(尾浜視点)
諸悪の根源である兵助は豆腐断ちを辞めてしまった罪悪感となまえちゃんにあーんをしてもらった多幸感で葛藤していた。それは放課後の部活の時間まで続いた。立花先輩的には静かになったのでOKらしい。
俺は兵助の豆腐断ちを阻止するという任務を成功し、立花先輩に褒められ、本日の七松先輩のアタックを受ける役回りが免除になった。やったね!
あれすっごく痛いんだよね。
ついでに潮江先輩と食満先輩が百面相する兵助にビビっていた事は本人の尊厳のために内緒にしておこう。
そのままクラス替えまで兵助が大人しくなると誰もが思っていた。
しかし、そうは問屋が卸さないのが兵助クオリティ。
来年度入学式で生徒代表挨拶をする代わりに、遠回しになまえと同じクラスにしてほしいと先生に直談判してきたのだと言う。
信じられないことに奴は先生たちの間では成績優秀文武両道の模範的優等生で通っているのだ。
いやまあ、その通りなんだけど、なまえちゃんと豆腐が関わると豹変するから……。
それでも優等生の兵助が頼むのだからきっと要求は通ると思う。
そんなわけで今日は入学式。
学級委員会である俺は入学式の手伝いでいつもより早めに学校に来た。入学式って新入生にとってドキドキとワクワクが最高潮だよね!面白い子がいればいいなぁ。
葉桜になりつつある桜を眺めながら玄関に向かったところでなまえちゃんと鉢合わせた。基本的に新3年が主体となって動く為、新2年で今日学校に来るのは学級委員と生徒代表挨拶をする兵助だけだったと思うんだけど?
「あれ?なまえちゃんなんでいるの?」
「うちのクラスの委員長が風邪ひいちゃったみたいで私が代わりに来たの」
「うわっなんて出来た子なの!?」
「そんなことないよ〜、ところで手伝いって何するか私聞いてないんだけど尾浜くん知ってる?」
「多分新入生の案内とかじゃないかな?三郎なら知ってる……あ、あいつ話し合いの時休んでたかも」
「尾浜くん、もしかしなくても先生の話聞いてなかったでしょ?」
「バレた?」
他愛ない話をしながら職員室に向かう。
B組の学級委員長は確か貧弱だったな……。代わりを快く引き受けるなんて本当にいい子だと思う。
職員室にはすでに三郎と兵助がいた。
「なまえ!?」
兵助がなまえちゃんを見て瞬時に反応する。一瞬で距離を詰めてなまえちゃんの手を握る。忍者かよ。
「どうしてここに!?まさか……俺を応援するために?」
「えっ?」
「それはないだろ」
真顔でボケる(本人は至って真剣であるが)兵助に三郎が突っ込んで頭を軽く小突く。
なまえちゃんは兵助が生徒代表挨拶をすることを知らなかったらしく、ここに兵助がいることに困惑していた。それぞれの事情を説明する。
「代わりを快く引き受けるなんて!天使か!いや、天使だったな……マジ天使……可愛いがすぎる」
「えっ……えっと、久々知くん??」
「無視していいからな」
「そうそう、相手にすると疲れるから」
暴走する兵助、困惑するなまえちゃん、ツッコミを入れる三郎と俺。なんだここは地獄か。
なんでこういう時に限って八左ヱ門がいないんだ!多分三郎は三郎で雷蔵をここに召喚したいんだと思う。わかるよその気持ち。
騒いでいると木下先生がプリントを持って来た。
「後輩ができるからってあまりはしゃぐなよ」
ああ!先生そうじゃないんです違うんです!とも言えず先生に生徒の名前が書いたプリントを押し付けられる。
「大木は代わりに来たんだな、連絡は来ている。休みだったのに悪いな」
「いえ、困ったときはお互い様って言いますし」
「先生俺らも休みたかった〜!」
「散々委員会サボっといて何を言う」
ゴツン!調子に乗ったらグーで殴られた。理不尽。
学級委員会の仕事は適当に見回りをして迷子を体育館に案内することらしい。この学園人数の割に校舎無駄に広いからね、そりゃ迷子になるよね。俺はなった。
そんな広い校舎の見回りが3人で足りるわけがない!と思ったが見回りの範囲は決められており(それでも広いが)他の場所は先生が見回るらしい。それなら安心。
「久々知も見回りに参加で、お前ら全員時間になったら体育館に来るように」
「はい」
「くれぐれもサボるんじゃないぞ」
「はーい」
「会議中寝てたやつが何を言う」
ゴツン!2度目の鉄槌が下される。俺返事しただけなのに。横でなまえちゃんと三郎が苦笑いを浮かべている。ちなみに寝てはいない。夢の世界に行っていただけだ。
職員室を出て4人で指定された場所へ向かう。
兵助はさも当たり前のようになまえちゃんの横をキープしている。間に入ろうものなら絶対に酷い目に合う。
「そういえば普通は3年生が生徒代表挨拶するのに、久々知くんが挨拶するなんてすごいんだね」
「……っ!!!なまえ!!」
「動機は不純だけどな」
「先生もよく承諾したよね」
効果はバツグンだ!
なまえちゃんのストレートな褒め言葉に兵助は良い意味で悶え苦しんでいる。どうやら俺たちのツッコミは耳に入っていないようだ。
「どうしよう、なんか興奮しすぎて鼻血出そう」
「やめろきたない」
「大丈夫??体育館に行くまで休んでる?みんなの前で喋るのって緊張するよね」
「天使の優しさが沁みる」
「心配するだけ無駄だからそっとしといて」
なまえちゃんは優しいけれど、若干天然入ってる気がする。俺と三郎は人知れずため息をついた。
(20180408)
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