似たもの同士


「おなかいっぱい=しあわせじゃないよ、暖かいおうち=しあわせじゃない。私のしあわせは迅くんたちと一緒にあったの、それ以外は必要なかった」

目の前には色とりどりの見たことのない食べ物がたくさん並べられ、暖かそうに湯気を立てている。
つかいかたの分からない"はし"を眺めながら、頭にあるのはただ今は会えなくなってしまった2人のヒューマギアのことだけだった。

迅くんたちと過ごしていた時は滅が用意してくれるパンやおにぎりを食べていたし、それ以前にも外食、というのを私はしたことがない。
だからこんな料理は知らないし、ましてやサイズの合わない機械の体では使ったことのない"はし"で食事する、なんてことはできなかった。

そんなことは私を『保護』したゼロワン___もといい飛電或人の知ったところではないんだろうけど。
私の言った言葉にたいして思うところがあるのか、少し顔を曇らせたゼロワンは居心地悪そうにひしょであるヒューマギア、たしか名前をイズと呼んでいた、その彼女のほうを見た。
ゼロワンからの視線をもらい私のほうに向きなおったイズさんはあくまで機械的に、言葉をつなげた。

「あなたの健康状態は現在、最悪のレベルになっています。そのためまずはバランスのとれた食事から・・・・と言うのが、或人社長の判断になります」

やっぱヒューマギアってすごいなあ。
つらつらと音を放つイズさんを見てそんなことを思った。ゼロワンはその隣で「そういうこと!」と腕を組んで大きくうなずいた。

「さっき、人間の副社長さんに怒られてた。この会社の社長はゼロワンなのに」

「えっ?」

"はし"が使えないことをこの人たちに話したくなくて、また思ったことを言葉にして吐きだした。
この会社はゼロワンのもののはずなのに、あの副社長の人は厄介なものを見るような目をしてゼロワンを見ていた。

・・・・まあ、私にたいしてもだけど。

「でも、ヒューマギアのイズさんは文句言わなくて、あなたの言うことを聞いてくれる。どうして思わないの?人間よりもヒューマギアのほうがずっといいんだって。ヒューマギアといるほうが、しあわせだって」

ゼロワンはさっきの言葉で驚いたのか、見開いていた目を細めてなにかを思い出すように目を逸らした。
握りしめた手に力が入って、血が溢れてきそうだった。

「私は、そう思ったのに。迅くんや滅は、私にとっての家族だったのに」

相変わらず感覚のない右目とジンジンと熱い左目はバランスを崩して私の視界を歪ませて、なにか言おうとしていたゼロワンの言葉を遮った。



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