▱後輩とスプラをした話



『ごめん!遅くなった!』
『俺はいつでも大丈夫ですよ』
『じゃあ電話掛けるね』

時刻は午後十時半になろうとしている。
今日は財前くんとゲームをする約束をしていたのだけど仕事や家に帰ってきてからのトラブルでバタバタとした結果、少し約束の時間に遅れてしまった訳だ。
呼出音が数回鳴れば財前くんの『もしもし』なんて声が聞こえる。

「ほんまごめん!」
『ええですよ、気にせんといてください』
「いやぁ…ほんまは十時に間に合う予定やったんで?そしたら実家から連絡来るし洗濯物取り込み忘れてるし…えっ、ごめんアプデ始まった……」
『ふっ、ふは!都さん、めっちゃ踏んだり蹴ったりじゃないっすか』
「……ちょっと、笑いすぎやない?」

未だにケラケラと笑っている財前くん。
アプデ、お風呂入ってる間にしとけばよかった…。気付かなかったのも悪いけど、まあ割と久しぶりに触るし。
少し前はよくしていたけど、最近はつけるのすら面倒で全然触ってなかったなぁ。操作は身体に染み込んでるとは思うけど、上手くできるだろうか。
少し前、一緒にご飯に行った時に財前くんとスプラの話になり「じゃあ今度一緒にしませんか?」なんて誘われて今日だ。

「久しぶりな上に私そんな上手くないけどいけるかなぁ」
『まあ俺がカバーするんでいけますよ』
「財前くんゲーム上手かったもんね」
『……普通ッスよ。今日は何します?』
「何しよ、バイトとか?」
『ええやん。部屋作っときます』

長いダウンロードも終わりバイトのロビーに行き財前くんに合流する。
今日のブキはランダムらしい。つまりクマサンブキがあるということで。

「今日クマさんなんや。そういえば財前くん腕前どんくらい?」
『チャージャーらしですよ。俺は今でんせつですね。中々カンスト出来んくて』
「えっ!でんせつなん?私たつじんウロウロしとるから足引っ張ってまうかも」
『たつじんならまあ、そこそこ出来るんとちゃいます?』
「……がんばる」
『ふ、頑張ってください』

クスクスと笑う財前くん。
バイトが始まりヘリの中、財前くんの繋ぎの色は初期のオレンジ色。てっきり色替えてるのかと思ってたな。

「財前くんのつなぎの色、白とか黒のイメージあった」
『あ〜、持ってるんスけど着ててちょっとミスると色々言われたりするんが面倒くさくて、もう初期のオレンジでええかなって』
「なるほどね、そういうんもあるんや。私、青好きやから青のつなぎ欲しいなぁ」
『今日中に取れたらええですね』
「銀のウロコそんなに持ってへんから今日中は無理とちゃうかな…!?」

久しぶりのサーモンラン、割と身体は覚えているようでそこそこの動きは出来ている……と思う。
というか財前くんが上手すぎてカバーめちゃくちゃされてる感じはする。

「あ〜っ!またインクない!死っ……!」
『インク管理ちゃんとしてください。はい、先輩シューターやしタワーお願いします』
「ありがとう!了解した!」

そんなこんなで無事に一周目が終了。
ちょっと死んじゃったりもしたけど久しぶりにしてはまあまあの出来かもしれない。
壁を塗りながら次の開始を待つ。

「わっ、最悪!スプラスピナーじゃん!」
『スピナー系苦手なんすか?』
「苦手…チャーと同じくらい」
『チャーで良ければまた今度教えますよ、俺チャージャー使うんで』
「えぇっ!すご、普通に今尊敬した」

チャージして敵に向かって撃つ、ただそれだけなんだけどやっぱりインク管理がガバガバすぎて難しい。まだスプラスピナーはチャージが早いから出来ないわけじゃないけど、他のスピナー系はからっきしだ。

『あっ、都さっ…後ろ!』
「えっ?ぎゃ!ヘビ!って待ってめっちゃカタパッド!うわ、わっ、あ……しんだ」
『ははは!ぎゃって……ほんまアホす……』

なんて言いかけたところで言葉を止めた財前くん。「どしたん?」なんて声を掛ければ言い難そうに口を開く。

『……都さん、俺とゲームするの…楽しいですか』
「え?なんで?」
『いや、俺割と物言いキツくなることあるし、』
「えー、普通に楽しいよ?財前くんがそういう意味で言ってるんとちゃうってわかるし」
『……それなら、ええんすけど。うん』
「ふふ、何に納得したん?」

財前くんも言い淀むこととか悩んじゃうことなんてあるんだな、なんて少し失礼なことを考えてしまう。
昔はこう…ズバッとなんでも口に出していたような気がするけど、まあやっぱり社会に出たらそうなるか。とか適当な理由をつけて自分を納得させる。

「久しぶりにスプラとかしたけどやっぱ人とするのも楽しいね」
『そう思ってくれたんやったら嬉しいです』
「ほんま財前くん上手いしキャリーされてる気分やわ」
『ほんなん、別になんぼでもしますよ』
「あはは、それならバンカラも頼もうかな」

やっと慣れてきた。よくやっていた時くらいの動きがやっとできるようになったしこれくらい動けたら足は引っ張らんかも。

────

時刻は午前一時前。いくら明日が休みとはいえ少し眠たくなってきた気がする。
おかしいなぁ、仕事の日でもこのくらいの時間はまだ眠たくなくて布団の中でモゾモゾしているくらいなのに。

「ふぁあ…ちょっと疲れたね。もう二時間半くらいしてる?」
『……ほんまっすね、気付かんかった。もしかして眠たなってきました?』
「いつもならそんなことないのに、もう結構眠たいんよね」
『それなら、そろそろ寝ます?』
「そうやなぁ…寝ようかなぁ……」

プロコンに充電器を繋ぎいつもの場所に戻す。
ガサガサって音、うるさくないかななんて思っていれば電話の向こうからも欠伸の声が聞こえる。

「ふふふ、財前くんも眠たなってきた?」
『……そっすね。一旦ゲーム辞めると急に眠たなりますよね』
「わかる。ていうか財前くん明日仕事は?」
『休みっすね。じゃないと誘いませんよ』

まあそれはそうか、また大きな欠伸を零してしまう。そのままベッドに倒れ込めばなんだかいい感じに寝れそうな気分。

『なんか、切るの名残惜し……今の無しで』
「えっ、なんでなんで!それならもうちょっとだけ話そうよ。ほら、布団入って!」
『……はあ、聞かんかったことにして欲しかったっすわ』
「ええやん。私ももうちょっと話したかったし」

スマホの向こうからはゴソゴソと布が擦れる音が聞こえる。布団の中に入っているようだ。
スマホの画面と部屋を暗くして耳元にスマホを置いて薄らと目を閉じる。

「ふっ、なんかちょっと目ぇ覚めたかも」
『いや、寝ましょうよ』
「ええやんええやん、あとちょっとだけ。……今日スプラ誘ってくれてありがとうね」
『……まあ、俺も都さんとしたかったし』
「また一緒にしよね」

『もちろん』なんて少しだけふわふわした声が聞こえる。なんか財前くんの方が眠たなってない?
「財前くん?」なんて声を掛けても相変わらずふわふわとした声で『ん…』と聞こえるだけだ。
続けてなんでもない雑談を続けてみるけどいつしか小さく息を吐く音だけが聞こえ出す。
あらら、寝ちゃったみたいだ。

「ふふ…今日はありがとう。財前くん、おやすみ。ええ夢見てな」

こっそり呟いて電話を切る。
ちょうど三時間くらい、なんとなくタイミング良かったかもしれない。
そのままスマホを枕元に投げて目を閉じる。良い感じにウトウトしてきてそのまま意識を手放し深い闇に沈んで行った。




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