おそらく告白が終わって人魚になったあと。両思い
「ラムズが私に対してしてほしいこととか、してみたいことってないの? 今こうして優しくしてくれるのも、私がそうすると喜ぶからやってるだけなの?」
「まあ。そうかな。メアリが幸せならいいかなって思うから、そうしてる」
「ラムズはどうしたら幸せになるの?してほしいこと、ないの?」
「会いに来てくれてるのは嬉しいよ」
「うーん……好きって言ったら嬉しい?」
「んー……少し嬉しいかな」
「どうして少しなの?」
「あんまり……当てにならないからかな」
「当てにならない?」
「人の心は移りやすく変わりやすいものだろ。メアリがいつ俺のことを好きじゃなくなるかわからないし、お前は海にいるから……そうなったら、俺はもうお前には会えない」
「そんなことしないわよ」
「そうだと嬉しいよ」
「でも、ラムズだってそうでしょう?好きな気持ちはみんな変わることがあるわ」
「たしかにお前を好きな気持ちは、お前と同じように変わることもあるのかもしれない……。でも、お前は宝石でもあるから、大事にしたい気持ちも、会いたい気持ちも、幸せにしてあげたい気持ちも、ずっと変わらないよ。これだけは絶対にそう」
「そ、そう……」
「だから仮に俺が本当に好きじゃなくなっても、お前に対して俺が示せる行動が変わることはないから、安心して」
「安心なのか……わかんないけど。わかったわ。でもじゃあ、何をしたら幸せになれるの?」
「そばにいてくれたら嬉しいよ」
「うーん…………」
「んーじゃあ、俺のものって言ってくれたら、嬉しいかな」
「え?ラムズのものって?」
「あー……うん。まあ、忘れて」
「え、待って。忘れないわよ。どうして?」
「聞くのか?」
「聞かせてよ」
「まあ……これがお前に対する愛か、宝石としてのお前への愛か、わからねえが……。俺は宝石を集めるのが好きなわけだが、他にも宝石に対してはいろいろと思うところがある」
「思うところ?」
「宝石にのみ感情は許されてるから……例えばそれをつけてみんなに見てほしいとか、誰よりも多く持っていたいとか、誰かに触られそうになると冷や冷やするとか、壊れたら悲しいとか」
「ええ、わかるわ」
「簡単に言ったが、まぁこれらの感情はそうとう大きくて……。俺は宝石を自分の手元に置くと幸せな気持ちになるんだ。本当に。そばにあると安心するし、全部自分のものだと思うとすごく嬉しい。集めたことも、こうしてそばにあることも、それに囲まれて生きているのが幸せなんだ。ここにあるすべてが俺のものだと思うと幸せになる」
「……それで……?」
「メアリは……。幸せにしたいと思うから、できることなら俺のそばにいて欲しいと思うが、お前が海の中にいた方が幸せなことはわかるし、お前の鱗のためにもそのほうがいい。だから別にいつも一緒にいなくてもいいんだ。
だがまあ……。正直離れてるあいだ、お前がどこで何をされているかわからないから、怖いし、嫌なんだ」
「そう、なの」
「だから俺はお前のことは宝石として見てないと思う。宝石としてみていたら、俺の宝石だと思っていたら、たぶん、俺の知らないところで誰かに鱗を傷つけられたりするかもしれないと思うと気が気じゃなくなって、本当に死にそうになるし、ずっと傍において置きたくなってしまう。
だがそうしてないから、俺はお前のことは俺の宝石だと思ってない。俺のものじゃないと思う」
「……まあ、そう。これは喜んでいいのかなんなのか、わからないけど……」
「俺もわからん」ラムズは笑った。
「それで、どうしてラムズのものって言ったら嬉しいの?」
「えー……だから。今だけでもそう言ってくれたら、嬉しいってことかな。
俺は今まで宝石にしか愛がなかったから、それに似たようなことしか思えないんだと思う。だから、メアリが……メアリのほうからそう言ってたら、なんというか……」
「なに?」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「えーだって。そういうふうにラムズが自分の気持ちを話すの、珍しいから!」
「……へえ。まあ、いいが。
ともかく、お前がそう言うと、俺がそう思ってるのを認めてもらえている気がして嬉しい……かな」
「……へえ!」