私はお頭さんの計らいでここに置いてもらえる事になり、今は養生中だ。
勿論渋る人もいたが、お頭さんが捨てられた犬みたいで可愛そうだと説き伏せていた。それはそれでどうかと思うけれど…置いてもらえるだけで有難いので何も言えない。
快く受け入れてくれたのは網問君だった。なんでも彼はこの辺の出身では無いらしく私に親近感が湧いているみたい。それにつられてなのかお揃いバンダナの間切君も優しくしてくれる。
中立なのは東南風くんと舳丸さん。
義丸さんは優しいけれどちょっとよくわからない。
由良四郎さんと蜻蛉さんは関わる機会があまり無いけれど、疾風さんとは喋る。疾風さん的には妖怪や幽霊じゃなければなんでも良いらしい。
鬼蜘蛛丸さんと航くんには少し警戒されている気がする。
重くんと白南風丸くんはどっちつかずな感じ。
養生中にお頭さんに色々なことを教えてもらった。
ここは兵庫水軍というところで、仕事は海関連の仕事。船に乗る仕事で海を渡る際の護衛や兵として戦ったりするらしい。戦う、なんて想像ができないけれど……。
あとはお医者様に借りた薬草の本を読んでいる。
昔の字って楷書ではなかったはずだから普通に読めるのが不思議だったけれど、気にしたらいけないんだろうなぁ……横文字通じるし。
「なまえ!調子はどう?!」
「網問くん、間切くん」
ガラリと扉を開けて網問くんとそれに続いて間切くんが部屋に入ってくる。
網問くんと間切くんはよく部屋に様子を見に来てくれる。私は読んでいた本を閉じて居ずまいを正した。
「もうかなり良いですよ。元々痣だけでしたし」
「盛大にぶっ倒れといてよく言うよ」
「えっと、それは……その節はご迷惑をお掛けしました」
間切くんに向き直って深々とお辞儀をする。倒れたのは体調が悪いとかではなく情報がキャパオーバーして脳がシャットダウンしたからだと思うのだけど、うまく説明できないので保留。
「そんなに畏まらなくっていいって!」
「そうだよ〜でもその痣は何だろうね。普段の生活で痣ってできないよね?それも女の子がさ」
「どうして痣が出来たのか全く覚えてないんですよね……」
痣のこともだけれどいろんな記憶が日にちを重ねるごとになくなっているような気がする。私は一体何なのだろう……。
「そういえば、お前幾つだよ?」
若干重くなってしまった空気を振り払うように間切くんが話題を変えた。
「あまり覚えてないけど多分、20前後だと……」
「「えっ!?」」
2人が一斉に声を上げる。
そんなに驚かなくてもいいじゃないか、とも思ったけれど昔の平均寿命って短いんだっけ……?だから成人とか結婚が早いんだよね?そしたら驚くのも無理はないのかもしれない。
「なんか頼りないからもっと年下かと思ってた」
「僕も」
「……頼りない」
思わぬ言葉に少し落ち込む。頼りないのかぁ……。
この場に慣れきってないし確かに頼りないのはわかってるけれど面と向かってストレートに言われるとなんだかモヤモヤする。
「頼りないんじゃなくて、儚げで守ってあげたくなるんだろ」
ショックを受けていると桜色の着物を持った義丸さんが扉から入ってきた。
「もー!アニキは乙女子はみんな守ってあげたくなるんでしょ!」
「網問〜乙女子なら誰だって良い言い方するなよ」
「本当のことだと思いまーす!だよね、なまえ」
「わ、私に話を振られても……」
「それよりアニキ、その着物は?」
義丸さんは着物を広げ、街の乙女子から小さくなって着なくなった着物を貰ったのだと言った。
決して派手ではないけれど、綺麗な桜色の着物。
「年頃の乙女子がそんな地味な着物なんて可哀想だと思ってな」
そういって義丸さんは私に着物を持たせた。
「あの、でも、私なんかが頂くわけには……」
「いいから貰っとけ」
「すみません」
「こういう時はすみませんじゃないだろ」
髪の毛がくしゃくしゃになるのも構わずグリグリと頭を撫でられる。
「わっ、あ、あのっありがとうございます!」
「ん」
その返事に満足したのかくしゃくしゃになった髪を少しだけ整えて部屋を出て行った。
「あの兄貴が着物を……」
「義兄ならまあ…分かるけど」
「でもな〜〜」
「なまえの事乳飲み子だと思ってるんじゃない?」
「それだ!」
後ろで2人がヒソヒソと話す。
“頼りない”よりランクが下がったんだけど…。
(20180522)
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