私が従兄弟の糸師兄弟に会ったのは、小学校に上がって、6歳のときだった。
冴くんと凛くん。
二人とも顔がよく似ていて、2歳上の冴くんは2歳しか違わないのにクールですごく大人っぽく見えて、同い年の凛くんはにこにこ笑う可愛い男の子だった。
「こんにちは、冴くん、凛くん。ほら、なまえもちゃんと二人に挨拶して」
「はじめまして!名前はなまえです!」
「二人ともうちの娘をよろしくね」
「おう」
「よろしく……!」
二人は初対面の私を快く受け入れてくれて、一緒に遊ぼうとなり……
「なまえはなにして遊びたい?」
希望を聞いてくれた冴くんに、私は……
「ねえねえ!ふたりのまつ毛にめんぼうのせていい!?」
「「……!?」」
今思い出しても、子供ながら突拍子のないことを言ったなぁと思う。でも、二人を初めて見たとき、そっくりなその瞳がすごく印象的だったんだ。
天気の良い日の海みたいな、ターコイズブルーの瞳だ。
***
「すごーい!冴くんも凛くんもまつげにめんぼうのるー!」
「……こんなことして楽しいのか?」
「ねえ、なまえちゃん。これ、いつまでのせてればいいの?」
「たのしいよー!いま、わたしの学校でまつげにめんぼうのせるの流行ってるんだー」
「変なもん流行ってんだな」
「目がしばしばしてきた……」
「わたし、まつげにめんぼうのせられないから二人ともいいなー。次はつまようじのせてみない!?」
――あのとき、文句の一つも言わずにつき合ってくれた二人は優しかったなぁと思い出す。
そんな私も今では高校生になり、今日は久しぶりに凛くんとの再会の日だった。
「凛くーん!こんにちはー!久しぶりだね、遊びにきたよー!」
「なまえ……なんか昔より騒がしくなってねえか」
「お邪魔します!」
***
「じゃーん!凛くん見て!私もついに、まつ毛に綿棒のせられるようになったよ!これぞ長年のまつ育の成果よ」
「そこは変わってねえのかよ……。まつげ伸ばすより他に伸ばすもんあんだろ」
「例えば?」
「身長とか」
「凛くんが伸びすぎなんだよ!」
「成績」
「うっ……これでも頑張ってるよ!」
高校生になった凛くんは、顔立ちも大人っぽくなったけど、ちょっぴりいじわるにもなっていた。
「てか、凛くんも言うほど成績は伸びてないみたいじゃない?」
「……なんで知ってんだ」
「おばさんから聞いた」
「……」
あんな笑顔が可愛かった凛くんが舌打ちなんてしちゃって……。
でも、その横顔は相変わらず上も下もまつ毛が長く、綺麗な顔立ちなのがわかる。……うん。可愛いからかっこいいに凛くんはなったな。
「今の凛くんなら綿棒2本のせられるんじゃない?」
「やんねーよ」
「冴くんにも会いたかったなー」
冴くんはサッカーですごいチームにスカウトされ、スペインに渡ったという。かっこいいなぁ。
「凛くんもサッカーしてるんでしょ?今度、試合観にいっていい?」
「別に、かまわねえけど……」
「やったー!」
「つか、いつまでまつ毛に綿棒のせてんだ」
「いつつっこまれるかなぁ〜って思って」
ちょうど目が乾いてきた頃、凛くんの手が伸びるてくるのが見える。私の両目にのった綿棒を取ると……
「凛くんもやりたくなった?」
凛くんは自分のまつ毛に綿棒をのせ始めた。
「……2本のったぞ」
「すごーい!」
「お前に勝ったな」
「負けず嫌いかよ」
「兄ちゃんなら3本のるかも」
「あはっ、お兄ちゃんっ子なのは変わらずだね、凛くん」
私がそう言って笑うと、凛くんはちょっと恥ずかしそうに顔をしかめた。
お兄ちゃんの冴くんのことを話す凛くんの顔は、あの頃のまま変わらなくて……それがなんだか、私は嬉しかった。