空欄のまま進む気配のないワークとにらめっこ。見つめすぎてそろそろ穴があいてしまうかも。眺めていてもワークは終わらないけど、夏休みは確実に、着々と終わりに近付いている。
夏休みが終わるまであと二週間程度、まだ夏真っ盛りの暑い昼下がり。
ガランと麦茶とたくさんの氷が入ったグラスが鳴る。
「わっっかんない!」
「あはは、一問も進んでないね。ワーク真っ白じゃん」
「すうがく、きらーい…」
「俺も数学は苦手だな」
「私よりできるくせに、よく言うよ」
薄く開いた窓からは蝉がジリジリと鳴く声が聞こえて、更に暑さを助長している。風も無いし、いっそ閉めても良いだろうか。いや、でも閉めたら余計蒸して暑いかも。
べたりと机になだれ込んで消しゴムのカスを指先で弄ぶ。グリグリとまとめてできた小さな黒い練り消しをまた捏ねて。
それにも飽きてきてしまい思わずはあ、と大きな溜息をつけば思い付いたようにサエは顔を上げる。
「そろそろ休憩にしようか。アイスあるけど食べる?」
「たべる。わたしは、」
「バニラだよね。取ってくるよ」
「ぐぬぬ……」
いつもこうだ、私のことならなんでもわかってるみたいな顔しやがって。
…昔からバニラばかり食べていたからなのかもしれない。そして、決まってサエはいちご味のアイスを食べているような気がする。
「はい、バニラ」
「ひゃ、冷た…!首はダメだって」
「暑そうにしてたから」
「ふん……うま」
「ひとくち食べる?」
「たべる」
そうだ、いつもこうやって一口くれていた。何となく思い返せば、昔の話にはなるけどバニラかいちごか選べなくて結局サエがいちごにしてくれてそれを半分こにした事があった。
それ以来、私がバニラでサエがいちごだったかも。なんて懐かしい事を思い出していれば「あ」なんて声を漏らしたサエ。
「垂れてるよ」
「えっ、わっ…ぎゃ!」
「ふふ、甘いね」
「馬鹿じゃない?」
サエは棒を伝い垂れようとしている私のアイスをべろりと舐め取り、危うく指までいかれるところだった。
ぱくりとアイスを頬張れば頭がキーンとする。美味しい、少しだけ涼しくなったような気もする。
最後の一口まで綺麗に食べ終え、棒をゴミ箱に放り投げれば「都」なんてやけに優しい声が耳を撫でる。
「なに、んっ…ひっ!」
「……ひって、ふ。まだあまいな」
「な、なめた…舐められた!へんたい!」
近付く顔、呆気に取られて目を見開いていれば、視界の端に映った真っ赤な舌はべろりと私の、くちびるを、舐めて。
ぎぃと睨んでいれば目を細めて笑ったサエがゆっくりと口を開く。
「今日は夜まで、両親と姉さん居ないって…話したと思うけど、覚えてる?」
「……覚えてます、けど…」
「……そういう、事なんだけど。都さんは、どんな感じ?」
思わずすーっと大きく息を吸ってしまう。どんな感じって、なによ。……まあ、予想していなかったと言えば嘘になるかもしれないけれど。やっぱりそうなるか、なんてちょっと他人事な感想。
お付き合いを初めてから、割と清く正しいお付き合いだったように思うけど、出会ってから約十七年、漸く付き合って一年。今は高校二年生、ついに。
「……トイレ行きたい」
「…ふざけてたりする?」
「ふ、ふざけてないよ……?ちょっと、心の準備がさ、」
「じゃあ…行ってきていいよ」
うわ、このまま帰ろうかな…なんて気持ちでいっぱいになったのは内緒だ。
そそくさとトイレに駆け込み呼吸を整える。こんなこともあろうかと諸々の処理は済ましているし、下着もまあ、及第点だろう。……いや、どうなんだろ。それを決めるのはサエか……いやいやそうじゃない。ちょっと混乱しすぎだろう、自分。
あとは心構えだけなんだろうけど、それが一番難しい。やらないに越したことはない。だって、恥ずかしいもん。かと言って、サエもだいぶ恥ずかしかったはずだ。珍しく耳まで赤かったように思う。
ぱちりと頬を叩く。女は度胸、いつかするなら今終わらせた方がいい……筈だ。知らないけど。
手を洗い最終確認。流石に急すぎてどうにもならない部分もあったけど、大丈夫かな。身体とか、あんまり見られたくないかも。
サエの部屋の前に着けば数秒前のやる気はどこへやら、やっぱりこのまま走って帰ろうか。
……ええい、ままよ!
なんて勢いに任せてドアノブに手をかけて扉を開けばぱちり、サエと目が合ってしまいそのまま思いっきり逸らす。何となく、やってしまった気がする。
「…ふふ、覚悟は決まった?」
「ぐ、決まっ……たり、決まって、なかったり……」
「おいで」
ぎこちなく一歩を踏み出しベッドサイドに座ったサエのすぐ傍へ向かう。
くいっと手を引かれて座ったままのサエの上に跨るように座らされる。何だろうこの体勢、死ぬ程恥ずかしいんだけど。
未だ両手を掴まれているせいで抵抗する事も顔を隠すことも出来ない。普段より近い顔にドキリと心臓が跳ね上がってしまう。少なくとも大体十七年くらいは見た顔だし、ゼロ距離にまでくっついたことだって何回もあるのに、未だにこの無駄に整った顔には慣れない。
「ねえ」
「……なに?」
「俺、初めてだから上手く出来ないか、」
「え!?嘘、うそ!初めて!?」
「こんなことで嘘なんかつかないよ。全部、都が初めてだよ」
「そんな小っ恥ずかしい事よく言えるね…」
思わず目を見開いてじっと見つめれば困ったように笑うサエ。
まあ確かに中学時代とか、誰かと付き合っていたなんで話聞いたこと無かったはずだ。流石に付き合ってない行きずりの人……なんてことは無いだろう。……たぶん。
「まあ、だからさ、その。よろしく」
「……ふ、ふふ。ダメだ、面白くなってきちゃった」
「笑うなって〜…。恥ずかしいじゃん」
サエに凭れかかるように体重を預ける。……そうか、そうなのか。サエも初めてで緊張してるんだ。
くっついた身体からはバクバクなんて鼓動が伝わってくる。それと同じように、私のも伝わっているわけで。サエのシャツをきゅうっと軽く握る。
「死ぬ程恥ずかしいんだけど、覚悟は決まったので…」
「…逆に俺が緊張してきちゃった」
「頼むよ佐伯くん……」
顔を見合せてお互い小さく吹き出してしまう。
少しだけ、見つめあった後にどちらともなくくちびるを軽くくっつければ、すぐに離れてしまう。もう一度くっつけてみれば、薄く開いたくちびるの隙間からぬるりとした温かいものが入り込んできて、思わず身を固くする。
コレは初めてかもしれない、いや、絶対に初めて。どうしたらいいのか分からなくなってしまい、頭の中は真っ白だ。
そんな中突然、するりとおしりを撫でる感覚に驚いてグッとサエの肩を押せば長らくくっついていたくちびるは離れて、焦ったようにサエは口を開く。
「…ごめん、その……がっつきすぎた、かな」
「やっ、あの……びっくりした、だけ。わかんなくて、色々…。だから、その…」
もう一回。 そんな言葉がびっくりするくらいすんなりと口から滑り出て、またゆっくりと瞳を閉じる。
そういえば、きちんと窓は閉めておいたのか蝉の声が聞こえてこない。用意周到だな、なんてまだ少しだけ余裕のある頭でぼんやり考える。
近付くサエのくちびるをもう一度受け入れた。
────
そんな雰囲気になってからずっとの事だけど、バクバクと心臓がうるさい。無駄に良い匂いがするベッドの上に転がされて、覆い被さるような体勢でこちらを見ているサエ。
「触っても、いいかな」
「っ、あ…う、ん」
こくりと頷けば恐る恐る伸びてきた手は布越しに胸をやんわりと触る。顔が、熱すぎる。多分、真っ赤になっているだろう顔を必死に腕で隠しながら胸から意識を遠ざける。
胸からすっと手が離れたと思えばサエは小さく溜息をつく。あれ、私何かまずいことしたかな…?なんて腕の隙間からサエを覗きみる。
眉根を寄せ少し苦しそうな顔をしている。どうしたんだろう、心配だ。
「……痛い…」
「えっ、なにが?大丈夫?わ、わわ……」
「痛い」なんて言葉にびっくりして起き上がろうとするけど、起き上がれずそのまま布団の上に逆戻り。そういえば上にはサエがいるんだった。起き上がれないまま上目遣いでサエを見つめれば少し困ったように笑いながらサエは続ける。
「ははは、大丈夫だよ。その、ジーンズが…痛いというか」
「……ん?」
「……押さえつけられて、痛いというか…」
ジーンズ、そっと視線をサエの下半身まで落とせば、なんと言えばいいのか。一言で表すなら、キツそう。
何も返せなくなりそのままゆっくりとサエの顔に視線を戻せば「脱いでもいいかな…?」なんて申し訳なさそうに頬をかく。
「……いいですよ」
「ほんとごめん、余計変に意識させちゃうよな…ちょっと待って、すぐに退けるから」
「ぃ…や、あの。どうせ、脱ぐ…じゃん。だから、わたし…も、ぬいだ方が」
「えっ……ちょっと待って、俺、心の準備が…」
「私も出来てないよ…!?せめて…し、下着だけ…着けさせて」
混乱しながら思わず口をついて出た言葉、恥ずかしさのあまり声が尻窄みになる。
お互い顔を真っ赤にして何をやっているんだという感じたけど、世のそういう行為が初めてな人たちも、そんなやり取りをしたのかもしれない。…まあ、知らないけど。
「わ、わかった。とりあえず、あっち向いてるから。準備出来たら呼んでほしい」
「…うん、わかった」
サエが反対を向いている間に下着以外を全て脱ぎ捨て小さく深呼吸。
ちらりとサエの方を窺えば、無事ジーンズを脱ぐことが出来たのか下着だけの姿になっている。
えっ、なんでサエも全部脱いでるの…!なんてツッコミをする暇もなく奴は口を開く。
「都、……どう?」
「ぬいだ、けど…ダメだ、恥ずかしすぎる。もう、いっそ、一思いにころしてほしい……」
「それはダメ。……そっち、見てもいい?」
「いい、けど。ゔゔ……」
ゆっくりと振り返ったサエの顔面を押さえたい衝動に駆られるけれど、身体を隠すのに必死でそんなことは出来ない。
何も言わずそのまま固まってしまったサエが心配になり、顔を覗き込めばぱちぱちと瞬きを何度か繰り返す。
「…さえ…?」
「……俺、多分幸せすぎてそろそろ死ぬと思う」
「えっ…こわ…」
「ごめん、ごめん…ちょっと、抱き締めていい?」
「え、わっ」
返答する暇もなく、普段なら直接触れるなんてことの無い背中に回された腕が少しだけ変な感じがして身じろぐ。
ぎゅうと強く抱き締められるものだからサエの背中に同じように腕を回して緩く力を込めれば、耳元で「好きだよ」なんて囁かれてしまい余計恥ずかしくなって。
「……優しく、するから。…初めてだけど」
「……はい」
「いい、かな」
「…うん。ふふ、変な感じ」
そのまま布団の上に逆戻り。小さなリップ音を立てながら何度もくちびるを啄まれ、それに応えるようにサエの首に腕を回す。
布越しだけれど、下半身に当たる硬くて熱いモノに意識が向いてほんの少し怖くなってしまう。ああ、でもサエは私に興奮してくれているんだ。なんて思えば嬉しくて、少しだけ口角が上がってしまう。
「随分、余裕そうだね?」
「ぜんっぜん無理、今にも逃げ出したい」
「だめ。絶対に逃がさない」
「あは、うん。そうして」
「……もう、俺ダメかも」
首筋に顔を埋めて小さく息を吐いたサエ。首にかかる生ぬるい息がほんの少しこそばゆい。さらりと零れたサエの髪を撫でつければ顔を上げゆっくりと近付くくちびる。
くちびるをくっつけただけ。なのに、なんだか普段するキスより気持ちいい。薄くくちびるを開ければぬるりと侵入してくる舌。
それに必死に応えていれば脇腹辺りを滑る手にびくりと反応してしまい、口端から「んッ」なんて聞いたこともないような声が漏れて。思わずばっと目を開ければサエと目が合ってしまい、そんな様子を見てサエは目を細めながら笑う。
「ん、ふ…っ……ゔ、うう……」
「ふ、ふふ、どうしたの?」
「はずかしい」
「これからもっと恥ずかしいことするのに?」
「ぐぅ、ゔ〜…サエがいじめる……」
せめてもの抵抗でぐっとサエを押すけどそんな程度の力でどうこうなるなら、きっと今こんなに恥ずかしくないだろう。
対して大きくもない、人並みくらいの胸をじぃっと見られて余計恥ずかしい。大きい方が、好きなのだろうか。やっぱり。
「み、みないで」
「そんな無茶な事言われてもなぁ」
「……大きくなくてごめんね」
「謝らなくても、別に大きさなんて気にしないよ。こんな言い方どうかと思うけど、都ならなんでもいい」
「……おおらかだね…?」
私専用の全肯定botか何かなのだろうか。返答に困っていれば、胸にそっとくちびるが近寄りゆっくりとそんなとこにキスを落とされる。
髪の毛が肌を擽り、こそばゆくて身を捩ればこちらを覗き込むサエ。じぃと私を見ながらまた脇腹の辺りに指を滑らせる。
「うひ、ちょ、まってだめ、っ、あは、あはは!」
「あれ、脇腹弱かったっけ」
「ちょ、ちょまっ、!ひひっ、うは、だめ、だめっ、やだたすけ、ふふ。…ぁ、んッ、!」
「……そんな、勢いよくばちんって口塞がなくても」
擽られて思わず笑ってしまっていたけれど、擽るような動きからちょっとやらしい、撫で付けるような手つきに変えられた瞬間に甘ったるい声が漏れてしまい、思わず勢いよく口を塞いでしまった。
涙目になりながらキッと睨みつければ怖くない、と言った顔で「背中、上げて?」なんて指示を出されて。
ああこれついに、なんて恐る恐る上げれば背に回るサエの左手。まさか、片手で。ぱちん、と外れたブラのホックに思わず唖然。慣れてやがる。
「慣れてるね?」
「イメトレではバッチリだったから」
「すけべ!へんたい!」
「ほんとに初めてだよ。…もう、信じてない顔してる」
緩くなった胸元、またもや抵抗でブラを外せないように胸元を押さえればその隙間から覗く少し寄せたことによってできた谷間へと、ずぶりと躊躇いなく指を埋め込まれ思わず動揺。
「な、なっ、」
「いや…していいのかと思うじゃん」
「ぃ…や、別にダメじゃ、無いけど。びっくり、するじゃん……」
「うん…柔らかい」
「感想いらない!間で動かすな!」
ムードもクソもない。だけど緊張もだいぶ和らいで来たような気がする。
怖々と伸びてきた手が下着越しに胸へと触れて、ぐにゃりと形を変える。十数年も一緒に過ごして、初めてそういう意志を持って触られた。なんて意識したら脳みそが沸騰してしまいそうで。
「やめたくなってきたかも」
「今更やめないよ、ほら手抜いて」
「やだ〜……」
抵抗虚しく抜き取られ楽になってしまった胸。前を隠した私の腕をどかそうとするサエとの攻防の末、完全に露となってしまいぐぅっと眉根を寄せる。
ごくりと生々しく動く喉元を見て、余計意識してしまい目を伏せる。
「都ってさ」
「ぇ、うん…?」
「恥ずかしがってる時口がへにょってなるよね」
「えぇ、わかんない…」
意識した事もないクセを指摘されてしまい頭を捻る。そんな会話は全く続かず、暫しの沈黙の後見つめ合い視界の端に映った手にぎゅうと目を閉じる。そんな動作を皮切りにサエの手が何も身に付けていない胸をやわやわと触る。
自分と他人が触るのでは全く違う、いつどう触られるなんて予測も出来ない。つまり余計敏感なわけで。
「んッ、は…ぁ、」
「…………柔らかいね」
「し、らない……し」
今はまだこそばゆさが強いけれど、遠くに何となく感じる気持ちいいなんて感覚が恥ずかしくて、ぐいーっとサエから顔を背けながら口元に手を当てる。
長らく肌を揉むだけでだった手はいつしか指が試すようにゆっくりと頂の周りを撫でる。ゾワゾワと揺れそうになる腰から意識を遠ざけながらぎゅうと唇を噛めば、外気に晒されてつんと尖った頂を恐る恐るとサエの親指が撫で、そのままぐにゅりと押し潰される。
「あ…っ!ん、ん…〜っ、」
「大丈夫?…痛くない?」
こくこくと必死に首を動かすことしか出来ず、頭の中は気持ちいやら恥ずかしいやらで既にぐちゃぐちゃだ。
助けを求めるようにサエに向かって手を伸ばせばすり、と頬に擦り寄って耳元で小さく呟く。
「どうしたの?…やめたい?」
「…ううん、やめない…けど、こそばゆいしまだちょっと恥ずかしくて……。っふふ、肌がくっつくのって、案外きもちいね」
「ふふ、うん。そうだね」
首の裏に腕を回せばぴったりと密着して触れ合った部分の温かさや直に伝わる心音、全部が落ち着いて気持ち良い。
そんな中、腿の辺りにぐりと硬いサエの自身が擦れて身を強ばらせる。そうだ、こんなリラックスしている場合でもないのだ。勇気を出してゆるりと腿を動かし刺激してみればぴくりとサエが震える。
「……しよ、続き」
「ん……、もう止めないぞ」
「わか、…った。いいよ」
くっついていた肌は離れほんの少し肌寒く名残惜しい。私に跨ったままサエの手はゆっくりと降りて行き、下着越しに軽くなぞられ思わず小さな吐息が漏れ出る。
様子を窺うようにこちらへと目を向けたサエに向かって小さく頷く。下着越しとはいえ割れ目に指を潜らせ上のこりこりとした突起をつんとつつかれ、敏感なそれのせいでびくりと腰を揺らす。
「ンっ……それ、やぁ…だ、」
「っ…ふふ、可愛い」
「ばか、ばかばか」
布越しでも分かるくらいぬるりとしたそこをぐっと押されて少しだけ指が中へ埋まる。そこでもぞりと指を動かされればお腹がきゅんと疼く。
これ以上ショーツが濡れるのは帰りのことを考えると少し宜しくない。
「さぇ、っ…あ、さえ、!」
「っ、ごめん、どうした?」
「下着…脱ぎたい、かも」
「えっ!あ、うん…えっ?」
「だって、帰り……濡れ、てたら……ちょっと、」
「…!ああ、そっか。ごめん、…ん、腰上げて」
「なんっ、う、うう」
何を当たり前のように脱がそうとしているんだ。でもそんなツッコミをする場合ではないと思い直し、言われた通りに腰を上げればショーツをするりと取り外される。
つまるところ、私はついに身につけている衣服が全て無くなってしまった。産まれたままの姿を、家族でもない他人に、見せている。そう考えるだけでぶわりと顔が熱くなり身体が震える。
「……膝、立てれる?」
「……ゔ…」
「ん、そう。ちょっとごめんね」
言われた通りに膝を立てれば脚の間にサエが入り込み少し足を開くことになる。そんな、自分でもまじまじと見ないところを、恋人に見られていて今から触られるんだ。世の恋人たちは凄すぎる。
長い指がゆるりと濡れそぼったソコを這う。こんなこと、なったことない。ぬるぬるとした体液が溢れ出るところにゆっくりと指が沈む。
そこそこ濡れているお陰なのか想像していたより痛くは無いけれど、お腹の中の異物感と圧迫感にぐぅと眉根を寄せる。
「……大丈夫?痛くない?」
「痛くは、ない…けど、っ……んっ…」
「良かった…。少し動かすけど、嫌だったら言ってね」
「……んッ、わかった」
入口から奥へと向かいやんわりとお腹側をとんとんと指で軽く押され、その度に小さく声が漏れる。少しずつ奥へ奥へと進む中、不意に押された場所が他とは違う……上手く言葉には出来ないけれど、そんな感覚に襲われ思わず「んんッ、」
なんて今迄とは違う大きな声が出る。
「ここがきもちいの?」
「んっ、あっ……ぅ、わか、な……っ!ひぁ」
「ふふ、気持ちいいね」
頭がふわふわして深く考えることが出来ない。嬉しそうに笑うサエを見て、なんだか嬉しくなってこくこくと頷く。
もう、ぐちゅりと響く卑猥な水音も口の端からだらしなく漏れ出る甘い声も気にならない。だけど、汗でべっとりとおでこへとへばりついた前髪が気持ち悪くって。
自分でも分かるくらいにナカがうねりもっと、もっとと貪欲にサエを求める。
「…増やすけど、痛くない?」
「あっ、ン…ふ……だい、じょぶ、んんっ……」
更に増えた指によってぐいぐいと押さえられる範囲が広くなり、より気持ちいい所を捉えて頭がおかしくなってしまいそう。
好奇心故に一度だけ自分でもそういうことをしたことはあるけれど、全く気持ちよくなんかなくて何が良いのか分からず少し触れただけでやめてしまった。
だけどこうやって、彼に触られてこんなに気持ちよくて、やはり人とすることに意味があるのだろうか。いや、今はこんなことなんてどうでもよくって。
「ね、さえ。その…あの、ね」
「うん……?」
「……まだ、だめ?もう…私は、いいと…お、おもうけど……」
「でも、都に痛い思いはさせたくはないし、」
「…〜っ、おなかが、ぎゅうって…して。……なんか、もどかしいから、サエ……その、くっつきたい…」
さっきからお腹の奥がぎゅうっとして、それでいてなんだか物足りなくて。早くくっつきたいだなんて、普段なら絶対口に出さないような言葉が漏れ出て恥ずかしくなり、恥ずかしいついでに上目遣いでじぃっと見つめる。
くちびるを内側へと巻き込みなんとも言えない表情のサエ。パチリと一度目を閉じて再びゆっくりと開けた頃、覚悟を決めたのかどうなのか。
ヘッドボードへと手は伸びて、四角い包装を取り出す。勿論、見た事はあるし似た様なパッケージの物を持ってもいる。……授業の一環で貰った物だけど。
詳しい付け方なんかはもう覚えてもいない。気恥しいやら私にはそんなの関係ない、みたいな感じで実の所きちんと聞いていなかった。
すんなりと付け終わったのか、再度サエと目が合い現実に引き戻される。そうだ、今まさに繋がろうとしているのだ。
「……怖くない?」
「怖くない、って言ったら……うそになるけど。たぶん、平気だよ」
「痛かったらすぐにやめるから…」
「ふふ、さっきから心配しすぎだって」
緊張はもう既にどこかへと行ってしまった。今あるのは少しの恥ずかしさと、期待と。
ゆるり、宛てがわれ何度か入り口の辺りを行き来する。熱く硬いソレに思わずぎゅうと目を閉じて口元を隠し息を整えてはみるけれど、にゅるにゅると浅い所を擦るもどかしい感覚に思わず息が浅くなる。
「ん…そろそろ、」
ふぅ、と大きく息を吐きながらさっきより私へと近付いたサエはゆっくりとナカへと向かい腰を沈める。
思っていた以上に、勿論すんなりとはいかずナカを押し拡げられる感覚に「う、ぁ」なんて小さく呻く。ゆっくりとだけど、奥へと埋まっていくソレに息がつまり始め思わずぷるぷると首を振る。
「ちょ、っま、まって…ッ…!」
「ど、どうした?一旦抜いた方が、」
「やっ、んッ…うごく、な……ぁ!ゔ〜ッ…」
ひぃひぃと浅く息をしてサエの動きを静止する。今引き抜かれたとしても困る、多分、よく分かんないけど頭がおかしくなってしまう。
どこまで入ったのだろうか、体勢的に恐らく自分の目で確認をするのは困難だ。あと、どれだけサエのモノが残っているのか。
あとほんの少しなのであれば、少し我慢すれば全て埋め込むことが出来るだろう。
「あの、ね。今……その、サエ…どこまで、入ってる…?」
「…えっと……あと、半分くらい…」
「は、はんぶん……」
あとはんぶん、あと半分……!お腹の中はもうぎゅうぎゅうなのに、サエのモノはあと半分も残っているのか。私のお腹の深さではここでもう限界かもしれない。
「ま、まだ入るかなぁ……?」
「……分からない、けど…っ、多分……まだ、いける…と思う」
「ゔぅ…、じゃあ、あと…ちょっと。ちょっと待って…。覚悟、決める……」
まあ、やってみなきゃ分からない。入るのであれば、全て収めてしまいたい……なんて、無茶だろうか。
最初の頃よりも少し慣れてきた。キツキツぎゅうぎゅうだったのも今ではぎゅうぎゅう、ぐらい。
数度深く息を吸って吐いて、ゆっくりと視線をサエへと動かす。普段では見られないくらい、余裕のないそんな表情にドキリと胸を高鳴らせる。それなのに、目が合った瞬間に柔らかく微笑まれてしまって、もう、ダメだ。
「…うん、たぶんへーき。ひとおもいに、こう、ぐっと」
「……都ってたまにそういう男前なとこあるよね」
「あはは、まあ……その。お手柔らかに……おねがい…します」
動きをピタリと止めてくれていたサエはまたゆるりと動き出し、奥へ向かって徐々に進む。ああ、なんだ。割と大丈夫じゃないか。
「大丈夫?」
「んッ、まだへいき」
「……は〜…っ、うん。入った、全部」
「ふっ、あ…ぅ……お腹、いっぱい…。はいっちゃうんだ、ぜんぶ」
すごい、絶対入らないと思っていたモノが全て私のお腹の中に収まってしまった。おなかいっぱいでちょっと苦しいけど、そんな事より今は幸せな気持ちでいっぱいで。
ぽやぽやとした頭でサエを見つめればそれに気付いたサエとパチリ、目が合う。
「どうしたの?」
「すき、んっ…すきだよ。……サエの、こと、ふふ」
「俺も。都のこと、すきだよ」
「ん。ぁ……さえ…」
私の上へと覆い被さるようにゆっくりと倒れてきたサエを受け止めて、ぎゅうっと背中へ手を回す。すりすりと頬をくっつければ少しした後、耳元でサエが小さくつぶやく。
「動いても、大丈夫?」
「…うん、ゆっくり……で、」
「それはもちろん」
ずるりと抜ける感覚に思わず腰を浮かせる。中に収まっていたモノが無くなってしまって、収縮するようにナカはぴくぴくと震える。かと思えばまた、ゆっくりとナカを押し拡げながら進む。
おっかなびっくりに進むものだから、返しの部分が内壁をぞりぞりと擦りながら進み、そんな感覚に目の前はチカチカと光る。
「ぁ……あ、やば、ぁ……これ、まっ…!」
「ごめ、待てない…かも、ッ…はぁ……」
「や、んッ…!」
当たり前だけれどこんなのは初めてだ。自分の内臓を押し拡げられ弄ばれているようなものなのに、こんなに気持ちいいなんて人間の体は少しおかしい。
覆い被さるサエを掴もうとするけど、掴むものなんてないからただただ耐えるように自分の手をぎゅうと握る。ああ、もう。おかしくなってしまいそう。
「ま、ぅあ…っ、む、むりぃ…!」
止めても、肩で息をしても、今のサエには届かないのか。はぁふぅと耳元で聞こえる乱れた息遣いに心の中でばかばか!と悪態をつくことしか出来ない。
だけど、これほどまでに余裕が無いサエなんて初めて見たかもしれない。私しか見えてないんだって、それがなんだか馬鹿みたいに嬉しくて、胸がいっぱいで。
ああ、愛おしい。私ってサエのことちゃんと好きなんだ。
「く、っ……やば、ッ…!〜ッは……」
「んッ…、え、え、?さ、さえ…大丈夫?」
くったり、急に力が抜けた様に私へと全体重を預けサエの顔がマットレスへと沈む。
小さく唸るサエにどうすればいいのか分からずオロオロとしていれば、そんなサエは一言ぽつり。
「……出ちゃった…。急に、ナカ締まるから……」
「えっ、あぁ……?」
「ほんと、ごめん……堪え性なくて……」
「ふっ、あはは!めっちゃ落ち込んでるじゃん」
しょんもりとした顔を上げながら申し訳なさそうにしているサエに笑ってしまって顔の筋肉が痛い。
出ちゃったものは仕方がない。完全に萎み切る前に出さねばなんて、ゴムの根元を押さえながらずるりと私の中から抜けていくサエ。
「……まあ、サエ。同時は難しいらしいし、そんな落ち込まなくても……」
「…急だと我慢できないものだね……」
「あ〜……それにしてもからだいたい……」
「ごめん、大丈夫?体勢辛かったよね」
足をがばりと開いた状態でずっといたから股関節が痛い。お腹もまだ違和感すごいし、下半身中が未だに変な感じ。
でも、遂にやってしまったのか……なんて少し恥ずかしい。
「……やっちゃったね」
「……ダメだった……?」
「……ダメじゃないけど」
「なら良かった……」
「恥ずかしいから、当分はしないかも」
「っえ、いや、うん。そりゃそうだよな」
「不服なんだ〜?」
健全な男子なら、機会があればしたいものなんだろう。まあ、別に私も嫌なわけではないのだけど。
自分の発言にあわあわとしているサエを横目に小さく笑いながら息をつく。
「前髪も体もベタベタするからシャワー浴びたい」
「それならうちのお風呂使っていいよ。タオル用意するからさ」
「ん〜。Tシャツ貸して、あとなんかあったら下のジャージ。中学の時のハーパンとかない?」
「あるよ、ちょっと待ってね」
下着を身につけながら立ち上がり自分のタンスを漁り出したサエ。それを横目にまあなんでもいいや、なんてその辺に落ちていたサエのTシャツを頭から被り立ち上がる。
「これ借りるね〜。後で持ってきて」
「は〜い……って今日着てたやつ取られたら俺の服ないんだけど……」
「タンスにいっぱい入ってるで、いたっ!痛たた……」
「都!?大丈夫!?」
「ゔ〜……こ、股関節痛い……手ぇ貸して……」
歩き出した瞬間、上手く力が入らずヘロヘロとその場に崩れ落ちてしまう。不覚、普段の運動不足も祟ったか。
「お風呂場まで連れてくよ」
「手ぇ引いてくれるの助かる……」
ノロノロと歩く私に小さく笑うサエに心の中であんたのせいでしょ…なんてまた悪態をつきながらお風呂場を目指す。
ああ、なんだかどっと疲れてしまった。体育の授業よりしんどい……のはまあ、当たり前か。なんだかもう眠たいし、お風呂上がったらサエの布団を占領して寝てしまおう。
なんて、未だ真っ白のワークには目を逸らしながら決意するのだった。
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