ヤマカンテスト立海




「頼む!真田、お前の力が必要なんだよ!」
「……いや、あのさぁ」
「ほんとに頼むって!」

突然人の席にやって来たかと思えばこれだ。隣の席の佐藤くんは何事かとこちらの様子を窺っている。
別に私の力なんてなくてもこの程度のことどうってことは無いだろう。
目の前に広げられた日本史の教科書にチラリと目を向ける。

「頼むよ〜!次のテストどこ出るかヤマ張ってくれって!今回の社会マジで赤点取りそうでやべぇんだよ!」
「普通に授業聞いてテスト範囲勉強すりゃ赤点なんて取らないでしょ」
「取りそうだからお前に頼んでるんだろぃ!真田の勘はよく当たるし」

「な?」と懇願する丸井から目を逸らし大きな溜息をつく。
まあ、丸井の言う様に何となく出そうだなってとこは結構な確率で当たるけれど付け焼き刃でどうこうなるような問題ではないだろう。

「ブン太くんが涼香ちゃんの席にいるの珍しいね?何してるの?」
「次の日本史のヤマ張ってもらおうと頼み込んでる」
「のを断ってる」
「あ〜、涼香ちゃんのヤマカン結構当たるもんね。いいな、私も聞きたいかも」

……あんずちゃんにもそう言われてしまっては断りにくくなってきた。
ペラペラとテスト範囲辺りのページを捲りながら日本史の先生が話していたことを思い出す。確か、この辺出るとか言ってたな。

「ここ、この辺は何年かって混ぜて覚えてる人いるしちゃんと覚えておく方がいいかも。あとこれとかも出るかもね」
「他は?」
「え〜…あ、これ。多分出るよ、覚えといて損はないと思う…まああの先生記号問題好きだから最悪勘でいけばなんとかなると思うけど……。はい、あとこの辺全部覚えて。以上」
「大雑把過ぎねぇ?」
「人にモノ訊いといてそれ?……あとはい、このプリント持ってる?何問か丸々全部出るらしいから丸覚えしといたら点は稼げると思うよ」
「…絶対覚えれないな…!?残り時間で頑張って少しでも覚えとこ…!」

まあ、この先生の作るテストなら半分くらい勘でなんとかなるだろう。
じっとプリントや教科書と睨めっこをしているふたりを眺めてみる。そういえば、このふたりがいるのに仁王は、と目を向ければノートを開いてそれをぼんやりと眺めているようだ。
よくよく見てみれば柳生なんて名前が書いてあって小さく笑ってしまう。確かにあのノートあったらどんなテスト勉強するより良い点取れそうだな、なんて。

「さて、残りあと五分もないけどおふたりさんは大丈夫そうです?」
「……まあ、なんとかなるだろぃ!」
「なんとか、なんとかなる…かな?」
「これに懲りたらちゃんと授業聞いてもらって。はい、チャイム鳴るよ。席戻って」

教科書類を片付ければちょうどチャイムが鳴る。
同時に配られ始めたテスト用紙を見てみれば、ここ出るよなんて言ったところがちゃんと出ていて一安心。順調にペンを走らせ空欄を埋めていく。
今回は調子良いかも、これなら弦一郎に勝てるかな。

────

「真田!お前すごいな!」
「ね!ほんとに出た!」
「私もあれだけ出るとは思ってなかったな…」

ほぼと言っていいくらい綺麗に言い当ててしまい、テスト前に盗み見た?って聞かれてもおかしくないレベルだった。
だからその分、私自身もいつも以上にしっかり解けた訳で。

「で、真田の今回の自信は?」
「まあ弦一郎には勝てそう…?いやでも分かんない、いつも通りってとこで」
「今回社会の自信あるかも!ほんとありがとう〜っ!」
「あんずちゃんのためになったなら何よりだよ」

ほんの僅差で弦一郎に負けること、多々あるから今回は勝ちたい。
見直しもしっかりしたし正直、自信は今までより一番ある。範囲もどちらかと言えば弦一郎が最も得意なところでは無かったし、勝てるかも。
時間割を見れば次は家庭科、これはあんずちゃんも丸井も得意みたいだし何とかなるだろう。
私はこれといって大得意って訳でもないし、しっかりと復習をしておかなければ。
問題を出し合っているふたりの声を聞き流しながら、教科書に目を落とした。

────

「俺、今回76点取れたんだけど!」
「ねえ後ちょっとで90点だった!惜しかった……!」
「あんずすげぇじゃん!」
「えへへ、ありがとう。そういえば涼香ちゃんは?」
「………98点。……ほんとダメだ、ケアレスミス」

思わずガックリと肩を落としてまう。なんでこんな間違いしちゃうかなぁ?なんて自分を小一時間問い詰めたくなる点数だ。そんなことより、だ。なんだかムズムズする……もしかして。
……なんか、何となくだけど。双子特有のたまにあるアレなのか。

「……あのさ、多分、多分だよ。……弦一郎と同じ間違いしてる気がする」
「双子のシンクロってやつ?」
「うわ〜やだやだ!勝てそうだったのに同じ点数とか面白くないんだけど!」

頭を抱えてバタバタと足を動かす。変なところでシンクロしなくていいから!
……弦一郎のテスト用紙を取り上げて見てみれば、案の定同じ間違い同じ点数でまた頭を抱えてしまうのはほんの数時間後の話だ。