耀きはしろがね

「春奈ちゃん!」

銀糸が宙を舞う。羽純のそれより少しばかり薄い銀色を視界に認めて、オレは溜息をついた。

「春奈ちゃん今日は大丈夫?辛かったりしない?痛くない?」
「大丈夫です。ありがとう、羽純ちゃん」

銀の片割れ。後ろ髪を細く結んでいる方。七々原羽純。羽純は、オレの彼女である。
師弟関係に大喧嘩エトセトラ紆余曲折を経て、オレたちはやっと恋人という関係に収まった。その間太刀川さんや二宮さん、加古さんたちに妨害されたことは、全力で略したいと思う。
――さて、正式に彼氏と彼女という関係になったオレたちだが、最近オレには悩みがある。

「迅くん、あんまり春奈ちゃんに無理させないでよ」
「オレは春奈に出来ることを頼んでるよ」
「良くもまあ、ぬけぬけと……っ!」
「あ、あの、迅くん、羽純ちゃん、」

榎本春奈。先程の銀糸の片割れ。迅さんと共に過ごしている、玉狛の隊員。羽純は、この人に甘く、そして、過保護だ。

「春奈ちゃんの任務の時はわたしも頑張るって言ってるじゃん」
「オレだって春奈のことは心配だけど、任務くらいはこなせるから」
「任務で不慮の事故があった時はどうするんですか?お得意のサイドエフェクト?確定されたものじゃないでしょう、それは」
「痛いとこ突くなあ」

「当たり前でしょ、何年一緒に居ると思ってんの」、と迅さんに悪態をついている羽純と、ぼんち揚げの袋を片手に、もう片方の手で頭を掻いている迅さん。そんな二人に挟まれておろおろしている、榎本さん。
こんなことを思っていたと知れたら、情けないと思われるかもしれない。羽純ならもしかしたら、思われない可能性もあるかもしれないが。オレは、榎本さんが、羨ましい。あれだけ羽純に大切にされて、共に過ごせて。オレはそんな気持ちを内に隠しながらも、こうしてまた、羽純のクールダウンに駆り出されるのだ。きっと迅さんは、どのタイミングでオレがそこに出て行くのか、分かっているだろうに。

「ハイストーップ」
「こうくん……」

羽純の肩に手を置けば、瞬間、羽純のテンションは落ち着いていく。助かったよという迅さんの胡散臭げな笑顔に呆れつつ、オレは今日も羽純を回収するのだ。

「春奈ちゃん〜!!無事で!どうか無事で〜!!」
「お前いつの時代の人間だよ」

オレは羽純の手を引く。振り返ればきっと榎本さんは羽純に向かって手を振っているであろうな、と考えて、それを見たらまた嫉妬してしまうだろうな、と予想して。

「ほら、行くぞ」
「はあい」

どれだけ背負っているかなんて計り知れないような、細く白い腕に、力を込めた。