「「なまえ!」」

お頭の部屋から出たタイミングでドタドタと航くんと網問くんが駆け寄ってきた。

「怪我はしてないよな!?」
「何でお米様抱っこされてたの!?」

航くんは怒った様に、網問くんはキラキラと目を輝かせて、非対称の表情で2人は詰め寄る。

「えっと……」

言い澱む私に航くんがグルリと一周して怪我の有無を確認する。
その間も網問くんは何で?どうして?何があったの?とまるでなぜなぜ期の子供の様に質問をやめない。

「お前らなまえが困ってるだろ」

後から来た間切くんが助け舟を出してくれて、2人は大人しくなったがその目は質問に答えろと言っている。
航くんには怪我はしていないって言ったけど、信用されてないのかもしれない……。

「舳丸の兄貴には眼圧で圧倒されたから聞くに聞けないんだよな」
「兄貴のところには重が行ったけど、たぶん聞けないで帰ってくると思うなぁ」

私もそう思う。
舳丸さんは特に重くんに知られたくないだろうから、上手くはぐらかすか、だんまりを決め込むと思う。
……舳丸さんなら後者かな?

「お前たち、こんなところで固まってどうしたんだ?」
「「「お頭!」」」

お頭の部屋の前で騒いでいた所為もあって、お頭が部屋から出てきて様子を見に来た。
おそらく航くんたちの声は聞こえていただろうけれど、質問しやすい様にと改めて聞く。

「舳丸兄貴となまえは何故お頭のところへ?」

3人を代表して間切くんがお頭に尋ねる。

「あ〜、お前らもあの婆さんに会えばわかるよ」
「「「婆さん?」」」
「えっと、アンコウみたいなとってもすごいおばあさんなんですけど……」
「あっ、オレその人知ってるかも」

首を傾げる3人に対して説明になっていない説明をすると、間切くんが声を上げた。
なんでも鬼蜘蛛丸さんと義丸さんから、若い衆の心を折っていくヤバい魚に似たお婆さんがいると聞かされていたらしい。
鬼蜘蛛丸さんも義丸さんも被害者というか……もしかして、水軍の人が通ってきた道なのかな……?

「そんなすごいおばあさんがいるんだ……会いたいような会いたくないような……」

網問くんがボソリと呟いた一言に、航くんはオレは会いたくないなぁと返す。
(この話のずっと後に重くんがお婆さんに会うのだけれど、それはまた別のお話)

「そのお婆さんに兄貴は絡まれて、なまえも巻き添えを食らったって事ですよね」
「まあ、平たく言えばそうだな」
「え、それとお米様抱っこが繋がらないんだけど……怪我とかしてないんだよな?」

間切くんがザックリと纏め、お頭が肯定する。
航くんに何度も怪我の有無を確認されるが(そんなに信用されてないのかな)ないものはないので、コクリと頷く。

「あ〜、それはお婆さんが最初になまえを担いで来たから対抗心か何かだろう」
「兄貴も何だかんだ負けず嫌いですからね」
「なまえを担ぐお婆さんって何者……」

おばあさんが何者なのかそれは私も聞きたい……。
鍛えている(海に出れば自ずと鍛えられる)人たちばかりだから忘れてしまうけれど……よくよく考えたら成人男性でも余程鍛えていない限り人を軽々と担ぐのは難しいような気もする。

「しかし、随分となまえの事を心配して、もうすっかり航もなまえの兄貴分だな」
「ち、違、俺はただ、早くなまえに怪我を治してもらって減ったおかずを元に戻したいだけです!!」
「ツンデレ〜!!ほんとは心配なくせに〜〜」
「網問!!!」

狼狽えてしどろもどろになる航くんを網問くんがからかって逃げる。
それを航くんは追いかけてドタドタと廊下を走っていった。
お頭は「元気だなぁ」と呑気に笑って、間切くんはツンデレという言葉と航くんが噛み合わなすぎて頭にハテナを浮かべている。
「ツンデレっていうのは……なんていうか、女子に使うのでは?」と言っていた。
……特に深い意味はないけれど、その発想はおそらく義丸さんの影響だと思う。


(20190521)
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