(尾浜視点)
こんにちは!大川高校1年A組で学級委員長をやってます、尾浜勘右衛門です!
巷では16年目のアイドルなんて呼ばれちゃったりしてる俺です。まぁ、嘘なんだけど。
ドル売りは、中等部3年の田村の専売特許だからね、やらないよ。まぁあざとさは負けてないと思うけども。
「はぁ……」
そして俺の後ろの席で溜息を連発しているのは、久々知兵助。
正直気が滅入るからいい加減にしてほしい。
眉目秀麗、文武両道、真面目で後輩の面倒見も良い好青年。これだけ聞くと非の打ち所がない男だと思われるが、いかんせん好きな物に対する情熱が半端ではない。
例えば豆腐だ。様々な豆腐に関する知識だけでなく、好きが高じて豆腐を手作りしあまつさえ原材料の大豆まで生産している。
そしてもう一つ。
「……今日はまだなまえに会ってない」
大木なまえ。
入学時からずっと隣のクラスのなまえちゃんに熱を上げている。
熱を上げているというか、あれはむしろ崇拝しているのではないだろうか。
なまえ教の信者第1号。2号は知らない。
今は3時間目の休み時間。次の授業は数学。
4時間目が終わって昼休みになったら光の速さで隣のクラスに行くのだろう。
三学期の期末を終えたあとの授業は期末の範囲の復習で、教科書の範囲も終わっているのかのんびりとした雰囲気だ。(赤点をとった奴以外は)
ちなみに俺のテストの順位は上から5番目である。片手で数えられる順位にいれば上等でしょ。
1番は兵助。2番は三郎。なまえちゃんは16番目。
雷蔵は迷い癖が出なければ良い順位。八は…まあ、うん。
「どうしてなまえと一緒のクラスじゃないんだろ、神様は酷いことをする、なあ勘ちゃんどう思う?」
「あと3週間もしたら進級してクラス替えもあるし神頼みでもしたら?」
「神頼みか……」
この時の俺の発言がまさかあんなことになるなんて、今の俺には知る由もなかった……。
というのは、置いといて(豆腐断ちをする予感はある)
豆腐となまえちゃんが絡まなければ本当に凄いやつなんだけれど、どうしてこうなった。
ブツブツと神頼み云々と独り言を言っていた兵助が急にガタンと大きく椅子を揺らし立ち上がった。
「うわ、なにびっくりした」
「なまえが来る気がする!」
そう言って教室のドア駆け寄った。
兵助の奇行は今に始まった事じゃないのでクラスメイトは誰もなにも言わない。
諦めの境地ってやつだ。大丈夫、俺も諦めてる。
「なまえ!!!!!……あと八っちゃん」
「おまけ扱いすんなよ!」
ドアの向こうにはなまえと八左ヱ門がいた。
兵助はなんなの、怖いんだけど。
「なまえ……もしかして俺に会いに!?」
「えっと……」
兵助はがっしりとなまえちゃんの両手を包むように掴む。
対するなまえちゃんは眉を下げ困り顔だ。
ガンガン来る兵助に強く言い出せないところが兵助をつけ上らせている原因な気がしてならないけどこればっかりは性格だからなぁ。
やれやれ学級委員長として暴走を止めに行きますかと腰を上げたところで八左ヱ門の手刀が兵助の脳天に繰り出された。
恐ろしく速い手刀、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「いった!!!何するんだよ!」
「何するんだよじゃない!なまえが困ってるだろ」
「俺のなまえが困る訳ないだろ」
「えっ、あの……」
ドサクサに紛れて俺のって言ったよこの子。
兵助と八左ヱ門が漫才をしている間になまえさんに助け舟を出す。
「なまえちゃんどうしたの?」
「あ、尾浜くん。あの、英語の教科書忘れちゃって…借りに来たの」
「八も?」
「うん、竹谷くんも忘れたみたいだから一緒に」
「そっかぁ、ちょっと待ってて」
自分の机と兵助の机から英語の教科書を持ってなまえちゃんに渡す。
「はい、どうぞ。うちのクラス6時間目が英語だからそれまでに返してくれればいいよ」
「尾浜くん、ありがとう」
「あっ!勘ちゃん何勝手に!いや、いいんだ!なまえにならなんだって貸すよ!でも俺が直接渡したかった……!!」
兵助はジーザス!!と言って床に崩れ落ちた。なまえさんは崩れ落ちた兵助に「床は汚いからダメだよ」と優しい言葉をかけて立ち上がらせた。いい子か。
八も俺もげんなりした顔をしていたと思う。
(20180312)
(修正20200412)
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