朝にユダ
「……おはよう、社」
「おはよう、眞銀」
 ばさり、と射し込む白銀の光に目を細めた。カーテンを開けた向こうにある陽の光が社の髪に反射して、目映いばかりのその光に、ふ、と息を吐く。
「クロは?」
「ご飯作ってるよ」
「ネコは」
「まだ起きてないかなあ」
 気だるげに言葉を紡ぐわたしは起き抜けで、対して今さっきわたしの眠る部屋のカーテンを開けた社はもう目を醒ましている。わたしが幾度か瞼を重ね合わせ、一度くあ、と欠伸をすれば、社はくすぐったそうに笑った。
「起きた?」
「すっかりね」
 ベッドに倒したままの身体を起こして、社が手に持っている制服を受け取る。今から着替えるんだから察してよ、と言わんばかりの視線を社に向けたが、社はわたしと目が合ったまま首を傾げていて、出て行く様子はない。
「社、確信犯でしょ。出雲に通報するよ」
「それは……困るかな」
 困ると言いつつも全く困ったような顔を見せない社にため息をつく。出雲の名前を出すといつもこうだ。
「着替えるんだから、社は出てって」
「はーい」
 ぱたん。柔らかな音を立てて閉じられた木製の扉が弧を描くのを、一瞬だけ追いかける。扉を追いかけて弧を描いた視線は、一度のまばたきのうちに消失した。