東の海イーストブルー 1
 ずっと独りで生きてきた、とは、嘘でも言えない。この大いなる青い海に囲まれた場所に“独りでいること”は難しくて、だから、知らず知らずのうちに誰かに助けられたことも、沢山あるんだろう。ただ、ただ――……誰かに助けてもらうということを自覚したことが、なかった。ただの一度も。
 優しげな声を向けてくれるらしい親という存在を、見掛けたことはある。ただ、わたしにそういう存在はいない。――と、優しげな声を掛けられたこともない。ただひたすらに、この家の中で眠っているだけ。永遠にこの中に閉じ込められて、それで、全部終わりだ。いつもみたいに襲ってくる眠気と、ばくばくと大きな動きを繰り返す胸が、わたしの記憶を焦がす。小さな小さなこの部屋で、わたしはずっと、眠っている。


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