Epilogue-17-

 
「……いつも食べているケーキ、調べてみたんだ」
「このパウンドケーキのこと?」

 コクリと真剣な面持ちで頷く彼。私はもちろん意味を知っている。意味を調べてみて、だなんて言ったことはないが、気になって調べたらしい。

「……レモンのパウンドケーキはフランスで週末に食べられていたという話があるらしいね。大切な家族や友人と共に食べる、そんなケーキのことを言う」

 そうだ。彼との週末を特別にしたくて、彼との距離も縮めたくて選んだケーキだ。私の中では思い入れが深い。

「……この先このケーキのことを思い出していけば何事にも打ちひしがれることはないと思う」
「ふふ、大袈裟じゃない?」
「……そうだね。それでも、私にとって、『愛』を教えてくれた、『愛』をくれた君と。大切で愛しい君と、大切な週末をこれからも共に過ごしていきたい」

 今までの私たちの思い出が頭を駆け巡った。彼とこうして週末を過ごすことも当たり前ではない。彼と過ごすことができる喜びで温かい気持ちになる。
 愛しい彼に、今すぐ伝えたい。

「凪砂くん。愛してる」

 目を見開いたかと思えば彼の綺麗な瞳は揺れ動き、夢の中にいるようにうっとりと微笑んだ。

「私も、君を愛してる」

 手をきゅっと握って唇を近づける。ちゅっと軽いリップ音と共に感じたのは甘酸っぱいレモンが広がる香りだった。