った。

「そういえば、ナマエ。君はお腹は大丈夫?」
「あ、うん。カミュからあったかいココアをもらって飲んだら治ったよ」

 イレブンの言葉に、ごまかすように笑いながらナマエは答える。

「それより……まさかここで二人に出会すなんて」

 しかも、クリスマスという特別な日に。

「うん。でも、前回は勝ったんだ。今回もカミュと二人なら大丈夫さ!」
「あ、いや、オレは……」

 この国で目立つことはやりたくない――カミュがやんわり断る前に、

「待って!イレブンちゃん。……今回はアタシも一緒に勝負させて!」

 名乗りを上げたのはシルビアだった。シルビアはこっそりカミュにパチンとウィンクする。
 訳ありなのは自分も同じなので、なんとなく気が乗らないカミュに気づいていたらしい。

「シルビア!うんっ、じゃあよろしく頼むよ」
「グレイグとホメロスちゃんにギャフンと言わせちゃいましょ!」
「あれ、グレイグだけ呼び捨て……?」
「ホホホホ!イイ男は細かいことは気にしないのよ、イレブンちゃん」

 不思議に思いながらも、イレブンはシルビアと共にグレイグとホメロスに向き合って立つ。

「おや?今回の相棒はあのハリネズミのような青髪の男ではないのだな」

 ホメロスの言葉に応援席から「誰がハリネズミだ!」と、カミュの言葉が飛んできた。

「フフ、お手柔らかによろしくね」
「ホメロス、奴を侮るなよ!奴は……ごふ!」
「グレイグ!?」
「準備運動をしてたら手がすべって雪玉が飛んじゃったわ!ごめんなさいね!」
「白々しい……!さすが悪魔の子の仲間だ。卑怯な真似を……!」

 グレイグは顔面に当たった雪を払う。どうやら「自分のことはしゃべるな」ということらしい。……まあ、いい。

「誰が相手だろうと俺たちは負けん」
「……それはそうと、勝敗はどうつけるんだ?」

 イレブンの疑問にホメロスが答える。

「当然、戦闘不能になった方が負けだ」

 戦闘不能……。その言葉に雪合戦といえ、これは戦いなのだとイレブンはごくり、と息を呑む。

「呪文や武器での攻撃も禁止にしよう。これは雪合戦だからな」
「ちなみに負けたチームの方にも盛り上がるような罰ゲームを用意しました!」
「私のアイデアよ」

 グレイグの言葉のあと、にこやか言ったシャールの声に、四人は「は……?」とそちらに顔を向けた。

「負けたチームはサンタさんとトナカイさんになって、町の子供たちへプレゼントを配ってもらいます」

 そのシャールの言葉に、子供たちから歓声が上がる。一方のグレイグとホメロスは嫌そうに顔をしかめた。

「……ふん。奴らに勝てばなんの問題もない」
「ああ、そうだな。そして、我らの勝利は決まっている!」
「アタシはサンタちゃんになるのはいいけど、勝敗は別よ!」
「僕らだって負けないぞ!」

 バチバチと火花が散って、雪合戦が始まった。――始まってすぐ、勇者チームは防戦一択になっている。

「さっきの威勢の良さはどうした!」
「ハハハ!雪玉はまだまだあるぞ!」
「ぶはっ!」

 積もった雪に避けるは困難で、雪玉の一つがイレブンの顔面に直撃した。

「イレブンちゃん!んもうっ、ちょっとリーズレットちゃん!一方に肩入れするなんてフェアじゃないわ!」

 グレイグとホメロスに、リーズレットが大量の雪玉を魔法で作り出している。

「だって私、イイ男の味方なの♡」

 イイ男とはホメロスのことらしい。彼は勝ち誇ったように笑みを浮かべて雪玉を絶え間なく投げつける!

「だったらこっちも雪玉を作って作って作りまくるわよ!」

 ベロニカは仲間たちに声をかけて、彼らは頷く。あっという間に大量の雪玉が出来上がった。

「みんな、ありがと!イレブンちゃん、アタシのあとに続いて!」
「わかった、シルビア!」
「っなんだ!?そんなとくぎが使えるのか……!」

 やはりゴリアテ、あなどれん……!
 シルビアは得意の火ふき芸で飛んでくる雪玉を溶かし、その隙にイレブンは雪玉を投げ続けた。

 グレイグとホメロスは思わぬ反撃に怯む。

「二人ともやっちゃえー!」
「イレブン!手を止めるなよ!」
「イレブンとシルビアも息ぴったりじゃのう」

 仲間たちの応援だけでなく、デルカダール兵士たちの応援、観客たちの声援も加わり、雪合戦は白熱していった――……

「師匠、雪だるまのカオになりそうなものを集めてきたよ!」
「お姉さま、私は頭に被せるバケツを見つけましたわ!」
「でかしたわ、二人とも!」
「おいおい!?お前ら雪合戦そっちのけでなに雪だるま作ってんだよ!」

 すかさずカミュのつっこみが入った。雪合戦の観戦をよそに、三人娘は雪だるま作りに夢中になっている。

「だって雪玉が行き交うだけで、全然決着つかなくて飽きたわ」
「飽きたってお前なぁ……」

 あっけらかんとしたベロニカの言葉に、カミュはがっくりと肩を落とした。確かに勝負は拮抗して…………ん?

 そこでカミュはニッといい歯を見せて笑う。いい作戦が思い付いた。

 量より質量だ――!

「イレブン、シルビア!この雪玉を使え!」
「!?それって……!」
「さすがカミュちゃん!さあ、イレブンちゃん!決めるわよ!」

 カミュは二人に渡したのは、雪だるまの胴体より少し小さめに作られた頭だ。ちゃんとナマエが集めたカオつきである。

「「うおおお……!」」

 とはいえ、イレブンとシルビアの二人がかりでやっと持ち上げられるほどの大きさだ。
 最後の力を振り絞って、雪だるまを持ち上げたまま二人はグレイグとホメロスに向かって突進する。

「!?それは雪玉ではなく雪だるまの頭ではないか!」
「おい、貴様ら正気か!?」
「シルビアいくよ!そ〜れ!!」

 動揺するグレイグとホメロスをよそに、イレブンは容赦なく二人に投げつけた。

「ぐ……動けん」
「おのれ……この所業、やはりお前は悪魔の子……」

 巨大雪玉の直撃により、戦闘不能状態になった双頭の鷲チーム。これによって、勝敗は勇者チームに決まった。

「ようやったわ!イレブン、シルビアよ!」
「二人ともおめでとう!」
「今回もあたしたちの勝ちね!」
「雪だるまさんの頭が……」

 勇者チームの勝利に喜ぶ仲間たちだったが、セーニャだけが粉々に砕けた雪だるまの頭をしょんぼり見ていた。

「セーニャ、また作ろう」
「今度は僕たちも手伝うよ」
「――はい!」


 ……――夜になり、雪が降り始めたクレイモラン王国は光に包まれる。
 飾られた装飾が宝石のように光りを放ち、城下町のツリーが一段と輝いていた。

 近くでは聖歌隊の清らかな歌声が響いている。

「あら、グレイグ。サンタさんの格好似合っているじゃない。騎士の姿よりずっと素敵よ」
「姫さま、ご冗談はお止めください!」

 サンタクロースの赤い帽子と服に身を包み、顎には白いヒゲを生やしたグレイグがそこに。
 マルティナの言葉に不服そうな表情をしている。

「オレはホメロスの方が似合っていると思うぜ?そのトナカイの格好がな!」
「えぇい!貴様ら笑うな!」

 そして、隣にはトナカイの着ぐるみを着たホメロスの姿が。

「大丈夫よ、イイ男はなにを着てもイイおと……フフフ!」
「…………」
「お二人ともとっても素敵ですよ!子供たちも喜ぶと思いますわ」

 シャールはにこにこと人の良さそうな笑顔を見せて言った。悪気がないのが逆に質が悪いとグレイグとホメロスは思う。

「……国中の子供たちにプレゼントを二人で配るとなると骨が折れそうだな」
「とっとと済ませるぞ」

 せめて、この聖夜が終わる前に終わらせたい――二人がプレゼントの入った白い大きな袋を担ごうとした時。

「二人だけじゃ大変だから僕たちも手伝うよ!」
「アナタたち二人だけじゃクリスマスが終わっちゃうものね」

 そう声をかけたのはサンタクロースの格好をしたイレブンとシルビアだった。こちらもグレイグとホメロス同様、似合っている。

「……ふん。我らに恩を着せようという魂胆なら甘いぞ。我らと貴様らは追う者と追われる身……それはクリスマスでも年末でも来年になっても変わらぬ」
「だが、ホメロス。奴らがそこまで手伝いたいと申すなら、手伝わせてやってもいいのではないか?」

 そこまで手伝いたいとは言っていないが……。関係上、素直に受け入れられないのだろうと、イレブンは訂正しないであげた。

「……よかろう。悪魔の子よ、やるからにはちゃんとサンタクロースになりきれ。いいな」
「イレブンにえらそうに言いやがって、お前はトナカイになりきれよな」
「まず挨拶は「メリークリスマス!」だよね?」
「そうよ、イレブンちゃん!グレイグもちゃんとイレブンちゃんみたいに元気に言うのよ」
「貴様に言われんでもわかっている」

 凸凹なサンタクロースとトナカイに、皆は少し心配になりながらも見送った。

「イレブンさまたち、大丈夫でしょうか……」
「私たちも手伝った方がよかったかな?」
「なんだかんだ大丈夫でしょう!さ、あたしたちはクリスマスを楽しみましょ!」
「どれ、カミュ。わしらはミニスカサンタちゃんを探しに……」
「じいさん、オレを巻き込まないでくれ」
「ロウさま、シャール女王の前で……」


 ――イレブンたち四人は手分けして子供たちにプレゼントを配っていく。


「メリークリスマス!プレゼントを受け取るといい。これからもちゃんと父上と母上の言うことは聞くんだぞ。サンタさんとの約束だ」
「おい、私の角で遊ぶんじゃない!プレゼントをもらったらさっさと立ち去れ」
「みんなー!サンタさんからのプレゼントよ〜!こっちに集まってー!」

 プレゼントをもらった子供たちは皆同じように幸せそうに笑っていた。
 その笑顔を見る勇者の頬は、自然にほんわか上がってしまう。

「……あっ、メリークリスマス!」

 イレブンはクリスマスの明かりに負けないような眩しい笑顔を向ける。

「ん?この国の子供じゃないからプレゼントはもらえない?大丈夫だよ。これはサンタさんから子供たちへのプレゼントだから……ほら、受け取って!」


 Merry Christmas!☆.。.:*・゜



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