ルーカス・ベイカーと洋楽翻訳


 唐突ではありますが、2005年のホラー映画『蝋人形の館』をご存知でしょうか。

 生きた人間を材料にして蝋人形を作る≠ニいう主題はこれまでも何度か映画化されてきたようです。この『蝋人形の館』は、お話の見せ方が素敵な映画だと思います。定番なスプラッター要素や凝った特殊造形も楽しめて、いまだに時々観たくなります。
 既にご覧になられた方は、バイオ7連載の男主人公のデフォルト名に覚えがあったかもしれません。

 この映画で印象深いのは特に挿入歌です。映画のために書かれた曲というわけではないと思うのですが、歌詞はどれも物語やキャラクターたちを想起させます。歌っているのはロック・メタル好きにはたまらないアーティストたちです。

 そんな素敵な挿入歌の中にアメリカのロックバンドDark New Day≠フBrother≠ニいう曲があります。映画を観てから改めて聴くと、この歌詞に胸打たれます。
 同時に、不思議とルーカス君やベイカー家のことが思い浮かぶのです。

 そういうわけで、このBrother≠フ歌詞を個人的な解釈の元、ルーカス君に当てはめて考察しながら翻訳したいと思います。

 著作権遵守のため歌詞を全文載せることはいたしません。重要な箇所をフレーズごとに抜粋していきますので、気になった方はグーグル先生や、ようつべ君に訊ねてみてください。
 翻訳のプロではないため誤訳もあるかと思いますが、そこは幅の広い意訳だと思って読み流すことを強く推奨いたします。

 では、本題へ。



 まずは曲名から。
Brother≠ヘ訳すまでもありませんが、ここではベイカー家の長男ルーカス君を示す言葉として捉えておきましょう。大前提です。


 一番のAメロ後半にはOnce there was a picture of a happy place≠ニあります。これは直訳だと「かつて幸せな場所に写真があった」になると思います。

 思い浮かぶのはNot A Hero≠フエンディングシーン。
――テーブルの上にポツンと置かれた家族写真。決着をつけた英雄クリス君は、写真を見つめ、帰還すべく光の中へ消えてゆく。

 このシーンは対変異ルーカス戦の直後であるためか、場所は廃坑の地下研究所内のどこかであり、写真はルーカスが持ち込んだもの、という解釈を見かけます。
 私はベイカー邸のメインホールだったのではないかと思っています。
 写真が置かれていたあの丸テーブルは、作中でメインホールの中央にありました。テーブルの上には写真の他に扇風機があります。これも作中のメインホールで確認できます。最後の光の差し込み具合や、朧げに見える大きな置時計の輪郭からも、メインホールだと判断しました。段ボールが山積みになっているのは、ブルー・アンブレラの研究員たちが中の物を運び出すためか、又は研究に必要な物を搬入するためだったと思われます。End of Zoe≠フメインホールがすっかり研究施設化していたことや、ジョー対ジャックの決戦でも丸テーブルが置かれていたことから、やはりメインホールで間違いないのではないでしょうか。
 メインホールは客人を招く際に使われるため、家の中で最も華やかな場所です。ベイカー邸も正面玄関から入ってすぐにメインホールへの扉がありました。ベイカー家がどれだけご近所さんを招いていたのかは謎ですが、地元愛のあるジャックならば、それなりにお付き合いをしていたことだろうと思います。
 丸いテーブルは家族円満の象徴でしょう。ルーカス君にとって家族円満は「かつて」のものであり、「平和な」あるいは「幸せな」場所だったといえそうです。

 家族写真はNot A Hero≠フオープニングシーンにも登場していました。ルーカス君のスマホの画面です。
 あの画面がホーム画面だったのかどうかはわかりません。
 ネット記事を開いた画面、という見方もできると思います。ダルヴェイの行方不明事件について、ルーカス君がネット記事やネット上の噂をチェックしていても不思議ではありません。ネットサーフィンの最中にFuckin' company≠ゥら電話があっても不自然ではないと思います。ルーカス君のパソコンの壁紙は手形とピエロなので、スマホのホーム画面も似たような趣味の画像にしているのではないでしょうか。
 どうにせよ、ルーカス君からも家族への愛着が感じられそうです。


 サビ前(Bメロ)はI'd trade it all to have you all here with me≠ニあります。
 ルーカス君目線で「ここまでお前らを連れてくるために、俺はすべてを手放すんだ」と意訳してみます。

 最終的に、ルーカス君は家族を捨てて生き残るという決断をしました。家族とのかつての思い出を胸に、立ち去る決心をしたのかもしれません。E-detaを売ることで当分の間は生計を立てられる予定だったのだと思います。
 両親に頼りきりの生活から、自立した(悪党の)世界へ踏み出そうとしたのでしょう。そんな決断も、クリス君に阻まれてしまうわけですが……クリス君が悪いわけではないですね。


 このBrother≠ニいう曲の最大のルーカス・ポイント(?)はサビです。ルーカス君目線で意訳してみます。

「親父、いつ戻るんだ? おふくろはまた明りをつけっぱにしてる。妹はどっかで知らねえ奴といるんだ。俺は、俺は、俺は――」

 原文は、
Father when you coming back?
 Mother leave the light on again
 Sister with someone somewhere, somewhere
 Brother, brother, brother
です。

coming back≠ヘ「家に帰る」という意味だと思いますが、日本語では「(正気に)戻る」という意味も含めそうです。
the light≠ヘ、マーガレットの持物であるランタンを想起させます。
Sister with someone somewhere≠ニありますが、このsomeone≠ヘイーサン又はミアと捉えられそうです。二人ともベイカー家にとっては余所者です。ゾイはミアから血清の情報を聞き出すため、何度か接触していたと考えられます。イーサンが来てからは彼に協力を持ち掛けて脱出を試みます。そんな妹の様子を、ルーカス君は離れた場所の出来事として捉えていたのではないかと感じます。


 Cメロは「俺たちを遠ざけるのが愛してるものほど、犠牲も代償も高くつくんだ」と解釈してみます。
 原文はWhen it's something we love that keeps us away well it costs even more and its so much to pay≠ナす。

 変わってしまった両親と、変わらずにいる自分。両親の様子を見ていたルーカス君は自分を取り繕う必要のなくなった環境に歓喜し、同時に失ったものを自覚して悲嘆したのではないでしょうか。私にはそう思えてなりません。



 こうして書き起こしてから曲を聴くと、より強くルーカス君とベイカー家のことを想って不思議な気持ちになります。俗っぽい言い方をすれば「エモい」でしょうか。
 ジョーンズ兄妹やシンクレア兄弟を忘れたわけではないのですが……。



 さて、今日もルーカス君のことを考えて幸せな気分になりました。
 ルーカス君、いつもありがとう。



 いずれはルーカス君と、かの有名なステファノ・ヴァレンティーニ君、そして『バイオハザード7』・『サイコブレイク2』と同年に公開したホラー映画『ゲット・アウト』に登場する怪奇一家の長男ジェレミー・アーミテージ君について語りたいと思っています。
 3人とも吹き替えの声優さんが同じな、可愛げのある魅力的な悪役キャラです。


 ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
 また機会を見つけて、ひっそりと掲載していきたく存じます。



  2021/02/15

管理人 Cassie



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