(クロウ視点)


ジャックが何気なく掃除をしていたなまえを見下ろして(いや、あいつはデカイからいつも人を見下ろしているが)何かに気がついたらしい。

「なまえ、虫に刺されたのか?」

シティに来てあまり刺されるような虫に遭遇しないから、旧サテライトに住んでいるなまえを心配しているのだろう。
この前、龍可やアキが大きなムカデをみてビビっていたから女子供は虫が苦手らしいと言う事を学習したようだ。

「え、どこ?」
「後ろの首のところだ」

なまえは虫は見慣れているし、サテライトにいれば刺される事なんて日常茶飯事なので気にしてはいないようだ。
指摘されて、鏡を見に行く。
背中側だから見えづらいと思うがなんとか見えたようだ。

「えー……あー、うん」

なまえは複雑な顔をしながら戻ってきた。

「おいクロウ、薬はどこだ!?」
「自分で取りに行けよ!」

どうやら今日はジャックの機嫌がいいらしく、珍しく他人の心配をしている。明日は雨か?
だが、薬の場所がわからないと威張るのは頂けない。

「あー、えっと、薬はいらない」
「何故だ?」

俺が持ってきた薬を奪ったジャックに対してなまえはやんわりと薬を断る。
理由を問うジャックに対し、耳を赤くして黙るなまえ。
その様子を見て俺は察した。
えー、まじかー……所謂キスマーク……つまりそういう事だよな。
相手は……と、そこまで詮索するのも野暮ってもんだ。
(正直ほとんど察しはついてるけど)
一方ジャックは何も気がついていないようで、口煩く薬を塗れと言い続ける。お気楽な奴……。

「も〜!ジャックうるさい!」
「なんだと!?」
「もうお前らやめろって!」

口煩いジャックになまえがキレて、ジャックも応戦する。
なまえは幼い頃から自分より大きな相手にも物怖じせずに喧嘩を買う。
小さい頃はそんななまえに姉貴分として守ってもらったが、いやでもその分厄介ごとに巻き込まれる回数も多かったな。

「ただいま〜!」
「あっ!お帰り!」

2人の仲裁をしていると、買い物に出ていた遊星とブルーノが帰ってきた。
ブルーノの声を聞くと同時に、ジャックと言い合いをしていたなまえがパッと表情を切り替えてジャックを置いて玄関へ向かう。
その嬉しそうな、しかし少し複雑そうな表情を見て疑惑が確信に変わる。

(やっぱ、相手はブルーノだよなぁ)

なまえは今までモテはしたが、気の強さから相手に逃げられないかと心配していたけれど、相手がブルーノならまぁ平気だろ。
何気に姉離れできてないジャックがなんていうかは知らないが。
遊星は……普通に祝福するだろうな。ブルーノと仲がいいし。

今思えば、今まで甲斐甲斐しく世話は焼いていたが双子と遊園地に行った後からあからさまに距離が近くなったような気がする。
きっと今まで気が付かなかったのは、“あのなまえの事だ、そんなわけないだろう”と言う思い込みがあったんだと思う。
もし、ブルーノがなまえの事を好きでも、なまえの方が振るだろうと思っていた。(あいつ理想高すぎるし)


いや、待てよ。
そういえばこの前マーサが、昔なまえにサテライトの男どもを一蹴するのに
「遊星より賢くて、ジャックより大きくて、クロウより優しい人になってから出直してきて」
と言えと教えていたと聞いたけど……
(まあサテライトでヤンチャしてる奴らの中では俺たちはある意味有名だったしな)
俺もその時は、そんなやついねぇから一掃するには丁度いいマーサも伊達にサテライトで孤児院をやっていないなと思ったんだが……
今思えばブルーノって、そこそこ当てはまるよな……?
マーサの情緒教育?いや、まさかな。


(20190908)
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