「さあ、カミュ。今日こそ僕らにかえん切りを教えて!」
「私も覚えたいから、お願いします!」
イレブンとナマエの言葉にカミュは「しょうがねえなぁ」と頭をかく。
「教えろっつっても、俺も上手く説明がな……。練習して体で覚えてくれとしか」
困ったように言うカミュに「なんとなくでもいいからさ」「コツとか…」と二人は聞く。
「コツねえ……。こう、ぶわぁっと剣から炎を生み出すんだ」
そう説明するカミュの片手剣の刀身から炎が生まれ――そして消えた。
「……。君は分かった?」
「分からない。どうやったらそのぶわぁっと炎が出るのかが分からない」
深く眉間にシワを寄せる二人に「いつの間にか自然とできたから上手く説明できねんだよ」とばつが悪そうに言うカミュ。
「出たよ、カミュのド器用発言」
「いくら練習しても自然にできる気がしないよ……」
「お前らスキルの種でも口につっこんでやろうか」
二人は仕方なく地道に特訓をすることにした。
――数時間後。
「かえん――切り!!」
ついにイレブンは成功して、魔物を倒した!
「わああ!!見た!?二人とも、今の見た!?ぶわぁっと炎が出て、かえん切りが成功したよ!!」
はしゃぐ声を出しながら二人に駆け寄るイレブン。
「ああ、ちゃんと見てたよ。やったじゃねえか!」
「すごい!見事なかえん切りだったね!おめでとう!」
もう一回「かえん切り!」とやってみせる嬉しそうな勇者に、カミュもナマエも微笑ましく笑う。
「私も出来るように頑張る…!」
「うん!君なら出来るさ!」
意気込むナマエは続いて「どんな風にできたの?」とイレブンに聞くと……
「えっと……そうだな……。……こう、ぶわぁっと……」
「……。そのぶわぁっとが分からないよ……」
カミュと同じような答えに。
隣でそのカミュが「だから言っただろう」と得意気に言う。
どうやら出来た者しか分からないらしい。(なんだか私は出来る気がしない……)
そこから時は経ち、仲間になった自称最強の魔法使いによって。
かえん切りを覚えないナマエが代わりに覚えたのはヒャド切りだ。
「どんな感覚?」とイレブンとカミュの二人が聞くと――
「えっと…呪文を唱える代わりに、魔力を剣に媒介させて発動させる感じかな」
という、普段ふわふわした彼女らしからぬしっかりした説明が返ってきて、イレブンとカミュはとても感心した。