(田村視点)


ここはどこだ!!
大川学園の中庭かどこかだと思うけれどいかんせん位置関係を把握できていない。
もしかして、中等部の後輩の神崎左門の迷子が移った……?
いやまさか、そんな筈がある筈がない、断じてない!!


意気揚々と輝かしい高校生活を送る為勇んで早めに学校に来たのだけれど、それが仇となったのか、正直迷子だと認めたくないのだが迷子になった。
こんなところを滝夜叉丸に知られたらなんて言われるか……。
あぁどうしよう……軽く絶望。


「あの、もしかして……新入生ですか?」


壁に寄りかかって項垂れていた所に天の助け。
振り向くとそこには、可愛らしい女の子と久々知先輩がいた。
女の子は久々知先輩と一緒にいるということは恐らく先輩なのだろう。


「……田村」
「久々知先輩」
「久々知くん、知ってる子?」
「中学が一緒だったんだ」


久々知先輩は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をしたが、それもすぐに人の良さそうな微笑みに変わり女の先輩の質問に答えた。
その事が少し引っかかったが、迷子になっていた所に知っている先輩。その違和感も何処かに追いやられた。
そんな事より今は滝夜叉丸に迷子だと知られる事なく玄関にたどり着く事が先決!


「あの、先輩方……お願いが」
「玄関まで連れて行って欲しいんだろ?」
「そうです!おねがいします!」


先輩達に連れられ玄関に向かう。
女の先輩の名前は大木なまえ先輩というらしい。
大木……??どこかで聞いたような気がするけれど、どこだったかな?
ひとりで悶々と悩んでいると久々知先輩が“あの大木先生”の姪だと教えてくれた。なまえ先輩はほんわかと「おじさんって有名なんだね」と笑った。
なまえ先輩は“あの大木先生”と血が繋がってるとは思えないのほほんとしたオーラを放っている。
にわかに信じ難くて久々知先輩を見るが、ドヤ顔で頷かれるだけだった。あ、なんか勘違いされている気がする。


「いくらなまえが最高に可愛くて天使でも、絶対に手は出すなよ」


意味がわからないです先輩。


「でも田村にはユリコちゃん達がいたな」
「そうです!ユリコ達以上の子はいません!」
「ユリコちゃん達?アイドルとか……?」


なまえ先輩の疑問から、ユリコ達の事を説明する。
先輩はうんうんと相槌を打ちながら真剣に聞いてくれた。
銃砲を愛してやまない事、高校卒業したらライセンスを取ろうとしてる事をつらつらと話していたらあっという間に玄関についた。
先輩は聞き上手だ。
久々知先輩はというと「真剣に後輩の話を聞くなまえ……良き」とかなんとかブツブツ言っていた。





玄関に着くと、尾浜先輩と鉢屋先輩に連れられた滝夜叉丸と鉢合わせた。
滝夜叉丸も迷子になっていたようで、お互いにお互いの状況を悟り何も言わなかった。


「2人が喧嘩しないなんて珍しいな」
「しかし2人揃って同じ状況とは本当は仲良いんじゃないか」
「「なっ……!」」


尾浜先輩がニヤニヤしながら言う。
鉢屋先輩もそれに便乗して揶揄ってくる。
ぐぬぬ。我慢だ。
反応したら迷子になったと滝夜叉丸の前で迷子になったと宣言することになる。


「まぁまぁ、今日は記念すべき登校初日なんだからあんまり揶揄ったらダメだよ」


聖母がいた。いや、なまえ先輩なんだけれど。
ほんわかと尾浜先輩と鉢屋先輩に注意する。
それで空気が悪くなる事もなく、話が進んでいく。


「わたしも迷子になったし、一度は通る道だよ〜」
「なまえちゃんも迷子になったんだ」
「恥ずかしながら迷子になっちゃったの。それでね伊作先輩と食満先輩に今みたいに助けてもらったんだよ」


さり気無く迷子って肯定されたけど、なまえ先輩に言われると然程気にならない。なんだろう人徳かな?
それよりも知ってる名前が出てきて驚いた。
しかしそれ以上に久々知先輩の方が驚愕していた。


「伊作先輩と食満先輩との繋がりはそこかっ……!」
「交友関係の繋がりを把握しようとする兵助気持ち悪いぞ」
「なまえ、保健委員に入った理由って……?」
「伊作先輩に誘われたからだよ〜」


地団駄を踏む久々知先輩に、突っ込みを入れる鉢屋先輩、のほほんと返事をするなまえ先輩、状況が把握できず困惑する滝夜叉丸。
滝夜叉丸と顔を見合わせて、傍観を決めていた尾浜先輩を見るが力強く頷かれただけだった。


(20180530)
戻る

ALICE+