(クロウ視点)
俺たちが鬼柳の所に行って、ポッポタイムをなまえに任せた後から
なまえは以前にも増してブルーノの世話をよく焼くようになった。
アイツは元々お節介な気質で、マーサの真似だかなんだか知らないがマーサハウスにいる頃から俺たち(特にジャック)の世話を焼いて姉貴風を吹かせていたが、
俺たちが出て行った後はその対象が居なくなって、つまらなそうにしていたとマーサが言っていた。
風の噂で聞いた話だが、その後なまえはそのお節介な気質を発揮しまくってサテライトの男共の勘違いを生み、争いの火種になったらしい。
なんていうかサテライトの奴らは優しさに飢えてるからな。
あとは本人が無自覚なのがタチが悪いんだよなァ……。
そして何だかんだいってアイツは何気に理想が高いからそこら辺のサテライトの男は眼中にないしな。
なまえの理想が高いのは遊星とジャックが悪い気がする。
しかし、しばらく会わないうちにその世話焼きな性格も少しは落ち着いたのかと思ったが、ぶり返したのかそれとも違う理由か……。
勘違いが起こる前に釘を指すべきなのか?
いや、でも当人達の問題だしなぁ……。
「今戻ったぜー」
「おかえりクロウ」
悶々と考えながら配達を終え、ポッポタイムの扉を開けると遊星が出迎えてくれた。
どうやらジャックはいないらしい。
まぁどこへ行ったかは大方予想はできるが……。
ブルーノはガレージで遊星号をいじくり回している。
「クロウが仕事に行った後、なまえが来て食材とか色々置いていったぞ、その後スグにアキと出掛けるといって出掛けて行ったが……」
「アキと?」
「買い物とかなんとか言っていたな」
仲が良いことは良いことだと遊星は言って静かに微笑んだ。
保護者目線かよと突っ込もうかと思ったが、たしかになまえもアキも、年の近い同性のダチはいないもんな。
「ねえ、遊星この部品……あっ、クロウおかえり!」
「おう」
ブルーノが遊星を呼びに玄関に来て、一緒にガレージの奥へ向かう。
Dホイールの事は2人に任せきりだったしなぁ少しは関わらないと、と思い役に立つとは思えないが一緒についていく。
「遊星号に見慣れない部品があったんだけれど……」
ブルーノは慣れた手つきでDホイールから部品を取り出す。
見慣れないって言っても普通だと思うけれどなぁ、素人目にはどれも同じに見える。
遊星は部品を見て思考を巡らせたがスグに答えは出たらしい。
「あぁ、それはなまえのDホイールのだ」
「なまえの?」
「知らないおじさんに貰って事故って大破したっつーアレか」
その頃はマーサハウスから出て鬼柳と行動を共にしていて、実物を見たわけではないが、噂でDホイールを乗り回すなまえの話を聞いた。
事故って大破させて大怪我をして、その後使えそうな部品をジャックにDホイールを盗まれて代わりに新しいものを作っている遊星の元に持っていったんだよな。
今思えば知らないおじさんから貰うとか怪しさ満点だし、サテライトにそんな気前のいい奴がいるわけがないんだが……なまえだしなぁ。
足長おじさん的な感じで貰ったのかもしれない。
「で、その部品がどうしたんだ?」
「どのメーカーのものを探しても同じものがないんだ。性能が良いから同じものを探そうと思ったんだけど……」
「手作りなんじゃね?」
「うーん、そうなのかなぁ」
ブルーノは納得のいかない顔をして部品をしげしげと眺めている。
「2人はなまえのDホイールを見た事あるの?」
「写真でなら見たことがあるが……」
なまえのDホイールの事は噂と1枚の写真でしか知らない上に、あまり本人が喋りたがらない。
後遺症が残らなかったとはいえ、生死を彷徨う事故を起こしたんだから無理もないかもしれないが……。
本人は絶対に言わないがかなり無茶苦茶な乗り方をしてたと思う。
当時を知るサテライトの奴らはみんな揃ってなまえのDホイールの話になると黙るからだ。
「写真があるんだね、今度見せてもらおうかな」
ブルーノは少しだけ嬉しそうに言った。
こいつはDホイールの事となると見境がなくなるな。
「なまえにDホイールをあげた、知らないおじさんってのも気前が良いよな」
「今もだが、サテライトじゃそう簡単に手に入るものじゃないからな……」
苦労して作り上げたDホイールを盗まれた遊星が言うと説得力が違う。
あんな破天荒なジャックにマーカーが付いていないのか謎だ……。あとモテるのも謎だ……顔か?
モテるといえば……気になっている事を単刀直入に聞いてみる。
「そういやさ、ブルーノはなまえの事どう思ってるんだ?」
「??…好きだよ?」
「ゴホッ」
事も無さげに言ったブルーノの返事を聞いた遊星が咽せた。
今の遊星とオレの気持ちを分かりやすく解説するなら、友人が姉の事を好きだと言った時の弟の気持ちだ。
恐れていたことが現実に……いや待て、天然オブ天然のブルーノの事だから、友人としてとか、みんなも平等に好きとかそういう意味ってことだろオレ知ってる。
好きになるなって訳じゃないが、なまえの無自覚に周りを振り回す(周りが勘違いして自滅していく)という性質を知っているからどうにも……。
「それは、どういう……?」
恐る恐る遊星がブルーノに問いかける。
「え?なまえって優しいから嫌いな人はいないと思うんだけど……」
「あ、ああ、そうだな」
思ってた通りの答えに、オレと遊星は安堵する。
いや別に惚れた腫れたはどうでもいいんだけど、ジャック以外の問題事を増やしたくないのが本音だ。
「……でも、その優しさが僕だけに向けばいいのにって思う時はあるかな」
「は?」
ボソリと呟かれたその言葉の裏側に隠された意味をはかりかねて、聞き返そうともブルーノは困ったように笑うだけだった。
(20181111)
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