「……今日見ないなと思ったら、此処に居たの、春奈ちゃん。こんばんは」
「、こん、ばんは……。あの、羽純、ちゃんは……」
「あれ?迅くんから聞いてない?わたし迅くんに連れられて迅くん側で戦ってたんだよね、今さっき。あと桐絵とお泊まり会する約束してるんだ」
そう言えば、やっと春奈ちゃんはわたしを玉狛に迎え入れてくれた。ありがとう、と言いながら、先程藍ちゃんや佐鳥にやった名残りで頭に手を置こうとして、止まる。迅くんにきつく注意されていたのを忘れるところだった……。春奈ちゃんのサイドエフェクトは過剰感応だから、十二分に気を付けるように、と。
手持ち無沙汰になったわたしの目を見て、春奈ちゃんは少し目を伏せた。「……ごめんなさい……」と言って俯く春奈ちゃんにわたわたとしながらも、わたしは口を開く。
「あー……んー……なんていうか、その。迅くんから春奈ちゃんのサイドエフェクトを聞いてたんだけど」
「――迅くん、から?」
「そう、迅くんから。春奈ちゃん、過剰感応のサイドエフェクト……なんだよね?」
そう伺い見ると、春奈ちゃんはゆるく、こくり、と首を縦に動かしている。
「わたしのサイドエフェクト――大気変動は、空気を操ることが出来るサイドエフェクトだから。もし春奈ちゃんが苦しくなったら、助けられるかもしれないな、って思ったんだ」
春奈ちゃんは目を見開く。――しかし、初めて会った時はあまり表情を表に出していなかったのに加え、あまりコミュニケーションを取れる方ではなかったと思うんだけど。久し振りに会うわたしと長話を出来ている時点で、思わず成長したなあ、とか思ってしまうわけで。はく、と口を開きかける春奈ちゃんを注視した瞬間。
「羽純ー!!!」
「羽純」
「……桐絵、京ちゃん」
「全然気付いてなかっ……ちょっと羽純、うちの隊員いじめてんじゃないわよ」
「えっ」
「小南先輩、実は羽純って結構そういうことするんですよ」
「えっ、なに」
「そうだったの!?」
「ウソですけど」
一気に賑やかになる廊下。奥に見える白いふわふわの髪。あれが先生の息子さん。
……今頃迅くんは最上さんを差し出しているだろうか。わたしもそろそろ腹を括らなければならない時が来たのではないか、と感じる。騒がしい声を耳に入れながら、ポケットの中に入った黒いピンキーリングに触れて、春奈ちゃんの方に振り向く。
「まあ、もしそういうことがあったら、だから。考えておいてよ」
そう言ったわたしに、迅くんを待つのであろう、扉の前から動こうとしない春奈ちゃんは、小さく頷く。一方わたしは桐絵に手を取られ、暖かな光が注ぐ、支部のリビングへと足を進めたのであった。
2018