「う〜〜〜ん?」
「どうしたのなまえ、僕の顔に何かついてる?」
わたしが持ってきた量産型Dホイールを楽しそうに整備するブルーノを眺める。
ブルーノを見てると何か思い出せそうなんだけどなぁ……。
「目と鼻と口がついてる、あと頬にオイル」
「えっ」
ブルーノは慌てて頬を拭うが、逆。
タオルを差し出して、反対側だと教える。
どういうわけかプレミアイベントで会った人が頭を過ぎったけれど…
う〜〜〜ん、こんなポヤポヤした人じゃなかった。
ブルーノに近づいてしゃがんでいる彼の前髪を逆撫でて掻き上げる。
確かこんな感じで、髪を後ろに持って行っていたような……。
「ん?なに?まだオイルついてる?」
「ブルーノってカッコいいよね」
「えっ……!?」
ガシャンとブルーノが手に持っていた工具を落とす。
ジワジワと赤くなっていくブルーノを見て、こちらも釣られて赤くなる。
しまった!余計なこと言ったかも。
昔マーサにアンタは良いことも悪いことも思った事をそのまま言う子だね、と言われたのを思い出した。
「や、あのっ!深い意味はそんなになくて!最初はジャックと違って可愛い感じだと思ってたけど、その!」
前髪をあげていた両手を離してワタワタと弁解になっていない弁解をする。
顔が熱い。今の私の顔はブルーノより赤い気がする。
「なまえ」
「な、なに」
「ありがとう」
「……どういたしまして…?」
私がワタワタしてる間にブルーノは落ち着きを取り戻し、ニコニコと笑っていた。
なんだか釈然としない気持ちだけれど、顔の熱を冷まそうと思ってブルーノが落とした工具を拾って手渡す。
ジャックにかっこいいと言えば「当たり前だ!」と返ってくるだろうし、クロウに言えば「おだてたってなにも出ねぇよ」とあしらわれるだろうし、遊星至ってはそんな事ないと謙遜しつつスルーされるだろう。
多分龍亞は「えへへそうかなぁ〜〜」と言って調子にのると思う。
ブルーノのような反応は初めてなのだ。
だから照れてしまっただけ、きっとそう。
頭の良い遊星より知識があって、横柄なジャックより背が高くて、面倒見の塊のクロウより優しい。
比較対象が弟分達なのが交友関係の狭さを痛感してなんとも悲しいけど、ブルーノって今まで会ったことないタイプだなぁ……。
(まあ治安の悪いサテライトの男なんて似たり寄ったりなんだけど)
ブルーノがDホイールのエンジンをかける。
遊星号ほど迫力のある音はしないが、普通に走るなら十分だろう。
「よし、あとは少し調整して…」
「すごい!もう直っちゃったの!?」
持ってきたDホイールは壊れていたわけではないが、全く乗っていないのでかなり大掛かりなメンテが必要だと思っていたけれど、目の前の男は難なくやってしまったらしい。
「元々壊れてたわけじゃないからね」
「そりゃそうだけど…」
エンジンは小気味好い音を奏でている。
昔、このDホイールを手に入れた時エンジンをかけたのだけれど結局乗れなかったのだ。
感傷に浸りながら黄色いDホイールを撫でる。
お前はちゃんとブルーノの役に立つんだよ。
「……ねえ、なまえ乗ってみる?」
「えっ!無理だよ……まだ怖いもん」
「そっか……あっ、僕の後ろに乗るのはどう?」
「どう?って言われても、物理的に無理だと思うけど」
「あはは」
このDホイールは2人乗り出来るほど大きくない。
ましてやほぼ2mあるブルーノと一緒に乗れるはずがない。
無理をすれば乗れると思うけど、絶対に怖い。
「WOFなら2人で乗れるかな?」
「ブルーノが乗りたいだけでしょ、それにあの偏屈は絶対貸さないと思う」
「だよね」
あの偏屈とは言わずもがなジャックの事だ。
ジャックは今頃盛大なくしゃみをしていると思う。
(20180607)
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