メアリが見かける。おそらく3巻くらい。告白する前
タバコ吸ってるとこ
「ラムズってタバコ吸うのね」
「ん、ああ……」
吸ってたものを掴んで手を下ろす。タバコを指から離すと、みるみる黒い部分が上がって灰になってチラチラ黒い塵が浮かんだ
「消さなくてもいいのに」
「まあ、吸いたいわけじゃねえから」
「は?じゃあなんで吸ってるわけ?」
「匂いをつけるため?」
「まあ……そういえばラムズって匂いないものね」
「ああ」
「でもなんで付けるの?」
「何もないよりあったほうが」
窓枠に体を向ける。「俺のことを覚えててもらえるかなって」
「ラムズってそういうの、気にするのね」
「そういうのしか気にしてないよ」
「……。変なの。」
ラムズがなんとなく椅子に座るために近づいて、メアリが若干咳き込む
「タバコの匂い、嫌いか?」
「いえ、別に。海賊でも吸ってる人はたくさんいたもの。ただ海ではかぎなれないから、得意ではないみたい」
ふっと笑う。
「じゃあ、いらねえな」ぱっと水で体を流す。
「え? なにしてるの?」
「消した。匂い」
「付けるために吸ってたのに?アホじゃないの?」
「だよな」軽く笑う。
「でもお前がいらないなら……今はもういらない」
「わたしのため?……変なの。タバコって吸ってる人はやめられないって聞いたわよ。大丈夫?」
「俺はそういうの、関係ねえから」
「そんなの余裕だってこと?」
「いや、文字通りの意味」
?少し考える。「ラムズには効果がないってこと?」
「そんなとこ」
「……嗜好品なのに。変なの」
「嗜好してねえもん」
そっと笑う。
こんな風にそっと笑うの、やめてほしい。いつも意地悪な微笑みしか見せないくせに
「タバコを吸ってる姿がかっこいいって、そう言うやつもいるだろ。だから吸うだけ」
「なにそれ。人からの評価のために吸ってるの?」
「それしかないよ」
「……宝石は?」
「宝石に関係あることはやるが、宝石は俺の見た目も匂いも気にしねえだろ」
「まぁそうね。じゃあ全部だれかのためにやるの?」
「……容姿に関しちゃ、宝石を付けるに相応しい格好をと思ってるが」
「まぁ……そうなると、そうなるわよね」
「ふうん……そっか。そういう理由でオシャレをする人もいるのね」
「メアリは?」
取ってつけたように尋ねられた。興味がなさそう。ただ会話を円滑に進めるために聞いただけのような。
でも私は答えた
「あんまり……服とかよくわからないし、着飾らなくても人魚は綺麗だもの。まぁ……海賊でいるとき、ああいう格好をしたり髪が汚れたりするのは──」
人魚らしくないのかしら。口で言うのははばかられて、途中で切ってしまった
「俺はあのままでもいいと思う」
「……綺麗にしたのはラムズなのに?」
「それはこの店に入るためであって──。そうやって自分のために生きているのは、お前らしいよ」
「わたし?」
「人魚らしい」
「……そうかしら?」
「俺は誰かのために変わるけど、お前はいつも自分のために選んで生きてんだろ。人間は両方あるが、メアリは後者のほうが強い。そこは、人魚らしいんじゃねえか」
「ふうん。傍からはそう見えるのね。陸に来るとよく自分がどうしたらいいかわからなくなるわ」
「いろんな物が人に影響を与えるからな」
「それじゃあわたしは、何にも影響されないように生きるべきかしら」
「……いや。お前がいいと思ったなら、それはいいんじゃねえか」
「なんだかわたしを全肯定してくれるのね」
クスッと笑う
ラムズは顔を上げて首を傾げた
「全肯定されるほうが、嬉しいだろ?」
「それも、さっきの「誰かのため」ってやつ?」
「……嘘は言ってないよ」
「そうかしら?」
「まあお前は、俺がどうこう言わなくても好きに生きんだろ」
「んー……そうかもね」
「わたしのために言ってくれたの?」
「なにが?」
「いろいろ」
「俺のためだよ」
「さっきと矛盾してるわ」
「んん……。好かれると、上手くいくんだ。だから誰かのためにやる。でもそれは俺のため」
「うまくいく……なるほど? でもそれにしては、ラムズはあんまり人に好かれるようなことしてないわ。わりとみんなに冷たいし、興味無さそうだし」
「好かれすぎても、上手くいかないんだ」
「じゃあわざと嫌われるの?」
「まあ、そんなとこ。種明かしはおしまい。ミラームは喋りすぎだ」
「ミラーム?喋ってたのはラムズよ」
「今話したのはあいつのせいだから」
「……運命のせいってことね。ふうん、本当は話したくないのね」
「魔法に種明かしはいらねえから」
「変なの」