Always 1

 例えばそれを、運命だと定義付けたとしよう。わたしたちがこの場所に、血を分けて産まれたことも。きっとずっと、君に負けていたことも。わたしだって頑張った。頑張って頑張って、頑張った。認められたくて、誰かと一緒に居たくて、頑張って。それでも、どれだけ頑張ったとしたって、その全部を君が、さらっていく。羨ましかった。妬ましかった。それでも愛していた。だって、たった一人の兄妹だ。もしかしたら同じ一人で生まれてきていたかもしれないほど、近い、兄妹だった。羨望も嫉妬も憤怒も挫折も感じ飽きた。だけどまさか、兄が、あの兄が前科持ちになるだなんて信じられなくて。兄のことだから、誰かを助けようとしたんだろうな、とか、ここじゃない所に飛ばされるんだろうな、とか、沢山思ったけど、それ以上に、ざまあみろと、少しでも思ってしまった自分が、怖くて。どうしてそんなこと思ったんだろう。なんで、思ってしまえたんだろう。
 罪悪感を塗り潰すように、兄の東京行きに同行した。友達に止められたし、行かないでと言われたし、両親にも良い顔をされなかったけれど、引き留められるという行為が、その気持ちが嬉しくて、けれどそれさえも自分の優越感に変えてしまえるわたしが、何よりも。
 
「東京には一緒に行こうね、お兄ちゃん」
「ああ、分かった」
 
 何よりも、本当は、誰よりも。わたしはわたしが、恐ろしかった。
 
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 鳴上悠、という男の人がいる。有里渚、という女の人がいる。今は多分、大学生だろう。仲良くして貰っていたし、どうやらこの二人は付き合っているらしくって、子供が出来たらこんな感じかなあ、なんて話していた渚さんのことを思い起こす。でもそういえば、あの人たちの大学は東京だったはずだ。渚さんは天涯孤独だそうだし、悠さんについて行くのかとも思ったのだけれど、わたしのためにここに残ってくれたらしい。大学は悠さんと一緒だから、東京に行ってしまったのだけど。
 
「睡ちゃん、良い? ええと、先輩から預かってきたものが……これだ、あった。わたしたちは何があっても睡ちゃんの味方だからね、忘れないでね。ご飯はちゃんと食べて、お母様やお父様にも宜しくね、それから、それから」
「渚さん、落ち着いて……」
「だって心配なんだもん……」
「もん、って」
 
 何歳ですかあなた、と突っ込みたくなったが、わたしのことを心配してくれているのは伝わっているので、何となくそう言ってあしらうのは憚られた。
 
「悠さんに、宜しくお願いします」
「はい、お願いされました」
 
 それで別れたきり、連絡は取り合っているけれど、わたしの予定が合わなくて二人とは会えていないし、もしかしたら、東京に行けば会えるかもしれないな、と思いながらスマートフォンを手に取る。
 入れた覚えのない、目のマークのアプリを見つけるのは、それから少し経ってのことだ。まあ、その時そのアプリケーションを見つけていたからといって、何か変わることとかはないだろうけれども。