それは目映いひかりだった。いっそ暴力的と言って間違いないだろう、鮮烈で、鮮明な、赤。目の前には確かに炎の色しかないはずなのに、視線の端にチラつくのは、雪のように輝く銀色で。
白椛眞銀として過ごしたこの長い年月に、シュテル・H・シュネーという記憶が重なる。白椛眞銀という人間の、影のように。わたしを拾ったお人好しと、その友人二人を取り巻く、赤い炎。白椛眞銀はそれを見るのは初めてだったけど、シュテルとしてはその限りではない。何度も繰り返し見てきた王の覚醒に、わたしの記憶まで引っ張りだされてしまった。――それだけなら、良かったのに。
迸るグレーのノイズ。アナログ放送の砂嵐のように、ザ、という耳障りの悪い音がして、耳を塞いだ。胸の部分に重なった服を掴み右耳を抑えれば、収まった炎の内側に居る出雲がわたしを呼ぶ声が聞こえる。
「――多々良……?」
「え、俺?」
今≠フ多々良じゃない。血に塗れた、多々良が見えた。タンマツのものだけじゃない。赤のクランの光が蝶のかたちをして漂っていた。白銀の髪が画面の端で揺れていて、その手には銃が握られていて、その人がきっと多々良を殺したのに、全部の姿は見えない。なんで、どうして――
「前は、こんなに鮮明に見えたりしなかったのに」
「マシロ!」
「、出雲、わたし」
でも、どう言えばいいのだろう。これまでに異能の力なんて三人の前で使ったことなんて無かったし、わたしだって忘れていた。伝える手段を、わたしは今、持たない。
「ちょっと、疲れちゃったみたい」
「……そうか」
前頭葉がある部分に手を当てて目を閉じる。納得していないだろう声色のくせに、口先だけは流してくれるのが、出雲の良いところだ。貧乏くじを引きやすい性格だけれども。
「帰ろっか、ねえ、キング?」
「ああ」
多々良の尋ねる声にゆるく頷いた尊と、わたしからそちらに顔を背けた出雲を見ながら、わたしもまた、三人が歩む方向に足を進めた。何も知らない、雪白の少女のように。わたしは歩めるのかという不安を、胸に抱きながらも。
「どうか今だけは、あのひとたちと、何も知らずに、笑わせて。ごめんなさい、王様、アディ。ごめんなさい、ごめんなさい。――許して、ください」