ブルーノと2人で遊園地のチケット売場の近くに立つ。
龍亞に集合時間より少し早めに行って、そこに立っていて欲しいと指定されたからだ。

背の高いブルーノは目立つ。
(ジャックや牛尾さんも大きいからあまり意識しなかったけど、やっぱり大きいんだよね)
大きいから目印にするつもりなんだろうなぁと思っていたら可愛い女の子が話しかけてきた。

「なまえさんとブルーノさんですか?」
「そうだよ、龍亞と龍可のお友達だよね?」
「はいっ」

元気にお返事を返してくれた少女に笑いかける。
しばらくすると、龍亞龍可の双子と天兵くん、男の子が2人順番にやってきた。
背の高いブルーノは大いに役立った様で、みんなスムーズに合流できたらしい。

「龍亞、ブルーノのこと集合の目印にしたでしょ」
「だって、ブルーノって背が高いから目印にいいかなぁって思って」
「あのねぇ」
「僕は構わないよ」

当の本人はニコニコと笑っている。
本人がいいならいいんだけどさ。

ブルーノにどうしたらそんなに大きくなれるのか?と男の子達が興味津々に尋ねる中で、遊星が良かったのに……と、黒髪の少年が小さな声で呟く。
憧れの遊星の方がよかったという気持ちはまぁわかるけれどね。

「遊星達の小さい頃の話とか本人達から聞けないような話とか私ならできるんだけどなぁ〜〜??」
「えっ」
「あ、それ僕も聞きたいなぁ」

少し煽るように言うと案の定食いついた。
ついでにブルーノも食いついた。


そんなこんなで子供達の中では“憧れの遊星のお姉さん”という確固たるポジションを築き上げ、保護者役として舐められずに済んだ。
舐められない様に思っちゃうのはサテライト育ちだからなんだろうなぁと頭の隅でぼんやりと考える。










「次はあのジェットコースター乗ろうぜ!」
「え〜!あたし疲れちゃった〜」
「私も…」

色々と乗り尽くし、次はジェットコースターへ行こうと勇む男の子達に疲れたと言う女の子達。
男の子達のハイペースで絶叫系に乗ってたら疲れるよね。

「じゃあ、私たちは待ってようか?」

近くのベンチを指差して、あそこで待っていると伝えると、男の子達は俺たちだけで平気だから!と言って走り出す。
反応が遅れたブルーノはついて行くことができない。

「ちょっと!乗り終わったらちゃんと戻ってくるのよ!!!」

慌てて、走り去る子供に向かって叫ぶ。「わかった〜!!」と分かってるんだかそうじゃないんだか曖昧な返事を龍亞が返して子供たちは角を曲がって見えなくなった。

「本当に分かってるのかなぁ」

龍可がボソリと言う。
ここはシティだからそこまで治安は悪くないと思うけれど……ってサテライトと比べたらどこも治安はいいか……。
シティの遊園地だから、子供に危害を加えるような変な人もいないだろう。

「まあまあ、向こうで待ってようか」

ブルーノがにこやかに龍可をたしなめる。
ベンチまで移動している最中に、ピエロに話しかけられた。

「なまえ?」
「え?」
「やっぱりなまえだ!!」

ピエロは私のところまで駆け寄ると手を取って、ブンブンと上下に振る。
突然のことに私含めブルーノ達は唖然としている。

「誰?……あっ、サテライトの…」
「そう!思い出した!?今俺ここで働いてるんだピエロとして」
「そうなんだ」

ピエロはサテライトで知り合いになった青年だった。
確かDホイール乗り回していた時に、Dホイールを寄越せと恫喝してきたからボコボコのコテンパンに返り討ちにした記憶が……。
女子供に喧嘩ふっかけて弱いものから奪うな!って説教して放置したんだっけ(返り討ちにした時点で弱くないんだけど)

「いやー、なまえにボコボコにされてなかったらまだサテライトで燻ってたと思う、本当ありがとな!!!」
「わっ!ちょっと!?」

ピエロはギューッと私に抱きつく。
ブン殴ろうかと拳を構えたその時、後ろに引っ張られる感覚がしてブルーノの後ろに隠されていた。
女の子達はキャー!と、悲鳴ではなく黄色い声をあげる。

「嫌がってるじゃないか」
「あ、なんだよ?もしかしてなまえの恋人?そうじゃないなら、出しゃばるんじねぇよ」
「あのねぇ――」

流石サテライト育ち、ガラが悪い。
感心しつつも相手をなだめようとブルーノの前に出ようとしたところで腕を掴まれ、またブルーノの後ろに戻された。
そしてブルーノはピエロをただ黙ってジッと見る。

「な、なんだよ、なんか言えよ」

その表情は窺い知れないが、たじろぐピエロを見るに威圧感が凄そうだ(背も高いからね)
その後も何も言わないブルーノに対して、ビビったピエロは捨て台詞を残して退散していった。

「せっかくシティで働き出したのに、素行の悪さで解雇されるわよ。あのお馬鹿」
「まあ何事もなくてよかったよ」
「ブルーノ、ありがとう」

腕を掴んでいたブルーノの手は、滑るように私の手を握る。
優しく、それでも離れないようにと力を込めて握られたそれをギュッと握り返した。

「大丈夫!?」

少し離れて見ていた女の子達が駆け寄ってきて、キャアキャアと騒ぎ出す。
(私は知ってる人物だけど)知らないピエロに知り合いが抱き着いてそれを殴ろうとするっていうのは、女の子的には教育上悪いよね。
ブルーノが前に出てくれてよかった……。
でも、何かあってブルーノが怪我をしたら危ないし嫌だなぁ。

「前にクロウも言ってたけど、やっぱりなまえさんってモテるのね」

龍可がしみじみと言い放つ。
サテライトの人たちは別にモテるとかそういうのじゃなくて、もっと別の何かだと思うけどなぁ……。

「べ、別にモテてるわけじゃ」
「そうかな?なまえは可愛いからモテるのもわかるよ」

反論しようとした私の言葉を遮るように、ブルーノは言葉を重ねる。
ブルーノのストレートな物言いに慣れていない私は顔を真っ赤にして、バッっとブルーノを見上げる。
それに対して女の子達はまたも黄色い声を上げた。



(20190615)
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