鬼柳の所に向かった遊星を追いかけて、ジャックとクロウもポッポタイムから出て行くのにブルーノを1人にしておくのが心配だという事で召集されたわけだけれど…
等の本人はプログラムを作るのに夢中である。
(クロウが私を呼ぶわけだよ……遊星と同じで1人にして放っておいたら絶対寝ないし食べないもん)

「ブルーノ、ご飯できたよ〜」
「……。」
「おーい、ブルーノ??」

カタカタとキーボードを叩く音だけが虚しく響く。
もし私が短気なジャックだったらぶん殴ってるぞ……。
呼びかけても反応を返さないブルーノにほんの少し悪戯心が湧いてふぅと耳に息を吹きかけた。

「わあああ!!」

するとブルーノはバタン!と椅子ごとひっくり返った。彼のジャケットの中の工具がガチャガチャと音を立てたが聞かなかった事にする。

「ご、ごめん!まさか倒れるほどビックリするなんて思わなかったから……」
「いたた…」
「平気?怪我はない?」

倒れたブルーノを起こそうと手を差し出す。
すると彼は私の手を取って、おもむろに自分の方に引っ張った。突然の事に対応しきれずブルーノの胸に倒れ込む。

「きゃっ!」

ボフッとゴッの中間くらいの痛いんだか痛くないんだかよくわからない音を立てて、ブルーノの胸板におでこをぶつけた。
頭の上ではくつくつと笑い声がして、悪戯の仕返しをされたのだと思った。顔を上げると案の定彼は笑っていてその顔があまりに穏やかだったので怒ろうと思った気持ちがシュルシュルと萎んでいく。

「ブルーノのばか」
「ごめん」

上半身を起こしてどちらともなく2人でクスクス笑い合う。

「頭ぶつけてない?」
「大丈夫だよ、なまえも平気?」
「おでこをぶつけたわ」
「ごめんね」

彼の大きな手が私の髪を撫でて、額に触れて、その手をずらして頬に触れる。
まるで、割れ物を扱うようにゆっくり丁寧に優しく触れる大きな手にくすぐったさを感じて身をよじる。
ゆっくりと彼の顔が近づいて……キスされるんだ、とぼんやりした頭で理解した時、バターン!と威勢の良い音が鳴ってポッポタイムの扉が開いた。

「遊星いる〜〜???」

元気な龍亞の声が部屋に響く。「ちょっと龍亞!そんな乱暴に扉を開けないでよ!」という龍可の声も聞こえる。
ブルーノは苦笑いを浮かべると何事もなかったように立ち上がって双子の元へ向かった。

(何、いまの……!!)

遊星がいない事に落胆した龍亞の残念がる声をBGMに倒れた椅子を戻す。顔が熱い。







「いらっしゃい、龍亞、龍可」

顔の熱を冷まして、双子の元へ向かう。
アカデミー帰りだったのか2人とも制服のままである。

「あれ?なまえ姉ちゃんなんでいるの?」
「クロウに留守を頼まれたの。それにしても今日は早いんだね」
「今日は午前中で終わったの、それに頼みたい事があって来たんだけど……」

私の疑問に龍可が答える。
午前中でアカデミーが終わったなら2人ともここでお昼食べるかな?使い回すつもりで多めに作ったカレーの事を思い出す。

「頼みたい事ってなんだい?もし僕にできる事なら手伝うけど」

ブルーノがいつもの調子で優しく語りかける。
双子は顔を見合わせて、コクリと頷くと私とブルーノに向き直った。

「あのね、今度アカデミーの子達と遊園地に行く事になったんだ」
「でもやっぱ、子供だけで遊園地行くのってダメだからさ〜」
「それで遊星とアキさんに保護者役を頼もうと思って来たんだけど……」
「いないから、ブルーノとなまえ姉ちゃんにお願いしたいな〜!2人の方が年上だもんね!」

チケット代は気にしないでと言われ、そういえば2人はトップスの出身だったなぁと思い出す。これではどちらが年上かわからない。

「僕は構わないんだけど、居候だからなぁ」
「ブルーノ最近ずっとDホイールの調整してたし気分転換に保護者役だけど遊園地に行ってもいいんじゃない?」
「そーだよ!それに遊星なら良いって言うよ!なまえ姉ちゃんが言えばジャックだってクロウだって良いって言うし!」
「ちょっとお待ち龍亞くん?私にそんな権限ないんだけど?」
「えー、でもみんななまえ姉ちゃんが怒ると言うこと聞くじゃん!」
「それは怒られるような事をするからよ」

私と龍亞の掛け合いを見て、ブルーノと龍可はクスクスと笑う。
会話がひと段落したところで龍亞のお腹がぐぅと鳴った。

「えへへ、お昼まだたっだ」
「うちで食べてく?カレーだけど」
「いいの!?」
「もちろんいいよ、いっぱいあるから」
「やった〜!!!」
「じゃあ手を洗っておいで、ブルーノもね」

龍亞は一目散に洗面台に駆けていく、それをブルーノが追いかける。
龍可はその場から動こうとしない。

「ん?龍可?」
「なまえさんも遊園地一緒に行ってくれる?」

龍可はおずおずとお伺いをたてるように聞いてくる。
遠慮なのか、拒絶されるのを恐れているのかそれはわからないけれど随分控えめなお願いだった。子供はジャックみたいに遠慮なんかしないでもいいのに……。ジャックは尊大すぎる気もするけれど。

「もちろん!」

力強く言うと、龍可は花が咲いたように笑った。

(20180628)
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