依頼人入院事件





身辺警護を付けますと言った雪映に夏子が勤務先が
勤務先だからと断った次の日、事務所に一本の電話が
入った。警察からだった。呼び出された場所は公園で
そこには既に何人か人が集まっていた。


「あの、澁谷さんが転落って本当ですか?」
「転落というより事件の被害に……どちら様ですか?」
「あ、すみません。先程お電話いただきました、
鴻上事務所の早坂凛子です」
「ああ、早坂さんですね。澁谷さんは現在頭蓋骨陥没の
重症で病院へ搬送されました。澁谷さんが依頼をして
いらっしゃったという事で、何かご存知の事があれば
教えていただきたいのですが」


早坂凛子というのは雪映が名付けた輪の仕事時の
偽名である。聞けば夏子は階段を突き落とされた様で
現在捜査中なのだという。彼から事件の詳細をすべて
読み取った輪は、澁谷がストーカー被害に遭って
いる旨を伝え、容疑者に早く会いたいと刑事へ求めた。




居合わせた少年が何事かを言い、夏子の職場である
杯戸小学校へと向かう。輪はふと、先程からいる
外国人の2人に見覚えがある事に気が付いた。確か、
アメリカにいた頃に警察のもとでチラッと見た顔だ。
輪が詳しく思い出そうとしていると、その2人から
思考が流れ込んで来るのが分かった。相手方も見覚えの
ある奴だと記憶を辿っているらしい。しかしカミカゼだと
いう事を知られたくない輪は、その事をスルーして知ら
ない振りをし、刑事や少年の後ろを雪映に連絡を取り
ながら付いて行くのだった。





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