旧サテライトでかき集めたジャンク品とマーサに持たされた食材を持ってポッポタイムへ向かう。
アキちゃんのDホイールの部品も龍亞のデュエルボードの部品も三分の一くらいは私が集めたものだ。
ポッポタイムの入り口で配達帰りらしきクロウと出くわした。やはりジャックいないようだがいつものことなので気にしない。
「お、なまえ」
「クロウ!部品持ってきたよ」
「いつも悪いな」
「へーきへーき!これくらいしか役に立たないし」
「そんな事ねえって」
「クロウは優しいなぁ〜。じゃ、私部品置いてくるね」
ジャンクをいつもの場所、ガレージの隅に置く。
遊星と青髪の知らない人がDホイールの横のパソコンの前で一心不乱にプログラムを打ち込んでいた。
誰だろう…?
遊星に一度話しかけたものの返事がなかったので、かなり集中しているみたいだ。遊星ってばそう言うとこあるよね。
「ねえ、クロウ。あの人だれ?」
「ん、ああ。あいつはブルーノ。セキュリティから預かった奴で今じゃ遊星が雇ったスーパーメカニックだよ」
「へぇ〜、遊星が認めるってあの人よっぽど凄いんだ」
「凄いも何も、あの遊星と出会ってからずっとDホイール談義してるぜ」
2人があまりに熱中し過ぎていてその様子を龍亞がおしどり夫婦だと表現してアキちゃんが嫉妬したらしい。
なにそれ見たかった。
嫉妬するアキちゃんは絶対に可愛い。
「それってつまり遊星と渡り合える知識量ってこと?」
「いや、それ以上らしい」
遊星がずっと煮詰まっていた部分をあっさりと解決した、とクロウは言う。世の中凄い人もいるんだなぁ…。
なんでも記憶喪失でセキュリティに保護されているらしい。遊星達の元に預けられたのはセキュリティもいっぱいいっぱいだからとかなんとか…。深影さんも牛尾さんも大変だなぁ…。
セキュリティにも身元が分からないなら、情報屋の雑賀さんに頼んでも何も分からないかも。
この間の謎のDホイーラーさんも探して貰ったけどなんの情報も得られなかったし…。
雑賀さんの情報屋としての腕が悪いわけじゃないけど、あんなプロ顔負けの走りやデュエルをする人が無名だなんて信じられない。
クロウと話をしながらキッチンでマーサに持たされた材料を使ってサンドイッチを作る。勝手知ったるなんとやら。
中身はシンプルにハムとチーズだ。
そしてインスタントコーヒーを4つ。
コーヒーは自分の分とクロウの分。そして遊星と件のブルーノさんの分。コーヒーが飲めない人だったらジャックに回せばいいか(飲むかわからないけど)
「はいクロウ。サンドイッチ作ったから適当に食べてね」
「お、サンキュー」
「…もしかしてあの2人って昨日から徹夜かな?」
「一昨日からだぜ」
「うわぁ…」
コーヒーは失敗だったかもしれない。
遊星は一度熱中すると止めても聞かないからなぁ…。そしてブルーノさんも同じタイプだと思う。なんとなく。
しかし作ってしまったものは仕方がない。取り分けたサンドイッチとコーヒーを持って遊星達の元へ向かう。
遊星達はカタカタと小気味良いリズムでキーボードを鳴らしている。
後ろから覗き込んでみる。メンテナンスの時に必要な単語しか拾えないがどうやらエンジンの制御プログラムのようだ。
「ゆーせいっ」
頃合いを見計らって持ってきたコーヒーの入ったマグカップを遊星の頬に当てる。正直冷めてぬるいから火傷はしないはず。
「…なまえか」
「サンドイッチ作ったからブルーノさんと食べて?」
「…ああ」
あっ、ダメだこれはあんまり聞いてないパターンだぞ。
呆れていると丁度区切りがついたらしいブルーノさんと目が合う。
ジャックとは真逆のベクトルのイケメンさんだなぁ…。
「コーヒーは平気?」
「えっあ、うん」
「よかった〜!サンドイッチもあるからよかったら食べてね」
「ありがとう、えっと君は?」
「私はなまえ。遊星達のお姉さんみたいなものかな」
「そうなんだ、僕はブルーノ」
「クロウから聞いたよ〜スーパーメカニックなんでしょ」
ブルーノさんは「スーパーかどうかはわからないけどね」と少し照れたようにふにゃりと笑う。
…なんだろう、可愛い。
…いやちょっと待って可愛いっておかしいでしょ。
座っているからよくわからないけれど、遊星よりかなり大きいぞこの人。ジャックと同じくらいかも…?
「ま、なんにせよDホイールと遊星のことよろしくねブルーノさん!」
「こちらこそだよ」
握手を求めて右手を差し出す。
彼は一度左手を出してすぐに右手に変えた。
(…左利きなのかな?)
(20180311)
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