「みやちゃん、昨日から何してるの?」
「ん? あ、えっとですね、スプラです!」
画面から目を離さずにカチャカチャとさっきからずっとコントローラーを握りしめている彼女。
じぃっと見つめ続けているテレビ画面を同じように見つめてみるけど、僕にはちょっと分からない。
イカ?みたいなキャラが地面中に色を塗って陣地を取り合うゲーム。あんまり詳しくないから分からないけど、少し前に発売されたらしいこれでずっと遊んでいるようだ。
「みやちゃん」
「…はい、あっ! やられた……!? 嘘!」
「……」
さっきから話しかけてもこんな感じで生返事の後、彼女の思考はすぐにゲームの世界へ戻ってしまう。
せっかく同じ時間を過ごしているのに、なんて少し寂しさを感じている自分がいる。
隣に並んで座った彼女に少し凭れかかってみる。我ながら、凄く幼い気の引き方だ。
少し体重を預けた時に、彼女の肩がぴくりと跳ねたような気がする。ずっと眺めていた画面からちらりと目を横に向ければ、みやちゃんの顔は少し赤くなっている…気がした。
試合が終わったのか、白と黒っぽいぶち猫が旗を上げる。無事勝てたことに安心したのか、小さくため息をついたみやちゃんはゲームをやめてコントローラーを置く。
「周助さん」
「もう、ゲームしないの?」
「…ちょっと疲れちゃったから、やめよっかなって」
寄りかかった僕の方に頭をくっつけて「だから、お話しませんか?」なんて、小さく笑う。
拗ねたように気を引く行為を思わずしてしまった少し前の自分に、ちょっとだけ恨めしくもよくやったなんて気持ちになる。
学生の頃は、頼られたい気持ちと格好をつけたい気持ちで彼女に対して大人ぶった態度をとっていたけれど、元来世話好きなみやちゃんと長い間過ごす内にそんなことを忘れて少し我儘になってしまっていたようだ。
「ふふ、周助さんって意外と子供っぽいですよね」
「そうかな?」
「そうですよ」
「じゃあ、みやちゃんが甘やかすからだね」
「えぇ、そうなります?」
「そうなるんだよ」
なんて彼女に責任転嫁してみる。
「納得いかないな〜?」なんてクスクス笑う彼女につられて思わず笑いが込み上げてくる。
その後も他愛もない話を続けていればふわあ、と大きな欠伸を零したみやちゃん。
「眠たい?」
「うーん、少しだけ」
「じゃあお布団行こうか」
彼女の手を取り立ち上がらせて寝室へ向かう。
途中、キッチンへ寄ろうとした彼女の後ろを着いていけば「ふふ」なんて小さく笑っている。
不思議で首を傾げていれば水を一口飲んだあとみやちゃんは続けた。
「着いてきちゃうくらい寂しかったんですか?」
「…意識してなかったな」
「あはは、ひよこみたいですね」
コップの中を満たす水をゴクリと飲み干したと思えば手を取られる。
呆気に取られてじっと見つめればみやちゃんはまたにっこりと笑う。
「さ、行きましょ?」
「…ふふ、君には敵わないな」
「でしょう?」
手を引かれて歩き出す。ふんふんと機嫌良く鼻歌を歌う彼女が愛らしくて思わず微笑んでしまう。
ピタリと立ち止まり軽く手を引けば、みやちゃんも立ち止まってこちらを振り向く。
「どうしまし、ぎゃ!」
「ふふ、あはは! ぎゃ、って……ははは!」
「すっごい笑うじゃないですか!びっくりしたんですからね!?」
振り向いた彼女が愛おしくて、思わず抱き締めてしまえば色気も何も無い叫び声が耳に届いて思わず笑ってしまった。
腕の中で「もう…」なんて大人しくなったみやちゃんはさっきまでの大人びた様子ではなく、拗ねた子供のように頬を真ん丸に膨らませていた。
「かわいいね」
「もー、早く寝ますよ!」
つんつんとほっぺたをつつけば膨らんでいたそれは萎んで怒り顔で寝室へと向かう。
怒った顔も拗ねたような顔も寧ろそんなとこも可愛いとまで思ってしまう。それくらい自分は彼女にベタ惚れなのだろう。
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