「綺麗な顔……」
 いつも私より先に起きていたり、眠気に負けて先に寝ていたりしていたので今目の前にある武居くんの寝顔をこうしてまじまじと見る機会はなかった。
 しっかし、と寝息を立てている彼を見つめる。何を食べたらこんなに整った顔になれるのだろう。人間ってものは不思議な生き物だなとそこまで考えて、元が良ければこうなるしかないだろうと半目になる。
「……聞こえてんぞ」
「おはよう」
 何してたと尋ねる声は低くくぐもっていて、私が起きる前に実は目を覚ましていたという事実はなさそうだ。
「顔が綺麗だなって見てただけ」
「見ても面白くねーだろ」
「面白いというより、感慨深いが正確かな。君のこんな表情が見れるとは夢にも思わなかったし」
 あの頃は大人と子供だとか、指揮官とヒーローだとか。いろいろごちゃごちゃ考えていたから、こんな風に同じベッドで朝を迎えるなんて想像もしていなかった。
「って、わわっ⁉」
 先程から掴まれていた手が引っ張られて、再びベッドへダイブする。
「二度寝する体勢になっているところ悪いけど、大学遅刻するよ」
「今日は土曜」
「……そうでした」
 あと数分で鳴る目覚ましをどうせどっちかが止めるだろうと期待して、傍にある温もりをシーツと一緒に抱き締めた。