「……終わるんだね」
手から力が抜けていく。はらり、と雪のような光が、宇宙へと昇っていく。本当は、王様の傍に居たかったけど。本当は、ずっと一緒に笑っていたかったけど。でも、仕方ないじゃない。視えていたのに救えなかった多々良と尊を思い出せば、わたしだけ、なんて我儘は言えなくて。
王様の物語に、わたしは要らなくて。危うくも完成された赤に、わたしというイレギュラーな歯車が入ってはいけなくて。それならわたしはどこに居れば良いのだろう。「シュディ」とわたしのことを呼ぶ柔らかな声に甘えていて、良かったのだろうか。その声も掠れてしまった今となっては、もうそれも、分からなくなってしまったけど。
「王様、わたし、わたしね。王様に、言いたいことが」
言いたいことが、あったの。
「十束も尊もそんなこと思っとらんの、お前は分かっとるやろ」
「分かってるよ。……分かってる。だからこそだよ、出雲」
こんな役回りばかりさせてごめんね。そう言って笑えば、出雲は眼鏡の奥で少しだけ、目を細めた。顔を、顰めて。――13年前、あの船から堕ちて、出雲に拾われて、尊が王として覚醒して、記憶を取り戻して……多々良が死んで、尊が死んで。
「今度は、わたし」
「……マシロ」
変えられない。胸に手を当てて、ふと考える。だってこの命は、石版が繋いでいる。王様さえ、わたしの力の全てを知らなくて、何故生きているのかも、あの人は知らないから。
あの人は王だから、もし理解していたとしても、今からやることを変えようとなんてしないだろう。わたしが消えるとしても。そしてまた、自分を責めるのだ。だから、伝えないようにしようと思った。
「これはわたしの、我儘。少しでもあの人に、わたしのことを覚えていて欲しいから」
「マシロ。お前は――」
「わたしきっと、王様のことが、伊佐那社のことが、……アドルフ・K・ヴァイスマンのことが、好きだったんだ」
「シュディ。……シュテル。シュテル・H・シュネー」
君に、言いたいことがあったんだ。