02
扉がノックされたような気がしてハリエットは扉に近づいた。雷鳴と打ち付けるような強い雨でよく聞こえなかったのだ。
次の瞬間木の扉が吹っ飛んだ。
とっさに隠れると、バーノン叔父さんが猟銃を片手に家族を庇う。驚いたことにその家族にはハリエットも含まれていたらしくペチュニア叔母さんはダドリーとハリエットを身に寄せて隠した。
「あー、すまん。力加減を間違えちまった。ここにハリエット・ポッターがいるだろう。」
「そんな奴はここにはおらん!出ていけ!」
その声に大男はダーズリー叔父さんに傘を突き立てた。
大男にハリエットは見覚えがあった。昔、この家にハリエットを連れて来た男だ。魔法使いの。ハリエットは意を決してダーズリー叔父さんの前に出て手を広げた。
「私がハリエットよ」
「馬鹿下がっておれ!この男はまともじゃない!」
大男はハリエットを見ると微笑んだ。そして大きめの箱を取り出して渡してくる。
「大きくなったな、ハリエット。ハッピーパースデー、俺が作ったケーキだまぁちょっくら尻に敷いちまったかもしれんが味は変わらんだろう」
「え、あぁ。ありがとう。」
渡されたケーキにあっけにとられているとバーノン叔父さんに後ろに引っ張られた。おじさんが銃を構える。
叔父さんが引き金を引ききる前に大男が傘を振った。弾かれた銃はカラカラと床を滑り飛んでいく。
「引っ込んでろダーズリー!俺はハリエットに用事がある!」
ペチュニアに抱きしめられているハリエットはとっさに叫んだ。
「叔父さん達に傷一つでもつけたら許さないぞ!」
「ハリエット…」
ダーズリー叔父さんは信じられないという顔でこちらを見た。ハリエットがこんなことを言うなんて予想外だったのだろう。
「俺もそんなつもりはひとっつもねぇ。お前にこれを届けに来たんだ」
差し出されたそれはここ数日逃げ回っていたあの手紙である。
「そんな所に行かせんぞ!そんなイカれたところにハリエットは行かせん!」
「黙れ、ダーズリー!」
このままでは拉致があかないとハリエットは手紙を受け取って中を見た。ホグワーツ魔法魔術学校への入学許可証である。あぁ、だから叔父さん達はこうまでして手紙から逃げたのか。
「そんなところに行かせないわ!そんなところに行ったせいでリリーは吹っ飛んで死んでしまった!そんなところに行かせない!」
ペチュニアが叫んだ。バーノンがそれを諌める。夫婦が今までハリエットに言い聞かせて来たことを言う。
「ペチュニア!こいつの両親は交通事故で死んだんだ!」
今度はそれに大男が激情した。
「交通事故?交通事故だって!?ジェームズとリリーが交通事故!?巫山戯るな!」
怒りで真っ赤になった大男とダーズリーはお互いを掴みかかろうとする。それをハリエットが遮った。
「やめて!交通事故じゃないことなんて知ってた!だってその場に私は居たのだもの!それを隠されたことを恨んだ日なんて一度もない!手を出さないで!」
力の限り叫ぶとその声は衝撃波のように響き窓ガラスが全て割れた。その様を見て居たバーノン夫妻はビクリと肩を震わせた。
やってしまった。ハリエットは顔を青くする。必死に抑えて来た力を爆発させてしまった。
「あ、ああ、ごめんなさい、叔父さん叔母さん。私、全部知ってた。私のお父さんとお母さんが死んだ日のことも、ここにこの人に連れて来られたことも。叔父さん叔母さんが私を魔法から引き剥がそうとしてたのも知ってる。だって全部覚えてるもの。だから私はずっと感謝してた。だから普通の人として暮らしてこうと頑張ってた。でも、でも溢れる魔力をコントロールしきることがもう難しいの。
私、わたし、魔法使いに、なる。ごめんなさい、ごめんなさい。期待に応えられなくて、恩を仇で返してしまって。ごめんな、さい。」
気がつけばハリエットは涙を零していた。ペチュニアもバーノンも、大男でさえその言葉に固まっている。最初に口を開いたのはペチュニアだった。
「貴女、知ってたのね。ずっとずっと。泣かないでハリエット。意地悪ばかりして来てごめんなさいね。厳しくすれば正しく育つって信じてた。貴女が文句も言わず家事をこなすのを見て正しいんだって思っていたの。」
ハリエットを抱き締めたペチュニアは初めてハリエットの頭を撫でた。バーノンはその様子を見てため息をついた。そして小さく呟く。
「好きにしろ」
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