なんだか寂しくなって丸めていた体を動かせば、素足が涼やかな空気に触れて目が少しずつ覚醒していく。カーテンから零れた日の光は掛布団に広がっていて、すぐよこにあるミニテーブルの上には目覚まし時計がちょこんと座っていた。
「起きたか」
 ここはどこだっけと昨夜の記憶をおぼつかなくたぐり寄せる思考を、聞き慣れた声が引き上げる。
 左手にバスタオル、もう片方の手にペットボトルを持った武居くん。
「いま何時ですか」
「もうすぐ九時」
「……起きます」
 寝坊ではないけれど起きていてもいい時間だ。なけなしの気力を振り絞って体を持ち上げる――。
「寝てろ」
 も、努力むなしく強引にベッドへ押し戻される。
「……起きろって言わないんだ」
 前髪をぐしゃぐしゃに崩してきた犯人を見上げる。普段怠惰だなんの言って休日にも関わらず叩き起こしてくる彼の発言とは思えなかった。
「疲れてるやつを叩き起こすほど落ちぶれてねぇ」
「あー……」
 昨夜の記憶が一欠片も残っていないことを不思議に思ったが、徹夜の連続のあとだったのだろう。帰宅時間も日付を越えていた気がする。
「お気遣いありがとうございます……」
「ん」
 ここのところ十分に話せる時間も取れていないのにいいのかとモヤモヤしたが、優しさに甘えて枕に顔をうずめる。隣に温もりはないけれど、起きたときに感じた物足りなさはもうどこにもなかった。
 微睡みに落ちていく間際、頭を撫でてくれる感触がひどく優しかったことだけは覚えていた。