戦場の待ち人
「やっほ」
面会時間ギリギリにソイツはやってきた。
「起きてたんだね。よかったよ」
「こんな時間に見舞いかよ」
「いやぁ、本当はもっと早めに来る予定だったんだけどお叱りが長引いちゃって」
「……」
優等生っぽいこの大人でも怒られるのかと、疲弊している顔を見ながらそう考える。大人ってやつはめんどくさそうだ。
「そういえば久森くんや頼城くんが来てたみたいだね」
「うるさかった」
「今回は派手だったから無理もない」
「俺が怪我しようが関係ないだろ」
「それが人間の不思議なところでして」
四つ足の丸椅子がぎしりと軋む。
「自分が怪我するより大切な人とか仲間が怪我するほうがよっぽど痛いときがあるんだよ」
窓の外で光る月を見ている横顔が、時々久森が浮かべる表情に重なって、心の底がざわついた。
「アンタ変だな」
「結構普通だと思ってたんだけど?」
「怪我したのはアンタの責任じゃないだろ」
「……え」
想像していなかったと言わんばかりの間抜けな声。
「どーせ何も知らない奴らに何か言われたんだろーけど、気にするだけムダ」
「……年下に見抜かれちゃったか」
「バレバレ」
修行が足りなかったなと茶化して指揮官は笑う。さっきの表情よりこっちのほうがいい。
「そろそろお暇しよう。君の睡眠時間を削るのは私の本意じゃない」
「そーしろ」
コツリとヒールが病室に響く。ドアへと向かう後ろ姿は最初に見たときよりも伸びていた。
「そうそう」
言い残したことがあるように指揮官が振り返る。逆光で見えづらいが多分――
「私は君の活躍する姿が好きなんだ」
その口角は挑発するように上がっているだろう。
「戦場で待ってる」