アキちゃんが怪我をして入院したと遊星から聞かされた。
次の対戦相手のチームカタストロフはどうにも柄の悪い奴らでアキちゃんが怪我したのはソイツらの仕業なんじゃないかとかなんとか……
もしそうなら絶対に許せない!
まぁだからといって私にできることはないのだけど……。
試合の日、クロウのどうしても断れないお客さんの仕事を代わりに引き受ける事になった。
試合を見たかったけど他でもない弟分の頼みだからね。
ジャックが何もしないから資金繰りはクロウにかかっている訳だし。
荷物の届け先が歩いて行ける距離だったからよかったものの、やっぱりDホイールに乗れたら便利なんだろうな。
お客さんに荷物を届けて、ポッポタイムに戻る。
試合の方はどうなってるんだろう。
彼らは絶対に勝利するって信じているからそこは心配ないけれど、場外乱闘にでもなって怪我をしたら嫌だなぁ……。
扉を開けようとしたところでゾラが話しかけてきた。
「アンタ大丈夫かい!?」
「え?」
「町で変な奴らが暴走してんだよ!危うく轢かれかけたよ、今日はもう外に出ないほうがいいよ」
急いでニュースを確認すると、どうやら試合で何かあったらしい。
らしい、というのはニュースもまだ情報がまともに入っておらず曖昧だからだ。
遊星達に何かあったんじゃないか、誰か怪我をしたんじゃないか、心配ばかりが先走る。
「……行かなくちゃ!」
「徒歩で行くのかい!?」
「途中で誰か捕まえる!」
私は急いでポッポタイムを飛びたした。
行っても何もできないかもしれないでも、とにかく行かない事には何も始まらない。
ゾラに宣告した通り、町外れを走っていたサテライトの知り合いを見つけて捕まえる。
「姐さん!危険ですよ!!」
「ヤバかったら私を置いて逃げていいから!」
遠くでセキュリティが鳴らすサイレンの音が聞こえる。
どういう状況からまったくわからないけれど、どうかみんな無事でいて。
浜辺に、ブルーノのDホイールが落ちていた。
量産型で見分けがつきにくいけれど、あれは間違いなくブルーノにあげたDホイール。
「ここで降ろして!」
「ええ!?でも何も無いっスよ!?」
「いいから!」
無理を言って道端で降ろしてもらう。
ここはまだ暴走しているDホイールの集団から離れているから、ここまで載せてきてもらった彼が巻き込まれる事はないだろう。
「ここまで連れてきてくれてありがと!気をつけて!」
「姐さんも気をつけて!!」
彼が引き返したのを確認して、急いで浜辺まで駆け下りた。
どうしてこんな所にブルーノのDホイールが落ちていたのだろう。
こんなところにDホイールがあるなんて何かに巻き込まれたとしか思えないけれど、それなら一体ブルーノはどこに……。
Dホイールを起こして、壊れていないか確認する。
見た目も凹んだり傷がついたりしていないし、壊れてもいない。
周りを見ても人影はない。
(もしかして、海に落ちたの……?)
悪い考えが脳裏をちらつく。
Dホイールのハンドルを握り締めて祈る。
(違う、大丈夫。Dホイールが無事だったんだからブルーノだって絶対無事な筈)
Dホイールを放ってこの辺りを探すのはDホイールが盗まれそうだし……(サテライトだったらあっという間に分解されて部品とか持ってかれる)
どうしよう。
しばらくここで待ってみようか。
やむを得ない理由でDホイールをここに放置したのだとしたら、ブルーノなら絶対に戻ってくる。それは断言できる。
「なまえ……?」
ブルーノのDホイールの側で座り込んでいると後ろから少し驚いたような声色でブルーノの声がした。
振り返ると案の定ブルーノがそこに立ち竦んでいる。
「ブルーノ、よかった!どこも怪我してない?」
駆け寄ってブルーノの手を取り安否を確認する。
見たところ、どこも怪我をしていないみたい。
「あ、うん。大丈夫。……どうしてここに?」
「ニュースで試合が大変な事になったって言ってて、心配で会場まで行こうとしたんだけど途中でブルーノのDホイールを見かけて……ねぇ、本当に大丈夫?」
ブルーノの手は冷え切っていて冷たい。
それに、なんだか動揺しているような……。
返事を待っていると、それが返事の代わりというばかりにギュウと抱きしめられた。
「……ごめん、少しだけこのまま」
「うん」
背中に腕を回して抱きしめ返す。
遠くのサイレンの音はまだ響いている。
(20200601)
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