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凪いだ風のように桜を散らす香りに、随分と昔にしまい込んだはずの記憶が溢れ出す。世界を守ったあの人のことを覚えているのはわたしと、彼と共に戦っていた人たちくらいではないだろうか。ぐ、と唇を噛み締めれば、わずかに血の味が滲んで、慌てて手の甲で血を拭った。当たり前のように甲に付いてしまった赤に顔を歪めながら黒いセーラーを揺らし、頭上にある桜に八つ当たりをするように、散っていく花びらを睨みつけた。